6人の夫と巫女になった私が精霊作りにはげむ1年間の話【R18】

象の居る

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番外編 実家への挨拶回りと結婚式

3.サミーの実家 ※

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 ゲルトの実家を訪ねた翌日、さっそく仕立て屋に出かけた。服の仕立てと一緒に結婚式の仕立てもすると言うので、全員で行った。
 結婚式ではそれぞれの地域の民族衣装を着るらしく、私は成人式のレンタル振袖の知識をなんとか絞り出して着物と帯の絵を描いて説明した。どんな布地にするかはゲルトのお義母さんと妹さんとお義姉さんが、どしどし選んで進めてくれた。

 家に帰ってから夕食時に他メンバー実家への挨拶周りの話をする。
 最初に同じ方向にあるサミーとラルフの実家を回る。メンバーはサミー、ラルフ、リーリエ、私。ヴェルナーは仕事、馬の負担を軽くするためにゲルトとヨアヒムは留守番。リーリエは救急箱、ラルフが御者も兼ねる。

 お土産にサミーと一緒に作った焼き物アクセサリーと、干し海産物やらなにやら用意して、ヴェルナーのお休みが終わる日に出発した。
 馬車に揺られて5日目、サミーの村の手前にある小さな町は土妖精族しか見かけない。宿のチェックイン時に、ちょうどサミーの村へ戻る人がいたので伝言を頼んだ。サミーもラルフもコミュ力が高くて感心する。

 町を出て2日目の昼に村へ入った。伝言がちゃんと届いていたようで、実家に着く前に家のドアが開くのが見えた。
 背の小さいずんぐりした人たちがわらわらと、楽しそうに迎えてくれる。やたらと人が多くて誰が誰やらわからない。お義父さん8人の顔と名前も覚えられないのに兄弟とその結婚相手とその子供がいてわやくちゃだ。

 サミーの実家がある小さな村は小高い丘がいくつもある自然豊かな所だ。家は斜面に穴を掘って作られてて、ところどころ木で補強してる。天井の低い土壁を見ると『土妖精族』って呼び名がぴったりだな~と思う。
 私はギリギリ大丈夫だけど、ラルフたちは頭がつっかえるので外にテーブルとイスを出して歓迎会をしてくれた。

 みんな賑やかで明るい。楽しく笑ってお喋りするから緊張もほぐれる。しかも全員お酒をガバガバ飲んでる。

「おめーもとうとう結婚かぁ。よかったなぁ。いっつもフラれて泣いてたのによぅ」
「うるせーな。兄貴だって似たようなもんじゃねぇか」
「泣き落としでもしたのかぁ? がははは。なぁ、サミーのどこが気に入ったんだ?」
「どうでもいいこと聞くなよ」

 何番目かわからないお兄さんが、お酒を飲みながら聞いてきた。酔っ払いにからまれてるのを心配してるのか、サミーは隣で困った顔をしてる。

「優しくて頼りがいがあるとこですかね」
「おいおいおい、なんだよ、おめーもちゃんとやってんじゃねぇか。こいつ、昔から面倒見いいからよぉ」
「そうですね、頼りっぱなしです」
「ははは、そーかそーか。じゃんじゃんこき使ってやれよ、喜ぶから」
「なんだそりゃ」
「昔っから尻に敷かれるの好きだろ。それでいいように使われてフラれてたのになぁ。よかったな、サミー。いやーよかった」
「……まあな」

 酔っ払いは昔のことを持ち出すよね~。まあ喜びにわいて心配事が口から出たのかもしれないけど。

「なんでぇ、盛り上がってんな。何の話だ?」
「いやーサミーのどこに惚れたのか聞いたらよぉ」
「違うだろ」
「おもしれぇ話してんな。惚れられたって?」
「ホラ吹くなよ。泣き落としでもしたんだろ」

 兄か弟かわからないけど寄ってきた兄弟が、寄ってたかってサミーをからかってる微笑ましい光景を眺める。神殿にいたときは年長だったからしっかりして見えてたけど、こうやって兄弟と戯れてると子供っぽいところもあって可愛い。

 昼から始まった宴会は、手元が見えなくなるくらい暗くなったころに終わった。乗ってきた荷馬車に戻って横になる。つられて飲んだら、酔って頬が熱い。

「悪ぃな。疲れただろ。昔っからうるせーんだ」
「疲れたけど楽しかったよ。楽しい家族でいいね。サミーが優しく育ったの分かる気がする」
「……そうか? 嫌なことがなかったなら良かった」
「ないよ。サミーが子供みたいで可愛かった」
「ははっ、兄貴たちはいつまでたっても俺をガキ扱いすんだ」


 ***

 Side サミー

 布を降ろした荷馬車の中は真っ暗だけど、夜目がきく俺にはサヤカが笑ってるのが見える。俺の手を握る薄い手は酒のせいか温かい。火照った頬を撫でたら気持ち良さように目を閉じた。
『優しくて頼りがいがある』って言われて嬉しかった。でもなんつうか、男としてってより兄か父親みたいなんだろうとも思う。俺に撫でられて気持ち良さようにしてるサヤカが子供みたいで可愛いのに、男として見られてないことに少し落ち込む。
 フラれなかっただけでいいと思ってのに、いつのまにか贅沢になっちまったな。

「サミーはお酒強いね」
「ああ、土妖精族は大抵強いな。大酒飲みばっかだ」
「私は酔っ払ったよ、ふふふ」
「そうだな、熱くなってる」

 サヤカが俺に体を摺り寄せて口付けをした。

「どうした?」
「んー、ふふ、尻に敷かれるの好きなの?」
「あー、なんつーか、なんでもやってやりたくなんだよ」
「ふふ」

 酔っ払ったサヤカが楽しそうに笑い、猫見てぇに頬ずりをしてくるから可愛くてたまらなくなる。兄貴みたいに思われてても、こんなふうに懐かれんなら充分すぎるくれぇだな。

「お願いしたら聞いてくれるの?」
「聞けることならな。なんだ? なんか欲しいモンでもあんのか?」
「うん。ちょうだい」

 そう言って俺の頭を抱き寄せて唇を食んだ。
 欲しいモンて口付けか? 飾りモンとかじゃなくて? 俺ってコトか? 胸がうるさく騒ぐ。

「……欲しいモンは?」
「これ」

 濡れた熱い舌が俺の唇を舐める。サヤカの吐息が吹き込まれて体温が上がった。俺の口付けが欲しいって? 初めて言われた言葉に頭ん中が沸いたように興奮する。
 いつもより絡みつくのは酔ってるせいか? ……そんなのどうでもいい。体をすり付けながら俺の舌に音を立てて吸い付くサヤカが愛しくてしょうがない。

「……ん、……ふふ、いっぱいもらった」
「……もうお終いか?」
「ん、ねる。ごちそうさま」

 その気にさせておいて放り出すとか、ひでぇなぁ。自分の好きにする可愛らしい行動が嬉しくて胸が疼く。やっと遠慮が取れてきたみてぇだ。
 すぐに聞こえてきたサヤカの寝息に合わせてラルフがため息をついた。

「眠るとかナシだろ。あんな誘っといて」
「ははっ、酔ってたなぁ」
「譲ってやったのに寝かせんなよ。オレまで回ってこねぇじゃねぇか」
「家のヤツラがうるせぇから疲れたんだろ。仕方ねぇさ」

 腰が疼いたまんまだけど、それよりなにより口付けをねだられたのが嬉しい。

 翌日は一緒に羊の番をしに出掛けた。

「いっぱいいるね、羊。どっかいったりしないの?」
「大人しいもんさ。驚いたら走り出すけど」

 故郷の広い草原にサヤカと2人でいるって不思議な気分だ。
 草の上に横たわって空を見上げる。

「のんびりしてていいね」
「今時期はそうだな。子供はあらかた産まれ終わったし、秋は毛刈りがある。冬のぶんの草刈りも必要なんだ」
「じゃあ、良い時期にきたんだね」
「そうだな」

 サヤカも横たわって空を見上げてる。頬を撫でたら俺を見て笑った。それがどうしようもなく嬉しい。

 昼になって甥っ子が交代しにやってきた。家に戻って昼飯を食ったら、サヤカが夕飯の準備をしてる嫁さんたちのとこいって手伝い始める。
 あの中にサヤカがいるってことにむず痒さを感じた。だって、俺の、俺の嫁としてって……。まいった。嬉し過ぎる。なんだこれ。
 もっと近くで見たくなって俺も顔を出した。

「なんか手伝うことあるか?」
「あれま、この子ったら珍しい。そんな嫁さんと一緒にいたいのかい」
「あらー、昨日ウチの人から聞いた通りだわぁ。ベロベロに惚れてるってさぁ」

 母親と兄貴の嫁さんたちが笑うからバツが悪い。サヤカも可笑しそうに笑ってるからいいけどよ。

「なんだよ、俺たちの祝いなんだから手伝うだろ」
「照れ隠ししちゃって、まぁ。この子は昔っからこうでねぇ」
「昔のことはいいだろ。手伝うことねぇなら戻る」
「はいはい。お父さんたちと肉焼いて、酒の準備しといて。アンタたちが飲み散らかすんだから」
「おう、わかった」

 戻るときにサヤカをチラッと見たらやっぱり笑ってて、なんだか無性に恥ずかしくなった。背中越しにからかう笑い声が聞こえるから、さっさと逃げて貯蔵室に行った。
 親父たちと酒樽を運んで肉を焼く準備をする。ラルフたちも一緒になって働いてくれた。

 今日は村人を招待しての祝いだ。大袈裟にしなくていいと言ったのに祝い事の声掛けしないのは失礼だと説教された。
 夕方、出来上がった料理が次々とテーブルに並び、サヤカと俺が並んで座る。近所の顔なじみや幼なじみがやってきて、祝いと冷やかしを受けた。

 賑やかに喋って飲んですっかり夜も更けたころ、眠そうなサヤカに気付いて荷馬車まで送った。

「お疲れさん。ゆっくり寝てくれ」
「うん。サミーはまだ起きてるの?」
「ああ。幼なじみとも久しぶりだからな」
「ゆっくり楽しんで」

 酔っ払ったサヤカがへにゃりと笑うから、見てる俺まで顔がゆるむ。鼻を撫でると横になったまま甘えたような声を出した。

「ふふ。おやすみは?」
「おやすみ」
「違う」
「なんだ?」

 なにかわからない俺に両腕を伸ばすから抱きしめた。酔っ払うと甘えるんだな。可愛くて笑いが漏れる。

「笑ってる」
「サヤカが可愛くて」
「ホント?」
「ああ」

 サヤカが楽しそうに笑って俺に口付けた。唇が動いて俺を求めてる。
 ああ、まただ。嬉しくてどうにかなりそうな気持ち。熱い舌で口の中をまさぐられる興奮が体に火を付ける。押し付けられる胸の膨らみにしゃぶりつきたくてたまらない。

 濡れた吐息をこぼしてサヤカの唇が離れる。

「っ、ふ、……おやすみ」
「勘弁してくれよ」
「なにが?」
「抱きたくなるじゃねぇか」
「そうなの?」
「そんな色っぽい声出して」
「本当だ」

 サヤカの手が硬くなった俺のモノを確かめた。ゆるく撫でられて衝動がこみ上げる。

「っ、サヤカ」

 今度は俺がサヤカの口の中を撫でまわす。息をこぼして舌を絡めてくるサヤカの手が、ズボンの紐を解いて直に触れてきた。
 ぬめってる先端を撫でられて腰が震える。このまま押し倒しちまおうかと思ったら、逆に押し倒された。俺を見下ろして妖しく笑うサヤカに、はち切れそうなほど硬くなる。捩じ込まれたサヤカの舌に、夢中になって吸い付いた。

 硬くなった根元をつかまれたかと思うと、熱くぬめった柔肉に飲み込まれて全身に鳥肌が立つ。
 口付けしかしてないのに、なんでこんなになってんだよ。そんなに欲しかったってことか?
 興奮で息があがる。俺を待ち焦がれてたみてぇに吸い付いて動くからたまらない。微かにこぼれる吐息と押さえた声にますます情欲を煽られる。

「サミー……ちょうだい、……ぁっ」

 掠れた小さい声で俺を呼ぶ愛しい女。ヌルヌルと涎をこぼして俺を咥え込む可愛い女。
 なんで男としてみられてねぇって思ったんだ? いつだってこうして俺を呼ぶのに。いつだってこうして俺を飲み込んでたのに。
 蠢く肉のヒクつきに搾り上げられる。興奮がひどくて我慢出来そうにない。サヤカの腰を掴んで下から押し付けた。

「サヤカっ、くっぅ、う……、く、はっ、ぅっ」

 腰を抱いて一滴残らず中に吐き出した。俺が動きを止めたら、息を切らしたサヤカが覆い被さった。

 呼吸が整うと笑って俺の頭に口付けをした。

「ふふ、しちゃった」
「……我慢できなかったのか?」
「うん」

 サヤカの答えに胸が苦しくなった。嬉しくてどうしようもねぇ。自分の気持ちが一方的じゃないとわかって。サヤカに求められて。

 サヤカが横たわり、俺を見て笑う。

「もう戻らないとね。ゆっくり楽しんで」
「……ああ」

 ひたいに口付けると嬉しそうに笑い、俺に手を振った。
 フワフワした足取りで家に戻ったら、腑抜けた顔してるだの鼻の下が伸びてるだの冷やかされた。

「嫁さんもアンタのこと褒めてたよ。仲良くやってんじゃないの。安心したわ」
「だなぁ。お情けで結婚してもらったのかと思ってたのに、そうでもなさそうだなぁ。良かったわな」
「おめーにも春がきたってことか。めでてぇじゃねぇか」

 惚れた女に好かれて、家族は祝ってくれて、あまりに幸せで泣きそうになる。

「なんだよ、おめー泣くなよ。今だけかもしんねーからよ、長続きする秘訣をおふくろと親父に聞いとけ聞いとけ」
「……そうだな。頼むわ」
「なんだかんだ70年は一緒にいるからねぇ。なにかってーと口うるさいのは嫌だわね。人に言うなら自分でやれってねぇ」
「んでも、母ちゃんだってよぅ」

 俺たちもこうやってずっと一緒にいれたらいいなぁ。相変わらず仲良く言い合いする親を眺めながらそう思った。


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