実妹と恋愛するのは間違っているだろうか!?

明日録

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第一章 変わる関係

10話 告白

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――ゆっくりと扉を開け、教室に入って来る。

「……お兄ちゃん? いる?」

 由衣は恐る恐る教室内の様子を伺いながら足を踏み入れる。
 俺の姿を見つけるとホッとした様子を見せ、こちらに近づいて来た。

「お兄ちゃん、どうしたの? 今日は生徒会、無かったんじゃないの?」

 由衣は額に汗をかき、息も少し上がっている。
 急いでここまで来たのだろうか……

「ええと、少し……その……予定が変わってな……」
「そうなんだ……電話に出てくれないし、心配しちゃった」

 由衣はそう言って、はにかんで笑顔を見せる。

「急いで来たんだからね」と照れ笑う。

「急に悪かったな――――っ」

 話を進めようとしたところ、由衣が距離を詰め、俺の頬に優しく手を添えた。

「大丈夫? ……顔色悪いよ?」
 
 由衣は心配そうに俺の顔色を確かめる。

「無理してない? 調子悪いなら今日はもう帰った方がいいんじゃない? 会長さんには私が伝えておいてあげようか?」
「いや、今日は……違うんだ、生徒会で残ってたわけじゃなくて……」

 由衣の気遣いが耐え難く、半歩下がって距離をとってしまう。
 俺の頬から由衣の手がスッと離れる。

「ええと……別の用事が……あってだな…………」
「……お兄ちゃん……もしかして寒いの? 手、震えてるよ?」
「……え?」

 自分の手を確かめると、いつの間にか強く握った拳がプルプルと震えていた。 

「風邪引いちゃったのかもね」

 由衣は俺の手を取り、そっと両手で包み込んだ。
 柔らかな手の感触と温かさに覆われながらも、俺の震えは止まらない。

「歩いて帰れそう? それとも少し休んだ方が良いかな……」

 慈愛に満ちた表情で俺に問うてくる。
 優しい目だ。
 でも今はその目で見られたくない。

「俺は……大丈夫だから……」
「無理しちゃ駄目だよ。早く家に帰って、ゆっくり休まないと」

 由衣は静かに俺の手を引いて、その場を離れようとする。

「ま、待ってくれ!」

 カメラの範囲から出るのは不味いと思い、由衣の手を払ってしまった。

「お兄ちゃん?」

 由衣は不思議そうに俺の顔を見つめてくる。

「今日は由衣に、話があって……それで……」
「……さっきくれたメッセージの『大切な話』?」
「…………そうだ」

 背中にジワリと汗が滲む。
 由衣は神妙な面持ちで、こちらを見ている。
 思わず視線を逸らしそうになるのをこらえて、俺も真っ直ぐと由衣の目を見た。

 ひとこと、『好きだ』と、そう言うだけ。
 ただそれだけ。

 これはただの悪戯。

 特別な意味なんて何もない。
 難しい事なんて何もない。

 なんてことない、簡単なこと。

 それを何度も何度も何度も、自分に言い聞かせる。

 そうしないとプレッシャーで押しつぶされそうだった。

 呼吸の震えが止まらない。
 身体の震えが止まらない。

「俺は……」

 声が詰まる。
 口が動かなかった。

 身体が言う事を聞いてくれない。

「……俺、は……」

 心臓が張り裂けそうな勢いで動いている。
 それなのに身体はピクリとも動かせない。
 まるで呪いのように……

「………………」

 由衣の顔を見る。
 由衣の顔だけを見る。
 

 ――そして


「俺は、お前が好きだ」

 かすれた声を出す……由衣にギリギリ届く速さで……

「おにい、ちゃん……?」

 由衣の困惑した表情が見える。


 ――もう一度、今度はハッキリと


「俺は……由衣の事が好きなんだ」

 そう言えた。

 言えたけど……駄目だった。

「だい、じょうぶ……?」

 由衣は戸惑い、言葉を詰まらせる。

 それもそうだろう……

 俺の目からは大量の涙が溢れているのだから……

 由衣の事が好きだと、
 そう言った瞬間に、
 感情が溢れ出した。

「ずっとまえから、すきだった」

 震える声を抑えきれずに、
 ぼろぼろと涙をこぼしながら、みっともなく。

 吐き出すように「好きだ」と告げる。

「あの……お兄ちゃん……わ、私……」

 由衣が口ごもり、視線を足元に泳がした。
 
「……」

 そこから先は何も言ってはくれない。
 足元を見つめ、何も言ってはくれない。

 俺は怖くなった。
 
 ――怖くなって、逃げ出した。

 扉を乱暴に開け廊下を走って、逃げ出したんだ。

 
 もっと簡単なはずだった。
 告白のふりをして、その動画をとって、悪戯だったと言うだけでよかったのに……
 俺は泣いてしまった。
 
 あれじゃ本気の告白だと思われたはずだ。

 由衣に嫌われたくなかった。

 気持ち悪い兄の姿を見せたくなかった。
 妹の事を好きになった兄の姿を見せたくなかった。
 
 知られたくなかった。
 絶対に知られたくなかった。

 でも失敗した。

 

 後悔しかない。

 だから俺は走って逃げたんだ。
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