合コンに行ったら異世界の王に見初められました

えりー

文字の大きさ
14 / 35

お披露目の儀(前日)

しおりを挟む
”お披露目の儀”前日、美優は緊張していた。明日は大勢の人の前に出て愛想よく振舞わなければならない。
鏡の前で作り笑いの練習をしてみる。
(ぎこちない)
はぁー・・・と長いため息を美優はついた。
結城は王なので人前に出ることになれているが美優は違う。
人前に出るのが本当に苦手なのだ。
そんな美優を見て悠里が声をかけてくれた。
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。皆、祝福してくれますよ」
「・・・悠里さん・・・でも、ちゃんとできるか不安で・・・」
少し大きくなった結がのしっと美優の膝に乗ってきた。結は美優の手を舐めてくれた。
「ほら、そんなお顔をなさるから結も美優様のことを心配しているんですよ」
そう言われ、美優は心を切り替えることにした。
「明日、何とか頑張ってみます」
「はい。頑張ると言っても、美優様は黙って微笑んで結城王の隣に立っているだけで良いんですよ」
「え?そうなんですか?」
美優は自己紹介か何かしなくてはいけないのかと思っていた。
美優は悠里の言葉を聞いて安心した。
「でも、私が心配しているのは・・・王族や貴族の方々が美優様に何かしてこないかという事です」
「え?どういうことですか?」
「結城王が釘を刺していたからきっと何もない思いますが・・・陰口位は覚悟しておいた方がいいかもしれません」
美優はそれを聞いてまた不安になってきた。
「結城王に嫁ぎたかった王族や貴族の娘はたくさんいらっしゃいますから」
「でも、それは禁忌だと・・・」
「そうです。でも結城王はとても人気のある殿方です。禁忌だとわかっていても恋に落ちる姫君もたくさんいますから・・・」
やっぱり結城は立派な王なのだと美優は思った。
それほどの人気があることは知らなかっが。
(・・・どうしよう。きっとひどいこと言われるんだろうな・・・)
「美優様、これもお勤めと思って乗り切ってください。もし危害を加えるような者がいましたら私が全力で排除いたしますから」
そう言いながら護身用の短剣をスッと悠里は取り出した。
しかも笑いながら。
(実は悠里さんも怖い人なのかな・・・)
怖くて本人には聞けなかった。
「明日の朝早く、お迎えに上がりますね。お支度に時間がかかりますから」
「はい。宜しくお願いします」
悠里はいつもの温和な悠里に戻っていた。
(さっきのは見間違いか何かだったのかしら・・・?)
美優はそう思った。
悠里は結を連れて部屋を出て行ってしまった。
もうじき夜になり、結城が美優の元へやってくる時間だからだ。
美優はベッドに倒れこんだ。
(明日はうまくいきますように、陰口か・・・少し怖いな・・・でも大体言われることは分かっている)
根暗とか、冴えないとか、凡庸とかそのあたりだろう。
一番言われて堪えるのは”結城王に相応しくない”だ。
そんなこと言われなくても分かっているからだ。
「美優、待たせたか?」
そう言いながら結城は部屋に入ってきた。
「いいえ、大丈夫です」
少し元気のない美優を見て結城が訊ねた。
「どうかしたのか?」
「明日のことで・・・少し緊張しているんです」
美優の頭を撫でながら結城は美優を抱き寄せた。
「大丈夫、何かあったら必ず守ってやるから。お前はただ笑っていてくれたらそれでいい」
「はい」
「いいか?貴族や王族の姫が何を言っても動じるんじゃないぞ?甘く見られるからな」
(やっぱり何か言われることは確定しているのね・・・)
ふぅっと美優は息を短く吐いた。
「今日はもう休もう」
「え?今日はしないんですか?」
結城は目を見開いて美優を見た。
「したほうがいいのか?」
「いいえ、そういうわけでは!!」
美優は慌てて訂正した。
これではまるで抱いて欲しかったかのようではないか。
(だっていつもはしつこいくらいしてくるから・・・)
美憂はベッドに横になっている結城の横に寝転んだ。
そして向かい合い抱き合って眠りについた。





しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです

沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

処理中です...