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ロージュ
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ロージュは苛立っていた。
(何よ!一時的な保護ですって!?馬鹿にしているの!?)
「あんな庶民出の女を傍に置いて!」
しかも、危害を加えると国外追放されるなんて噂を聞き頭に血が上った。
「少し珍しい容姿をしているからって寵愛を受けて」
「せっかく後宮に入れたのに!」
後宮にいる間、ロージュはグレンに迫る気でいた。
どんな手を使ってもグレンの心を手に入れたかった。
それなのにもう寵妃と呼ばれているマリアがいた。
計算外だった。
グレンは自分の事をただの幼馴染としか見ていないという事は知っている。
でも、もしかしたらー・・・。
何て淡い期待を持っていた。
それが見事に破られた。
この苛立ちはマリアにぶつけるしかいない。
そう思い先日喧嘩を売りに行った。
するとマリアの方が上手だった。
マリアに負けた自分が惨めに感じた。
あの容姿になんて死んでもなりたくない。
(薄気味悪い娘・・・)
父が帰ってくる前にグレンに会って自分こそ相応しい事を伝えたくなった。
呼び鈴を鳴らし、侍女を呼びつけグレン宛に書いた手紙を渡すように頼んだ。
手紙の内容は、今夜この部屋に来てくれないならマリアに危害を加えるという過激なものだった。
父の立場があるから国外追放の恐れはない。
ロージュにはそれは適応できなかった。
「グレンはどんな顔をするかしら」
夜になりグレンはマリアに手紙の事を打ち明けた。
すると意外な事に自分も一緒に行くと言い出した。
「私に危害を加える気なんでしょう!?出来るものならやってもらいましょう」
マリアは大人しい見かけによらず結構強気な性格をしていることを失念していた。
グレンは何とかマリアを宥め、1人で行こうとした。
しかし、マリアは連れて行ってくれないなら暫く夜の営みはしないと言い出した。
「マリア、それだけは勘弁してくれ」
2人の女に脅迫されてグレンは頭を痛めた。
仕方なくマリアも連れて行くことにした。
「マリア、ロージュは激情型の人間だからあまり刺激しないでくれ」
「わかった」
(本当に分かっているのだろうか・・・)
グレンは不安になった。
グレンはロージュの前でも威厳のある態度をとっているという。
マリアもグレンに付いていく以上彼に敬語を使わなければいけない。
ロージュは本当のグレンの姿を知らない。
本当は心配性で性欲旺盛で甘えん坊な一面がある事なんて知らない。
それなのに好きだという。
(虚像の王に憧れを抱いているだけじゃないの)
そう思うと少し頭にきた。
でもなるべく穏便に過ごさなければならない。
とりあえずは黙ってグレンとロージュのやり取りを見ていようとマリアは思った。
廊下をグレンと一緒に歩いているだけで後宮中がざわめいた。
ロージュの部屋の戸をノックした。
するとすぐにとは開き、中からロージュが出てきた。
「グレン!久しぶりね」
そう言いグレンに抱きついた。
その光景を見たマリアは苛立った。
「離せ、馴れ馴れしくするな。もう昔と違うんだ」
「こんばんは、ロージュ様」
「あなた!何でいるのよ!!」
マリアは動じることなく冷静に言い放った。
「私に危害を加えたいとお手紙に書いてあったので・・・」
「そうよ!本当なら、グレンの隣は私の場所なんだから!」
グレンはやはりこうなったかと思い喧嘩の仲裁に入った。
「俺が寵愛しているのはマリアだけだ。他の女に興味はない」
「何よ、容姿がそんなに気に入っているの!?」
「俺が彼女を寵愛しているのは容姿が人と違うからではない」
「じゃあ何だっていうの!?」
「マリアの人柄に惚れているんだ」
「~っ!何よマリア、マリアって」
そう言い近くに置いてあった果物ナイフを手に取り、マリアの髪を掴みザっと切った。
一瞬の出来事で避けきれなかった。
グレンも止めに入るのに間に合わなかった。
「せっかくの白髪が台無しね」
グレンは冷たい空気を纏っている。
(まずい・・・本気で怒っている・・・)
こういう時のグレンは何をするか分からない。
グレンはロージュの胸ぐらを掴むと両頬を思い切り平手打ちした。
ロージュは突然のことで反応できなかった。
「お前も国外へ追放してやろうか?」
「待ってください!髪を切られたくらい平気です!!」
マリアは急いで呼び鈴を鳴らしロージュ付きの侍女に冷えたタオルを持ってくるよう指示した。
それをロージュの頬に当てようとしたがロージュはマリアの手を振り払った。
「冷やすくらい自分で出来るわ!!同情なんかしないで」
「ロージュ・・・いい加減にしろ!」
「マリアに免じて後宮追放で我慢してやるが今度マリアに何かしたら許さない」
グレンはマリアを担ぎ、後宮の廊下をずかずか歩いた。
そして、部屋に帰りすぐにマナを呼びマリアの髪を整えさせた。
「まぁ!一体どうなさったんですか!?」
2人は答えなかった。
「すぐに整えますね」
マリアの髪は肩より上の長さになってしまった。
(ロングヘア気に入ってたのにな・・・)
「マリア、守りきれなくてすまない」
グレンはマリアに頭を下げた。
「わぁ!!そんな風に謝らないでよ!!王様でしょう!」
「挑発した私も悪いし、ロージュも後宮から出ていく事になったし・・・」
結果的にはこれ位で済んでよかったと思うマリアだったがグレンは落ち込んでいた。
「グレン・・・終わったことを悔いても仕方ないよ」
「そうだな、その髪型もよく似合っている」
気が付くとマナの姿はもうなかった。
「・・・今日は抱いて欲しい」
「喜んで。こっちへ来い」
差し伸べられた手を取り、マリアは体をグレンに委ねた。
気のせいかいつもより優しく抱かれていることに気が付いた。
(何よ!一時的な保護ですって!?馬鹿にしているの!?)
「あんな庶民出の女を傍に置いて!」
しかも、危害を加えると国外追放されるなんて噂を聞き頭に血が上った。
「少し珍しい容姿をしているからって寵愛を受けて」
「せっかく後宮に入れたのに!」
後宮にいる間、ロージュはグレンに迫る気でいた。
どんな手を使ってもグレンの心を手に入れたかった。
それなのにもう寵妃と呼ばれているマリアがいた。
計算外だった。
グレンは自分の事をただの幼馴染としか見ていないという事は知っている。
でも、もしかしたらー・・・。
何て淡い期待を持っていた。
それが見事に破られた。
この苛立ちはマリアにぶつけるしかいない。
そう思い先日喧嘩を売りに行った。
するとマリアの方が上手だった。
マリアに負けた自分が惨めに感じた。
あの容姿になんて死んでもなりたくない。
(薄気味悪い娘・・・)
父が帰ってくる前にグレンに会って自分こそ相応しい事を伝えたくなった。
呼び鈴を鳴らし、侍女を呼びつけグレン宛に書いた手紙を渡すように頼んだ。
手紙の内容は、今夜この部屋に来てくれないならマリアに危害を加えるという過激なものだった。
父の立場があるから国外追放の恐れはない。
ロージュにはそれは適応できなかった。
「グレンはどんな顔をするかしら」
夜になりグレンはマリアに手紙の事を打ち明けた。
すると意外な事に自分も一緒に行くと言い出した。
「私に危害を加える気なんでしょう!?出来るものならやってもらいましょう」
マリアは大人しい見かけによらず結構強気な性格をしていることを失念していた。
グレンは何とかマリアを宥め、1人で行こうとした。
しかし、マリアは連れて行ってくれないなら暫く夜の営みはしないと言い出した。
「マリア、それだけは勘弁してくれ」
2人の女に脅迫されてグレンは頭を痛めた。
仕方なくマリアも連れて行くことにした。
「マリア、ロージュは激情型の人間だからあまり刺激しないでくれ」
「わかった」
(本当に分かっているのだろうか・・・)
グレンは不安になった。
グレンはロージュの前でも威厳のある態度をとっているという。
マリアもグレンに付いていく以上彼に敬語を使わなければいけない。
ロージュは本当のグレンの姿を知らない。
本当は心配性で性欲旺盛で甘えん坊な一面がある事なんて知らない。
それなのに好きだという。
(虚像の王に憧れを抱いているだけじゃないの)
そう思うと少し頭にきた。
でもなるべく穏便に過ごさなければならない。
とりあえずは黙ってグレンとロージュのやり取りを見ていようとマリアは思った。
廊下をグレンと一緒に歩いているだけで後宮中がざわめいた。
ロージュの部屋の戸をノックした。
するとすぐにとは開き、中からロージュが出てきた。
「グレン!久しぶりね」
そう言いグレンに抱きついた。
その光景を見たマリアは苛立った。
「離せ、馴れ馴れしくするな。もう昔と違うんだ」
「こんばんは、ロージュ様」
「あなた!何でいるのよ!!」
マリアは動じることなく冷静に言い放った。
「私に危害を加えたいとお手紙に書いてあったので・・・」
「そうよ!本当なら、グレンの隣は私の場所なんだから!」
グレンはやはりこうなったかと思い喧嘩の仲裁に入った。
「俺が寵愛しているのはマリアだけだ。他の女に興味はない」
「何よ、容姿がそんなに気に入っているの!?」
「俺が彼女を寵愛しているのは容姿が人と違うからではない」
「じゃあ何だっていうの!?」
「マリアの人柄に惚れているんだ」
「~っ!何よマリア、マリアって」
そう言い近くに置いてあった果物ナイフを手に取り、マリアの髪を掴みザっと切った。
一瞬の出来事で避けきれなかった。
グレンも止めに入るのに間に合わなかった。
「せっかくの白髪が台無しね」
グレンは冷たい空気を纏っている。
(まずい・・・本気で怒っている・・・)
こういう時のグレンは何をするか分からない。
グレンはロージュの胸ぐらを掴むと両頬を思い切り平手打ちした。
ロージュは突然のことで反応できなかった。
「お前も国外へ追放してやろうか?」
「待ってください!髪を切られたくらい平気です!!」
マリアは急いで呼び鈴を鳴らしロージュ付きの侍女に冷えたタオルを持ってくるよう指示した。
それをロージュの頬に当てようとしたがロージュはマリアの手を振り払った。
「冷やすくらい自分で出来るわ!!同情なんかしないで」
「ロージュ・・・いい加減にしろ!」
「マリアに免じて後宮追放で我慢してやるが今度マリアに何かしたら許さない」
グレンはマリアを担ぎ、後宮の廊下をずかずか歩いた。
そして、部屋に帰りすぐにマナを呼びマリアの髪を整えさせた。
「まぁ!一体どうなさったんですか!?」
2人は答えなかった。
「すぐに整えますね」
マリアの髪は肩より上の長さになってしまった。
(ロングヘア気に入ってたのにな・・・)
「マリア、守りきれなくてすまない」
グレンはマリアに頭を下げた。
「わぁ!!そんな風に謝らないでよ!!王様でしょう!」
「挑発した私も悪いし、ロージュも後宮から出ていく事になったし・・・」
結果的にはこれ位で済んでよかったと思うマリアだったがグレンは落ち込んでいた。
「グレン・・・終わったことを悔いても仕方ないよ」
「そうだな、その髪型もよく似合っている」
気が付くとマナの姿はもうなかった。
「・・・今日は抱いて欲しい」
「喜んで。こっちへ来い」
差し伸べられた手を取り、マリアは体をグレンに委ねた。
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