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それから・・・
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「先見の予言は外れたな」
「はい、今こうして生きています」
村人たちは全員濁流にのまれ死に村には木々や死体が散乱していた。
紬は土地神の力を使い、村ごと土に埋めた。
いつまでも手を合わせている美濃に言った。
「こいつらのせいで一生歩けない体になったんだぞ?」
「でも中には良い方もいたからー・・・」
「そうか・・・」
そう短く答えると美濃は両手を広げてきた。
どうやら立ち上がりたいらしい。
だが、立ち上がらせるわけにはいかなかった。
美濃は怪我をしている。
軽々と紬は美濃を抱き上げその場に立った。
「もう弔いは終わったか?」
「・・・はい」
帰りがけ座敷牢も紫色の炎で燃やした。
もう美濃は普通の女の子だ。
何の力もない普通のー・・・。
「美濃いつから力が使えなくなった?」
美濃は真っ赤になりながら答えた。
「初めて紬に抱かれてからです」
「俺のせいか・・・」
落ち込む紬に美濃は言った。
「気にしないでください。あんな力ない方がいいです」
「・・・そうだな」
「はい」
美濃は嬉しそうに笑いながら返事をした。
「あの・・・銀髪の人はどうなったんですか?」
「・・・俺が殺して燃やした」
自分の手をじっと見つめそう言うと美濃は少し悲しそうな顔をした。
「どうして悲しそうにしている?」
「紬が辛そうだから・・・」
(あいつと俺は似ていた)
俺も一歩間違えればああなっていたかもしれない。
何故なら紬も母親が人間だったからだ。
幼い頃両親が亡くなりずっと山を守ってきた。
1人きりでー・・・。
その孤独は計り知れないものだった。
この事はいずれ美濃に話すつもりでいる。
だが美濃はそんな事気にしないだろう。
美濃はそういう娘だ。
「美濃、俺が何者でもこれからも愛してくれるか?」
美濃はまた真っ赤になりながら紬の腕の中で頷いた。
小屋に着くと紬はゆっくり美濃を降ろした。
美濃は足の痛みに顔を歪めた。
2人共泥だらけで着物も汚れていた。
以前渡しそこねていたものを美濃に渡した。
それは巫女装束ではなく今、町で流行っている着物だった。
「この衣装は・・・」
美濃は目を輝かせながら呟いた。
「お前はもう普通の女の子だ、その巫女装束も必要ないだろう?」
「ありがとうございます」
素直に美濃は喜んでくれた。
そんな美濃が愛おしく感じられた。
気が付くと口づけをしてしまっていた。
「悪い」
真っ赤になりながら急いで離れようとすると、美濃から頬に口づけをされた。
「美濃?」
「着物のお礼です」
にっこり微笑まれ紬はうろたえてしまった。
「俺も着替えてくる。そこを動くなよ」
「はい」
「一応小屋にも結界を張りなおす」
そう言い残し紬は風呂場に行ってしまった。
どうやら着替える美濃に気を使っているらしかった。
美濃は巫女装束を脱ぎ捨て、新しい着物に袖を通しした。
「この着物・・・絹・・・」
きっと高価なものに違いない。
本当に貰ってよかったのだろうかと不安になった時、紬の声がした。
「着替えは終わったか?」
「はい、あのこの着物高価な物なんじゃ・・・」
「若い娘は着飾るものだろう?」
「よくわかりませんが本当にありがとうございます」
「改まって言うな。恥ずかしくなる」
「はい」
水が入った桶と手拭いを渡された。
「汚れているところはこれで拭いてくれ」
「すみません」
「謝るな。これからは俺がお前の世話を全てしてやる」
「・・・厠は1人で行きたいです」
「分かっている」
紬が心配性なのを知っているので念を押しておいた。
こうしてまた新しい生活が始まった。
毎日足の腱のところに神力をあててくれる紬。
おかげで斬られた腱は回復していった。
「先の事はもうわかりませんが紬が一緒なら何も怖くありません」
「ああ、今度こそ美濃を守ると誓う」
こうして2人の生活は続いていくー・・・。
「はい、今こうして生きています」
村人たちは全員濁流にのまれ死に村には木々や死体が散乱していた。
紬は土地神の力を使い、村ごと土に埋めた。
いつまでも手を合わせている美濃に言った。
「こいつらのせいで一生歩けない体になったんだぞ?」
「でも中には良い方もいたからー・・・」
「そうか・・・」
そう短く答えると美濃は両手を広げてきた。
どうやら立ち上がりたいらしい。
だが、立ち上がらせるわけにはいかなかった。
美濃は怪我をしている。
軽々と紬は美濃を抱き上げその場に立った。
「もう弔いは終わったか?」
「・・・はい」
帰りがけ座敷牢も紫色の炎で燃やした。
もう美濃は普通の女の子だ。
何の力もない普通のー・・・。
「美濃いつから力が使えなくなった?」
美濃は真っ赤になりながら答えた。
「初めて紬に抱かれてからです」
「俺のせいか・・・」
落ち込む紬に美濃は言った。
「気にしないでください。あんな力ない方がいいです」
「・・・そうだな」
「はい」
美濃は嬉しそうに笑いながら返事をした。
「あの・・・銀髪の人はどうなったんですか?」
「・・・俺が殺して燃やした」
自分の手をじっと見つめそう言うと美濃は少し悲しそうな顔をした。
「どうして悲しそうにしている?」
「紬が辛そうだから・・・」
(あいつと俺は似ていた)
俺も一歩間違えればああなっていたかもしれない。
何故なら紬も母親が人間だったからだ。
幼い頃両親が亡くなりずっと山を守ってきた。
1人きりでー・・・。
その孤独は計り知れないものだった。
この事はいずれ美濃に話すつもりでいる。
だが美濃はそんな事気にしないだろう。
美濃はそういう娘だ。
「美濃、俺が何者でもこれからも愛してくれるか?」
美濃はまた真っ赤になりながら紬の腕の中で頷いた。
小屋に着くと紬はゆっくり美濃を降ろした。
美濃は足の痛みに顔を歪めた。
2人共泥だらけで着物も汚れていた。
以前渡しそこねていたものを美濃に渡した。
それは巫女装束ではなく今、町で流行っている着物だった。
「この衣装は・・・」
美濃は目を輝かせながら呟いた。
「お前はもう普通の女の子だ、その巫女装束も必要ないだろう?」
「ありがとうございます」
素直に美濃は喜んでくれた。
そんな美濃が愛おしく感じられた。
気が付くと口づけをしてしまっていた。
「悪い」
真っ赤になりながら急いで離れようとすると、美濃から頬に口づけをされた。
「美濃?」
「着物のお礼です」
にっこり微笑まれ紬はうろたえてしまった。
「俺も着替えてくる。そこを動くなよ」
「はい」
「一応小屋にも結界を張りなおす」
そう言い残し紬は風呂場に行ってしまった。
どうやら着替える美濃に気を使っているらしかった。
美濃は巫女装束を脱ぎ捨て、新しい着物に袖を通しした。
「この着物・・・絹・・・」
きっと高価なものに違いない。
本当に貰ってよかったのだろうかと不安になった時、紬の声がした。
「着替えは終わったか?」
「はい、あのこの着物高価な物なんじゃ・・・」
「若い娘は着飾るものだろう?」
「よくわかりませんが本当にありがとうございます」
「改まって言うな。恥ずかしくなる」
「はい」
水が入った桶と手拭いを渡された。
「汚れているところはこれで拭いてくれ」
「すみません」
「謝るな。これからは俺がお前の世話を全てしてやる」
「・・・厠は1人で行きたいです」
「分かっている」
紬が心配性なのを知っているので念を押しておいた。
こうしてまた新しい生活が始まった。
毎日足の腱のところに神力をあててくれる紬。
おかげで斬られた腱は回復していった。
「先の事はもうわかりませんが紬が一緒なら何も怖くありません」
「ああ、今度こそ美濃を守ると誓う」
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