【完】クールな貴方がくれたのは、サディスティックな溺愛でして

唯月漣

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2)しばられて……

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「っ!? んんーー……っ、ふ……」

 
 驚いたのはほんの一瞬だった。

 僕に覆いかぶさるアキ先生からは、ふんわりと大人の香水の香りが漂う。
 重ねられた唇は体温と濡れた感触を僕の唇に伝え、そのまま熱い舌が僕の唇を割った。

 歯列の間から入り込む舌は、僕の舌を絡めて舐め上げる。舌を軽く吸い上げられて、そのまま唾液を舐めとられた。

 夢にまで見た先生との初めてのキスは、予想外に濃厚すぎてクラクラしてしまう。
 薄目を開ける度にアキ先生と目が合って、心臓が弾けそうなぐらい高鳴った。アキ先生はキスをしながら薄目で僕の反応を楽しそうに見ている。

 ぬめりに任せて頬の内側を舌で擦られると、高鳴る心臓とは別に、体を疼かせる甘痒いような感覚が走った。
 真面目を絵に描いたようなアキ先生が、こんなにキスが上手いなんて……。


「ふぁ……、っん……」


 酸素を求めて大きく開いた口から、甘い吐息が漏れた。恥ずかしくてギュッと目を瞑っていると、アキ先生がようやく僕の口から唇を離す。


「せ、先生……? ……どう……っ……」


 どうして……と続けようとした僕は、両足の間に先生の膝が入り込む感触に気が付いて、驚きで言葉を飲み込んだ。
 先生の膝は明らかな意思を持って、僕の両足の根本にある小さな欲望を服越しにグリグリと刺激している。


「なっ、なっ…………」
「『何をするのか』って?」
「そ、それはその……」
「これから私は、約束を守れなかったシン君に『お仕置き』をするんですよ」
「え……?」


 そりゃー僕だって、両思いになって以来ずっと大好きな先生とのこういう行為を望んできた。
 けれど、僕と先生の初めてがこんな形でなされるだなんて、聞いてない……!


「やっ、やだ……!」
「まぁ、嫌なことをしないとお仕置きになりませんから」
「そういうことじゃなくて……、あっ……」


 すると不意に先生が押さえつけていた僕の手首から手を離した。


「やめますか? 別に良いですよ。私だって、別に無理矢理する気は無いんです。シン君がもっと勉強を頑張れるようになってくれさえすれば、それで」


 突然冷たく突き放されて、僕はフリーズしてしまった。

 違う……。
 僕は先生から逃げたい訳でも、先生に抱かれるのが嫌な訳でもなかった。
 じゃあ、一体僕は何が嫌だったんだろう……?

 初めてが理想通りじゃなかったから……?
 それこそ、それが先生の言うお仕置きというやつなのではないだろうか。
 勉強も出来ない、先生に抱かれたい、でもお仕置きは嫌だっていうのは、流石に我儘だ。
 そんな我儘ばかり言っていたら、僕は先生に捨てられてしまうのでは……?

 そんな不安が頭をよぎって、僕は唇を噛んだ。


「すみません。嫌じゃ、ないです」
「そうですか。では私にどうして欲しいか言ってみましょうか」
「うう……悪い点を取った僕にお仕置きをして下さい」
「ふふ……いいでしょう」


 アキ先生はいつもの穏やかな表情で、微笑みながらそう言った。
 けれども先生の手はゆっくりと僕のシャツのボタンを外していて、瞳の奥には普段とは違う僅かな欲望の光が宿っている。

 いつものように穏やかな表情であっても、決していつもの穏やかな先生ではないのだ。

 優しさと冷たさを使い分ける先生の視線に、僕はゾクリと興奮を覚える。
 この際お仕置きでも何でもいいから、身も心も大好きな先生の物になってしまいたい……。


「シン君、考えていることが表情にだだ漏れですよ」
「えっ……?」
「悪い子ですね。まぁ、恋人としては花丸を差し上げたい位ですが」


 そんなやり取りをしている間に僕のシャツのボタンはすっかり外されて、薄い胸板が蛍光灯の下で露わになっていた。

 昔から運動音痴の僕は、インドアな趣味+筋肉が付きにくい体質があいまって、華奢な体をしていた。
 羞恥のあまり両腕で胸元を覆って視線をそらした僕を、先生が涼しい顔で見つめている。


「私にこうして膝を割られ、裸体を見られているだけで興奮してしまいますか?」
「えっ……?」


 指摘されて慌てて下半身に目を向ければ、僕の股間には既に恥ずかしい膨らみが出来ていた。
 慌てて隠そうとする僕の腕を再び掴み上げた先生は、ベッドサイドに置いてあったスマホの充電コードを外すと、左右の手首を一纏めに括ってしまった。


「このコードは少々細いので、決して暴れないで下さいね。拘束した手に傷が付いては困るので」
「えっ……なんで……?」


 予想外の出来事に、僕は混乱した。
 拘束……? 暴れる……?? 僕が???

 愛する恋人と初めてセックスをするのに、拘束される理由とは…………。



 頭上にはてなマークを沢山浮かべて混乱している僕の唇に、再びアキ先生がキスを落とした。熱い舌で口腔を蹂躙され、粘膜同士の擦れを楽しむように舐められる。
 キスに応えようと必死に伸ばした舌を絡め取られ、歯列をなぞるように舐められた。

 擦れる粘膜はゾクゾクと湧き上がるような快楽を僕に伝えて、気持ちよさに少しずつ理性が痺れていく。



「っは、ぁ……っ。アキ、せんせ……」


 キスから開放されたのち僕が痺れた舌で名前を呼ぶと、先生は僕を一瞥した後側に置いてあった自らの鞄を引き寄せた。


「今回平均点以下だったのは英語と世界史、赤点を取ったのは現国でしたね?」
「…………っ!? ちょ……それ、なに……?」


 淡々と語りながら鞄の中身を取り出す先生に、僕は二度目のフリーズをしてしまった。
 先生の鞄から出てきたのは、AV動画でしか見た事のないようなカラフルな道具の数々だったからだ。


「えっ、ええっ……!?」


 まさかその道具を僕に使うの……? そう思ったら、怖くて怖くて堪らなかった。
 心の底から怖いと思っているはずなのに、何故だが僕は先生の鞄の中身をまじまじと観察してしまう。
 恐怖心に交じる高揚感に戸惑いながら、僕は初めて見る道具の数々をチラチラと横目で観察してしまった。
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