生贄姫巫女と土地神

えりー

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穏やかな日々

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美濃は毎日料理の勉強に励んだ。
最近は料理作りが上達したので楽しいらしい。

今日は紬と一緒の時は魚を釣りに出かけていた。
なかなか釣れないので魚釣りは諦め、2人は水遊びをして楽しんでいた。
2人共びしょ濡れになることも気にせず遊んだ。
水は澄んでいてとても綺麗だった。
「ねぇ、紬」
「何だ?」
「こんな日がずっと続くと良いね」
岩場に座っていた紬が勢いよく立ち上がった。
「まさか、また見たのか?」
美濃は頭を左右に振った。
実は美濃にはもう何の力もない。
紬に抱かれるようになってから風も読めないし、先見の力も失った。
その事を紬には何となく言えずにいた。
(伝えるときっと彼は気にする)
だから、前見たビジョンがいつ起こることか不安でしかなかった。
(あんなに手放したかった力なのに・・・)
今、村では日照りが続き作物が育たなくなってきていると紬から聞いた。
確かにここのところ雨が降っていない。
(私は何の為に生贄にされるのだろう)
まさか雨ごいに利用しようとしているのではないだろうか。
だからいまだに諦めずに私を探しているのではないのだろうか・・・。
暫く、美濃が考え込んでいると紬が美濃の顔を覗き込んだ。
「どうしたんだ?考え事か?」
「うん・・・ちょっと・・・」
そう答えると顔に水をかけられた。
「冷たいです!!急に何をするんですか!」
負けずと紬に水をかけた。
「ははははは、やっぱり元気な美濃が好きだな」
「え・・・」
そんな事ふいに言われると胸が高鳴った。
「わ、私も大好きです」
美濃が告白すると紬も真っ赤になり2人共自然と距離を縮め、口づけを交わした。
見つめ合いながら煌く水面の中でする口づけはいつもと違って新鮮だった。
2人共いつの間にか岩場に腰を下ろしていた。
岩場に押し倒されじゃれ合うように口づけを何度も交わす。
こんな幸せがいつまでも続くことを美濃と紬は願った。

ある日、山に人が入った気配を感じた紬は言った。
「外は危険だから小屋から出るな。お前の予言通り誰か来たらしい」
「・・・はい」
そう言い2人は別れた。
美濃は小屋へ、紬は村人のところまで。
「おい、そこの”人間”ここが”禁忌の森”と知って入ったのか?」
「貴方様が土地神様ですか?」
村人は土地神の姿を初めて見たが冷静だった。
「ああ、俺が土地神だが何か用か?」
冷たい声音でそう言うと村人はたじろいだ。
「私は村長のトキという者です。どうかお力をお貸しください」
「村長にしては年が若いな・・・」
紬は疑った。
「俺に何を求める?」
「村に山の水を少しでいいので分けていただきたいのです」
「・・・わかった。明日にでも水を分けよう。しかし、条件がある」
「何でしょうか?」
「二度とこの森へ入ることを禁ずる」
トキはあまりの迫力に飲まれて頷くしかなかった。
翌日約束通りに村へ水を流してやった。
その間結界の効果が薄れるが二度と山には入らないことを約束させていたので紬は安心しきっていた。
その安心が間違いだったことに気が付くのは小屋に帰ってからの事だった。

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