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優也の妹(後編)

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「お帰りなさいませフォン様」
そう言って悠里は出迎えてくれた。
着替えを手伝ってくれる彼女に美乃梨様について話してみた。
「そうですか、相変わらずでございますね」
悠里は嬉しそうだった。
(悠里からしてみれば元主になるのかしら)
「悠里さんはお会いになられましたか?」
「はい。旅から帰ってくっるなり最初に挨拶に来られました。美乃梨様は私に懐いておいででしたので・・・」
悠里は昔を懐かしむように言った。
そこにはフォンの知らないことがたくさんあるのだろうと思った。
(いいなぁ・・・)
フォンは羨ましくなった。
この世界では奴隷制度はない。みな平等に扱う。
(私の国もこうだったらよかったのに)
フォンはぼんやりそんな事を考えていた。
「フォン様?いかがなさいました?」
「いいえ、何でもありません」
「美乃梨様、少し変わった方でした。でもお優しそうでした」
フォンの何気ない一言を聞くと悠里がため息をついた。
「そうなんです。王族の自覚が全くなくて自由奔放というか・・・」
「・・・」
「確かにその通りだったです。優也様もそのことを心配してらっしゃいました」
「そうですか・・・」
どうやら悠里も心配しているらしい。
一国の姫君が供もつけず一人でふらりと旅をする・・・。どれほど危険な事だろう。
「やっぱり女性の一人旅は危ないですもんね」
「・・・いいえ、そこは心配いりません」
「?」
「私が護身術や剣の使い方など伝授いたしておりますので、美乃梨様はお強いです。むしろ姫君があんなに強いことが心配で・・・」
フォンには悠里の言っていることがわからなかった。

夜になり公務を終えた優也がくる時間になった。
ところが部屋に来たのは美乃梨様だった。
「美乃梨様!!?」
フォンは寝間着だった。
「すみません、こんな格好で」
「いいえ、こちらこそこんな時間にごめんなさい」
「だ、大丈夫です」
(驚いた・・・!!こんな時間に来るなんて思わなかったから)
「少し庭をお散歩しません?」
「はい」
そう言われフォンは美乃梨に続いて歩き出した。
「昼間は驚かせてしまってごめんなさいね。あまりにもお可愛らしくてつい飛びついてしまいましたの・・・」
「いえ、こちらこそ驚いて逃げてしまって申し訳ありません」
「・・・フォン様は元奴隷の人獣だとお聞きしました、それで人間に怯えていると・・・」
「!!」
美乃梨はフォンの様子を見た。
「そのご様子だと本当のようですわね・・・ねぇ、フォン様?」
「はい」
「まだ人間が怖いですか?」
そう問われフォンは困惑した。
それは怖い人間と怖くない人間がいるかからだ。
「・・・」
「フォン様は、お兄様の為に何か努力なさっていますか?守られてばかりではこれから先やっていけないですわ」
そう冷たい声音で言われた。
まるで突き放されたような気がした。
「・・・はい」
「ああ、誤解されないでください。私はただフォン様が心配なだけです。ここの国の国民は皆良い人たちです。しかし、王族や貴族たちは最悪ですの。私達のお母さまも随分酷い目にあってきましたわ。だから、今のままのフォン様ではきっと耐えることが出来ないと思いましてご忠告に来ましたの」
「ご忠告ありがとうございます」
「フォン様、あなた本当に純粋な方なのですね」
「?」
そう言って美乃梨はフォンを抱きしめた。
「ここは不自由なことが多いけれど頑張ってお兄様をお支えして差し上げてください」
「はい」
フォンは美乃梨に抱きついた。
「見つけたぞ美乃梨!!」
「あら、お兄様。めんどくさいですわね」
美乃梨はそう言うと木に登り木をつたい城の外へと出て行った。
「フォン、何かされなかったか!?大丈夫か!?」
「はい、大丈夫です」
「ここは冷える、部屋へ戻ろう」
優也はフォンを横抱きにし、部屋へ戻った。
部屋へ戻るなり上着を羽織らされた。
「外は寒くなかったか?」
「はい」
「美乃梨と何の話をした?」
「・・・」
フォンは言うかどうか迷った。
だが、結局言わなかった。
言うべきじゃないと思たからだ。
「秘密です」
「・・・面白くないな」
優也はフォンを押し倒した。
そうしてキスをした。舌と舌を絡め合い深いキスをしてくる吸っては離れ、甘噛みされる。
口の端からどちらのものともわからない唾液がこぼれ出す。
優也の唇は、首筋へと移動し、強く吸った。
「んっ!」
優也はフォンの首筋に無数の跡を残していく。
着物をはだけさせ、胸にも後をつけていく。
胸を揉みほぐし、もう片方の胸に吸いついた。
フォンは優也の首に腕を回し快楽に耐えている。
優也はその姿を見るのが好きだった。
「っ・・・はぁ、んん、優也様・・・」
「フォン愛してる」
そう言いながらフォンから着物を全て剥ぎ取った。
徐々に下へと唇の位置をずらしていく。
フォンは下腹部の疼きで足をもじもじさせ始めた。
それを見て、優也はフォンの足を開きその間に体を埋めた。
ひたすら愛撫が続く。
太腿にも舌を這わせ、なかなか体の一番敏感な部分に触れてもらえない。
「優・・・也様。意地悪しないで、ください・・・もう私」
(達したい)
そんな事恥ずかしくて言えないが・・・フォンは火照った体を持て余していた。
「あっ、う・・・んっ!」
フォンの言葉を聞き、ようやく優也の指は一番敏感なところを触り始めた。
そうして甘い蜜が滴るのを見ると自身のものをゆっくりといれてきた。
ゆるりと初めの方は腰を動かし徐々に強く激しくなる。
肌と肌のぶつかる音と卑猥な水音が部屋に響く。
みっちり優也のものを飲み込んだ肉の壁が徐々にざわめきだす。
そうして二人は達した。
白濁したものがフォンの蜜壺に注がれ始める。
その衝撃にフォンは背をそらせる。
こうして二人の行為は終わった。

「優也様、私、美乃梨様のように強くなりますね」
「何で、美乃梨みたいになりたいんだ!?」
優也はその言葉を聞いてぎょっとした。
「え?いけませんか?」
「ああ、やめせくれ。あんなのが二人もいたら・・・かなわないからな」
「?」
フォンは言われた意味を理解できず小首をかしげた。
「でも、私は優也様を支えられるように強くなりたいです」
「・・・フォン・・・お前変わったな」
「え?そうですか?」
フォンは不思議そうな顔をした。
「ああ、強くなった」
優也は本心からそう思った。

次の日、また旅に出るという美乃梨を見送りに行った。
「フォン様、頑張ってくださいね」
「はい、美乃梨様」
「では、お兄様。行ってまいります」
「ああ、気を付けて行けよ。くれぐれも人殺しだけはするな」
「わかってますわ」
そう言うと馬にひらりとまたがり颯爽と駆けていった。
「美乃梨様が・・・人殺し何てするはずないじゃないですか」
フォンは冗談かと思った。
しかし、どうやら本当らしい。
「あいつは暗殺術も心得ている」
それを聞いたフォンは青ざめた。
「でも一国の姫が何故!?」
「あいつは悠里に懐いていてな、彼女から習ったんだ」
「・・・え?」
(悠里さんって・・・一体何者なの!!?)
その疑問は怖くて誰にも聞けなかった。















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