いつの間にか魔王の花嫁にされてしまいました

えりー

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はぐれ魔族

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魔族には稀に”はぐれ魔族”と呼ばれる魔族がいる。
彼らの目的は魔王が統一した世界を乱すこと。
その為には手段を選ばない。
反魔王派を指す。
魔界のあちこちで村々を荒らし、金品を盗んだり、他の魔族から魔力を奪ったりしていた。
魔王のジオンはこの連中に頭を痛めていた。
まさか人間界にまで来ているとはジオンは思っていなかった。

まゆが帰ろうとランドセルに教科書を詰めていると担任の教師から呼び止められた。
「松本まゆ、保健の先生が呼んでいるから帰る前に保健室に行きなさい」
「はい」
(どこも怪我なんてしていないのに何の用だろう)
そう思いながらゆっくりした足取りで保健室まで向かった。
保健室のドアをノックし、そっと開けた。
まゆは保健室に今まで一度も来たことがなかった。
保健室独特の消毒液の匂いがする。
「やぁ、よく来たね。まゆちゃん」
その声は背後から聞こえた。
何の抑揚もないものだった。
とても歓迎されているとは思えなかった。
「先生?」
「僕は先生ではないよ。・・・本当はねリドって名前の魔族だよ」
耳元で囁かれぞくりとした。
この人は危険だと体全体が訴えている。
(怖い・・・全身が震えている・・・足が・・・)
後ろはリドがいるので逃げるようにまゆは震える足で保健室の中へ駈け込んだ。
「おや、わざわざ罠にはまってくれるんだ?」
「な、何が目的なの?」
ふっと口元を緩め、男は笑った。
「君の魔力を頂こうと思ってね。火を消す時に魔力を使ったのは君だろう?人間が持っていても仕方のないものだからね」
「私の魔力?」
(そういえば私には魔力があるって言っていたような・・・)
「そう、君から溢れ出ている魔力が欲しいんだよ。とても強力な魔力がね」
そう言うと男はまゆに手を伸ばした。
しかしバチンっと音を立て弾かれてしまった。
「・・・え・・・?」
まゆは何が起こったのかさっぱりわからなかった。
相手の男も呆然としている。
「・・・花嫁の印か・・・?」
まゆはドキッとした。
頬が赤くなっていくのが自分でもわかる。
(あのキスか!)
「へぇ・・・君ってもう夫がいるのか。その夫に興味があるな」
「・・・っ!」
(まゆは唇を噛みしめた)
自分の夫が魔王だというわけにはいかない。
しかも、今、彼の目は赤い。
それを知られたら大変なことになるかもしれない。
徐々に壁際にまゆは追い詰められていく。
男は面白そうにまゆを観察している。
ついに壁際に追い詰められてしまった。
逃げようにも男の腕の間に挟まれているので逃れることが出来ない。
(ジオン・・・)
彼を呼んだ次の瞬間保健室の窓ガラスは全て割れた。
そして、ジオンが室内に飛び込んできた。
「まゆ!無事か!?」
赤い瞳が怒りで揺れる。
ジオンは男を蹴り上げた。
「ぐ・・・はっ」
男は低く呻きその場に倒れ込んだ。
「今のうちにこっちへ来い!」
「うん」
(来てくれた・・・)
まゆは急いでジオンの元へ向かった。
2人は抱きしめ合い、ジオンはまゆの無事を確認すると安堵のため息をついた。
「まゆは1人で帰っていてくれ」
「え?」
「俺はこの男に用がある」
そう言うとまゆを宙に浮かせ自宅まで瞬間移動させた。
「魔王様の花嫁でしたか・・・それは無礼を働きました。僕はリドと申します」
少々演技がかった仕草で跪いた。
「お前には聞きたいことが山ほどある。何故人間界にはぐれ魔族がいる?」
「人間から生命エネルギーと魔力を奪う為です」
「俺は気が短いんだ・・・さぁ、他にもあるだろう?吐いてもらおうか?」
「お前の名はリドだったな」
夕日が差し込み部屋も赤く染まる。
(赤黒い目も見られてしまったしこの魔族は生かしておくわけにはいかないな)
「僕はどうせ消されるんだろう?」
「ああ、秘密を知られてしまったからな・・・」
「誰にも言わないといったら見逃してくれるの?」
ジオンは頭を横に振った。
「魔王様、僕一人消した所で何も変わらないよ」
ジオンは眉を顰めた。
「・・・ああそうだろうな。お前1人くらい殺したところでどうにもならないだろうな」
「僕の仲間はたくさんいる」
リドはは立ち上がりながら言った。
ジオンは冷ややかな目でリドを見下ろしている。
「俺にも味方がいる」
そう断言した。
「残念だったな、こちらにも味方はいる。ジン!観ているんだろう?」
呼びかけるとジンが姿を現した。
「もちろんいつでも見守っているよ」
「気色悪い言い方をするな・・・」
「ひっ、ジン・・・様」
「さてと・・・随分面白い話をしていたね」
ジンは温厚な見かけとは裏腹に拷問の悪魔という名で魔界でも有名だった。
ジオンはジンに言った。
「俺はこいつから情報が欲しい」
「うーん?この魔族を拷問すればいいのかい?」
「俺がやると殺してしまうからな」
はぐれ魔族の男は後ずさった。
「拷問かぁ、久々で手元が狂いそうだよ・・・すぐに殺してしまったらごめんね?」
全く悪びれていない軽い口調でとんでもないことを平気で言いだした。
リドは逃げようとしているが保健室から外に出られない。
「はははは、逃がすわけないじゃないか。結界を張らせてもらったよ」
「くそっ!!」
リドは短く吐き捨てた。
「俺たちから逃れられるはずないじゃないか」
「それじゃあ、始めようか。拷問」
ジンは楽しげだった。
男の悲鳴だけが部屋中に響き渡った。
ジオンはジンのこういう面を気に入っている。
拷問が始まり暫くするとリドは音を上げた。
「・・・言・・・う。言うからもうひと思いに殺してくれ」
「・・・つまらないなぁ、もっと君と遊びたかったのに」
笑顔のままジンがリドに語りかけた。
リドは既に血まみれで息も絶え絶えになっている。
それでも殺さない様に手加減して拷問をしていたのだ。
ジオンとジン、2人は顔を見合わせ微笑んだ。
ジオンが男の髪を掴み脅した。
「俺とジン、どちらに殺されたい?」
「・・・魔王様に・・・」
男は小さい声で呟くと色々な情報を話し出した。
情報を聞くと用無しになったリドの首を魔術で作った剣で切り落とした。
返り血でジオンの服が真っ赤に染まった。
(ああ、こんな姿見られたらまゆに嫌われてしまいそうだな)
「ジオン、魔界のはぐれ魔族の件は任せておいていいよ」
「悪いな。魔界の事はもう少し頼む」
「俺は人間界に来ている魔族たちの討伐にあたる」
ジンはひらひらと手を振りながら笑いながら魔界に戻っていった。

まゆはジンが帰ってくるのを家の中でじっと待っていた。
もう何日が過ぎただろうか・・・。
(睡眠も食事も落ち着いて出来ない。ジオン大丈夫なのかな?)
この日でジオンがいなくなってからもう1週間になる。
(ジオンの事・・・私、好きなんだ・・・)
この状況になってまゆは気が付いた。
まゆの胸は心配で張り裂けそうだった。
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