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母との面会
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マリアの体に負担をかけないように配慮してグレンは馬車を用意した。
あまりにも豪華な馬車だったのでマリアは驚いた。
「本当にこれで行くの?」
「ああ、早く乗れ。馬だとお前の体に負担がかかるかもしれんからな」
その心遣いが嬉しくてマリアは思わずグレンに抱きつきそうになった。
しかし、今は強い王を演じているので邪魔するわけにはいかない。
演技とは知っているが物凄い威圧感を感じる。
正直に言うと”怖い”。
馬車の中には2人きり。
(何を話していいのかわからない・・・)
馬車の中は静まり返っていた。
グレンは威厳を保たなければいけないのだからマリアもグレン王と呼び、敬語を使うべきだろう。
そして馬車に揺られること30分くらい経った頃だろうか・・・。
「着いたぞ」
「はい」
「そのドレスでは1人で降りれまい」
そう言いグレンはマリアに手を差し伸べた。
マリアは普段ならその手を取ることはしないだろう。
しかし、王であるグレンに恥をかかせるわけにはいかない。
「はい。ありがとうございます」
そう言いグレンの手を取り、馬車から降りた。
「グレン王、母の病室は何処ですか?」
「そう急くな。すぐに会える」
そわそわするのをぐっと堪え、マリアはグレン王に手を引かれたまま歩いた。
建物はまるで巨大な教会のようなものだった。
「ここが高度医療施設ですか?」
「ああ」
白を基調とした建物で、天井は高く廊下は広い。
中庭まであり散歩もできるようになっていた。
食堂もあった。
マリアがきょろきょろとしていることに気が付いたグレンは言った。
「マリア、あまりきょろきょろするな」
「はい、すみません」
好奇心旺盛なマリアにはなかなか難しい事だった。
だが、王命は絶対だ。
暫く歩いた後にピタッとグレンが歩みを止めた。
「ぶふっ」
ドンっとグレンの背にぶつかってしまった。
急に立ち止まったグレンの背に顔をぶつけおかしな声を上げてしまった。
(優雅に振舞うのは難しいな・・・)
グレンは戸をノックすると中から懐かしい声が聞こえた。
「どなた?」
「私だ」
「グレン王様!!どうぞお入りください!」
母は畏まってグレンを部屋に招き入れた。
そしてマリアの存在に気が付くとベッドから降りマリアの元へ駆け寄ってきた。
あの寝たきりだった母が走っている。
それを見てマリアは驚いた。
「母と募る話があろう?俺は中庭にいるから面会が終わったら来い」
そう言い、部屋から出て行ってしまった。
「母さん!母さん!」
そう言いながらマリアは泣きじゃくった。
「まぁ、なあに小さい子みたいよ?」
「・・・もう病気は治ったの?」
「いいえ、私の病気はそう簡単には治るものではないらしいの」
母はマリアの頬に手を当てて優しく撫でた。
「そうなの・・・」
「でも、良い暮らしをさせてもらっているわ」
「うん、良かった」
そう言いマリアは母を少しでも元気づけるために微笑んで見せた。
「母さん、ベッドへ戻ろう?立ったまま話すのは辛いでしょう?」
「そうね、少しきついわ」
マリアは母をベッドへ寝かせ、自分はベッドに腰を下ろした。
「後宮での生活は不便な事無い?」
「無いよ。グレン王が私に子犬をプレゼントしてくれて毎日一緒に遊んでいるの。とっても可愛いよ」
「そう!良くしてもらっているのね」
「うん。私は大丈夫。母さんは平気?」
「私も平気よ。たまに父さんがお見舞いに来てくれるの」
「そうなんだ、良かった」
2人は別れを惜しんで抱き合った。
「グレン王をお待たせするわけにはいかないから私はもう行くね?」
「・・・マリア、あなた・・・」
「ん?」
母はマリアが”女”になった事に気が付いたが途中で言うのをやめた。
「なんでもないわ。グレン王様によろしくお伝えしてね」
そう言い2人は別れた。
マリアは母の元気な姿を見れて満足だった。
(確か、中庭にグレンが待っているのよね)
マリアは急いで中庭に行った。
中庭には見慣れた姿があった。
「もう、満足したか?」
「はい、母が元気なのを見れて安心しました」
「俺を疑っていたのか?」
少しムッとした声音で問われ、マリアは焦った。
「違います。そういうわけじゃなくて・・・」
マリアは周りを見渡した。
人の気配はない。
「グレン王、少し屈んでくれますか?」
「こうか?」
マリアは自分からグレンにキスをした。
「今、することか?」
「だって・・・グレン王が変な誤解をするから」
「?」
「感謝しています。ありがとうございます」
素直に言うとグレンがマリアに言った。
「素直なマリアは気持ち悪いな・・・」
「!?」
(酷い!私だって素直になる時もあるもの)
本当ならそう言いたかったがここは後宮ではない。
文句は後宮に帰ってから言おう。
マリアはそう思った。
「それでは城へ戻るぞ」
「はい」
差し出された手を取り、来た道を引き返していった。
あまりにも豪華な馬車だったのでマリアは驚いた。
「本当にこれで行くの?」
「ああ、早く乗れ。馬だとお前の体に負担がかかるかもしれんからな」
その心遣いが嬉しくてマリアは思わずグレンに抱きつきそうになった。
しかし、今は強い王を演じているので邪魔するわけにはいかない。
演技とは知っているが物凄い威圧感を感じる。
正直に言うと”怖い”。
馬車の中には2人きり。
(何を話していいのかわからない・・・)
馬車の中は静まり返っていた。
グレンは威厳を保たなければいけないのだからマリアもグレン王と呼び、敬語を使うべきだろう。
そして馬車に揺られること30分くらい経った頃だろうか・・・。
「着いたぞ」
「はい」
「そのドレスでは1人で降りれまい」
そう言いグレンはマリアに手を差し伸べた。
マリアは普段ならその手を取ることはしないだろう。
しかし、王であるグレンに恥をかかせるわけにはいかない。
「はい。ありがとうございます」
そう言いグレンの手を取り、馬車から降りた。
「グレン王、母の病室は何処ですか?」
「そう急くな。すぐに会える」
そわそわするのをぐっと堪え、マリアはグレン王に手を引かれたまま歩いた。
建物はまるで巨大な教会のようなものだった。
「ここが高度医療施設ですか?」
「ああ」
白を基調とした建物で、天井は高く廊下は広い。
中庭まであり散歩もできるようになっていた。
食堂もあった。
マリアがきょろきょろとしていることに気が付いたグレンは言った。
「マリア、あまりきょろきょろするな」
「はい、すみません」
好奇心旺盛なマリアにはなかなか難しい事だった。
だが、王命は絶対だ。
暫く歩いた後にピタッとグレンが歩みを止めた。
「ぶふっ」
ドンっとグレンの背にぶつかってしまった。
急に立ち止まったグレンの背に顔をぶつけおかしな声を上げてしまった。
(優雅に振舞うのは難しいな・・・)
グレンは戸をノックすると中から懐かしい声が聞こえた。
「どなた?」
「私だ」
「グレン王様!!どうぞお入りください!」
母は畏まってグレンを部屋に招き入れた。
そしてマリアの存在に気が付くとベッドから降りマリアの元へ駆け寄ってきた。
あの寝たきりだった母が走っている。
それを見てマリアは驚いた。
「母と募る話があろう?俺は中庭にいるから面会が終わったら来い」
そう言い、部屋から出て行ってしまった。
「母さん!母さん!」
そう言いながらマリアは泣きじゃくった。
「まぁ、なあに小さい子みたいよ?」
「・・・もう病気は治ったの?」
「いいえ、私の病気はそう簡単には治るものではないらしいの」
母はマリアの頬に手を当てて優しく撫でた。
「そうなの・・・」
「でも、良い暮らしをさせてもらっているわ」
「うん、良かった」
そう言いマリアは母を少しでも元気づけるために微笑んで見せた。
「母さん、ベッドへ戻ろう?立ったまま話すのは辛いでしょう?」
「そうね、少しきついわ」
マリアは母をベッドへ寝かせ、自分はベッドに腰を下ろした。
「後宮での生活は不便な事無い?」
「無いよ。グレン王が私に子犬をプレゼントしてくれて毎日一緒に遊んでいるの。とっても可愛いよ」
「そう!良くしてもらっているのね」
「うん。私は大丈夫。母さんは平気?」
「私も平気よ。たまに父さんがお見舞いに来てくれるの」
「そうなんだ、良かった」
2人は別れを惜しんで抱き合った。
「グレン王をお待たせするわけにはいかないから私はもう行くね?」
「・・・マリア、あなた・・・」
「ん?」
母はマリアが”女”になった事に気が付いたが途中で言うのをやめた。
「なんでもないわ。グレン王様によろしくお伝えしてね」
そう言い2人は別れた。
マリアは母の元気な姿を見れて満足だった。
(確か、中庭にグレンが待っているのよね)
マリアは急いで中庭に行った。
中庭には見慣れた姿があった。
「もう、満足したか?」
「はい、母が元気なのを見れて安心しました」
「俺を疑っていたのか?」
少しムッとした声音で問われ、マリアは焦った。
「違います。そういうわけじゃなくて・・・」
マリアは周りを見渡した。
人の気配はない。
「グレン王、少し屈んでくれますか?」
「こうか?」
マリアは自分からグレンにキスをした。
「今、することか?」
「だって・・・グレン王が変な誤解をするから」
「?」
「感謝しています。ありがとうございます」
素直に言うとグレンがマリアに言った。
「素直なマリアは気持ち悪いな・・・」
「!?」
(酷い!私だって素直になる時もあるもの)
本当ならそう言いたかったがここは後宮ではない。
文句は後宮に帰ってから言おう。
マリアはそう思った。
「それでは城へ戻るぞ」
「はい」
差し出された手を取り、来た道を引き返していった。
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