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まゆと魔王の出会い
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まゆは小学校に通うまだ幼い少女だ。
栗色の髪に瞳。
何処にでもいるようなそんな少女。
いつも1人きりで過ごしていた。
友人がいないことはさほど気にならなかった。
気になるとすれば両親が自分に無関心だという事だ。
家族でどこかへ出かけることもなく家ではなるべく部屋から出なかった。
「・・・つまらない・・・」
これがまゆの口癖だった。
小学校帰りに何となく気になった古書店へまゆは入った。
中は埃ぽかった。
少しせき込んでいると店主らしき青年が姿を現した。
青年は少し古風な恰好をしていた。
そう、明治時代の服装だ。
黒髪に黒い綺麗な瞳。整った顔。
いわゆる美形というやつだ。
「何かお探しかな?」
「いえ、何となく入ってきてしまって・・・、すみません」
まゆは買う気がないのに入ったことを後悔した。
「いや、いいよ。私も退屈していたところだよ」
「・・・」
そう言われてもやはり申し訳なく感じてしまう。
「そうだ。本を一冊プレゼントしよう。ちょっと待っていて」
「え!?あの・・・」
呼び止める間もなく、青年はいそいそと書店の奥の方へ消えて行ってしまった。
「やぁ、ごめんね待たせて」
「大丈夫です」
青年はそう言いまゆに一冊の本を差し出してきた。
「はい、どうぞ」
「でも、本当に貰ってもいいんですか?」
「はい、私が持っていても仕方の無いものなので」
「?」
この時のまゆには彼が何を伝えたいのか分からなかった。
「あ、ありがとうございます」
まゆは本を素直に受け取ることにした。
本は意外と重く、辞書くらいの大きさだった。
まゆは本を持って家路についた。
「ただいま」
いつものように声をかけるが母からの返事は無い。
まゆはなるべく音を立てずに自室へと向かった。
まゆの部屋は質素なものだった。
本当に最小限必要な物しか与えてもらえないのだ。
クリスマスも誕生日もひな祭りも何もしない。
まゆは薄々自分は望まれて生まれてきたわけではないと知っていた。
ランドセルを片付けてから椅子に座り本を開いた。
本は古書店に合ったものにしては綺麗なものだった。
まゆはフリガナが書かれているのを見つけると小さく笑った。
指でなぞりながら声に出して読んでみた。
すると本は青白い炎に包まれ焼けてしまった。
悲鳴を上げることも忘れてまゆは呆然とその様子を眺めた。
「驚いたか?」
その声でまゆは我に返った。
振り返り声の主を確認した。
すると見目麗しい男が立っていた。
髪は黒色。瞳は赤。
それに人間離れした美しい顔立ち。
彼が部屋に現れてから部屋の空気が少し重くなった気がする。
「あなたは誰?」
「ふーんこの位じゃ驚かないのか?面白いなお前」
面白がられてしまった。
まゆはこう見えても充分驚いていた。
しかしそれを表に出す術を知らないで育った。
彼の存在が気になり、もう一度訊ねた。
「あなたは?」
「先にそっちが名乗るものだろう」
(確かにそうね)
まゆはそう思い、座っていた椅子から降りて軽くお辞儀をしながら自己紹介をした。
「私は松本まゆといいます」
「・・・俺は魔王のジオンだ」
暫く沈黙が流れた。
先に口を開いたのはまゆだった。
「中二病の方はお帰り下さい」
そういうと窓をカラカラと開け、指さした。
「違う。本当に俺は魔族の王だ!!」
冷ややかな視線でまゆはジオンを眺めた。
ジオンはこめかみに青筋を立て怒っている。
「じゃあ、証拠は?」
「この見事な黒髪と黒い瞳がその証拠だ」
(日本人なんだから当たり前じゃない)
はーっとまゆは溜息をつきもう一度窓を指した。
「お帰り下さい」
「何故だ!?」
「貴方の黒髪は確かに綺麗だけど・・・瞳の色は真っ赤よ」
ジオンは言葉を失った。
まゆは机の引き出しから鏡を取り出しジオンに手渡した。
ジオンは恐る恐る鏡を覗き込んだ。
鏡に映し出されたのは見事な赤い瞳だった。
「嘘だろう・・・」
ジオンはよろけながら呟いた。
ジオンの手から鏡が滑り落ちカツンっと音がした。
何がそんなにショックなのどろうか?
「綺麗な赤い瞳だと思うけど・・・」
まゆのつぶやきが聞こえたのか聞こえていないのかは分からないが男は項垂れて立ちつくしている。
「・・・黒くなくちゃいけないの?」
「当り前だ!!魔王は代々この色を受け継いできたのだから!!」
「・・・あんまり騒ぐと親が来るから静かにしてもらえると嬉しい」
無表情のまま取り乱しているジオンにまゆは言い放った。
その様子を見てジオンは少し冷静になった。
「ああ・・・早く願いを言えよ」
「願い?」
突然の言葉にまゆは困惑した。
「願いを叶えれば契約も無効になって俺はお前から解放される」
「そういうものなの?」
「契約さえなければ瞳の色も元に戻る」
ジオンはまゆに迫った。
「さぁ、お前の願いは何だ?」
(願い・・・)
まゆは小首をかしげた。
「・・・」
「・・・ごめんなさい、願いは特にないの」
「何だって!?金や恋や色々あるだろう!?」
まゆは腕組してもう一度考えてみるが望みが浮かんでこなかった。
「やっぱりありません」
「なんだと・・・それでは何の為に俺を召喚したんだ?」
そう詰め寄られても困る。
まゆはなんとなく本を読んだだけなのだ。
ジオンは途方に暮れている。
部屋の隅で体を丸め落ち込んでしまった。
栗色の髪に瞳。
何処にでもいるようなそんな少女。
いつも1人きりで過ごしていた。
友人がいないことはさほど気にならなかった。
気になるとすれば両親が自分に無関心だという事だ。
家族でどこかへ出かけることもなく家ではなるべく部屋から出なかった。
「・・・つまらない・・・」
これがまゆの口癖だった。
小学校帰りに何となく気になった古書店へまゆは入った。
中は埃ぽかった。
少しせき込んでいると店主らしき青年が姿を現した。
青年は少し古風な恰好をしていた。
そう、明治時代の服装だ。
黒髪に黒い綺麗な瞳。整った顔。
いわゆる美形というやつだ。
「何かお探しかな?」
「いえ、何となく入ってきてしまって・・・、すみません」
まゆは買う気がないのに入ったことを後悔した。
「いや、いいよ。私も退屈していたところだよ」
「・・・」
そう言われてもやはり申し訳なく感じてしまう。
「そうだ。本を一冊プレゼントしよう。ちょっと待っていて」
「え!?あの・・・」
呼び止める間もなく、青年はいそいそと書店の奥の方へ消えて行ってしまった。
「やぁ、ごめんね待たせて」
「大丈夫です」
青年はそう言いまゆに一冊の本を差し出してきた。
「はい、どうぞ」
「でも、本当に貰ってもいいんですか?」
「はい、私が持っていても仕方の無いものなので」
「?」
この時のまゆには彼が何を伝えたいのか分からなかった。
「あ、ありがとうございます」
まゆは本を素直に受け取ることにした。
本は意外と重く、辞書くらいの大きさだった。
まゆは本を持って家路についた。
「ただいま」
いつものように声をかけるが母からの返事は無い。
まゆはなるべく音を立てずに自室へと向かった。
まゆの部屋は質素なものだった。
本当に最小限必要な物しか与えてもらえないのだ。
クリスマスも誕生日もひな祭りも何もしない。
まゆは薄々自分は望まれて生まれてきたわけではないと知っていた。
ランドセルを片付けてから椅子に座り本を開いた。
本は古書店に合ったものにしては綺麗なものだった。
まゆはフリガナが書かれているのを見つけると小さく笑った。
指でなぞりながら声に出して読んでみた。
すると本は青白い炎に包まれ焼けてしまった。
悲鳴を上げることも忘れてまゆは呆然とその様子を眺めた。
「驚いたか?」
その声でまゆは我に返った。
振り返り声の主を確認した。
すると見目麗しい男が立っていた。
髪は黒色。瞳は赤。
それに人間離れした美しい顔立ち。
彼が部屋に現れてから部屋の空気が少し重くなった気がする。
「あなたは誰?」
「ふーんこの位じゃ驚かないのか?面白いなお前」
面白がられてしまった。
まゆはこう見えても充分驚いていた。
しかしそれを表に出す術を知らないで育った。
彼の存在が気になり、もう一度訊ねた。
「あなたは?」
「先にそっちが名乗るものだろう」
(確かにそうね)
まゆはそう思い、座っていた椅子から降りて軽くお辞儀をしながら自己紹介をした。
「私は松本まゆといいます」
「・・・俺は魔王のジオンだ」
暫く沈黙が流れた。
先に口を開いたのはまゆだった。
「中二病の方はお帰り下さい」
そういうと窓をカラカラと開け、指さした。
「違う。本当に俺は魔族の王だ!!」
冷ややかな視線でまゆはジオンを眺めた。
ジオンはこめかみに青筋を立て怒っている。
「じゃあ、証拠は?」
「この見事な黒髪と黒い瞳がその証拠だ」
(日本人なんだから当たり前じゃない)
はーっとまゆは溜息をつきもう一度窓を指した。
「お帰り下さい」
「何故だ!?」
「貴方の黒髪は確かに綺麗だけど・・・瞳の色は真っ赤よ」
ジオンは言葉を失った。
まゆは机の引き出しから鏡を取り出しジオンに手渡した。
ジオンは恐る恐る鏡を覗き込んだ。
鏡に映し出されたのは見事な赤い瞳だった。
「嘘だろう・・・」
ジオンはよろけながら呟いた。
ジオンの手から鏡が滑り落ちカツンっと音がした。
何がそんなにショックなのどろうか?
「綺麗な赤い瞳だと思うけど・・・」
まゆのつぶやきが聞こえたのか聞こえていないのかは分からないが男は項垂れて立ちつくしている。
「・・・黒くなくちゃいけないの?」
「当り前だ!!魔王は代々この色を受け継いできたのだから!!」
「・・・あんまり騒ぐと親が来るから静かにしてもらえると嬉しい」
無表情のまま取り乱しているジオンにまゆは言い放った。
その様子を見てジオンは少し冷静になった。
「ああ・・・早く願いを言えよ」
「願い?」
突然の言葉にまゆは困惑した。
「願いを叶えれば契約も無効になって俺はお前から解放される」
「そういうものなの?」
「契約さえなければ瞳の色も元に戻る」
ジオンはまゆに迫った。
「さぁ、お前の願いは何だ?」
(願い・・・)
まゆは小首をかしげた。
「・・・」
「・・・ごめんなさい、願いは特にないの」
「何だって!?金や恋や色々あるだろう!?」
まゆは腕組してもう一度考えてみるが望みが浮かんでこなかった。
「やっぱりありません」
「なんだと・・・それでは何の為に俺を召喚したんだ?」
そう詰め寄られても困る。
まゆはなんとなく本を読んだだけなのだ。
ジオンは途方に暮れている。
部屋の隅で体を丸め落ち込んでしまった。
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