青い葉桜の下で

えりー

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2人きりの夜1

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自分の名を呼ぶ声がする・・・。
「・・・理子!真理子!」
そう思い重たい瞼を開けるとリアンが至近距離にいた。
「リ・・・アン?何?どうしたんですか」
はー・・・っとリアンは溜息をついた。
「キセが何度も起こしたけど全然起きないと慌てて俺のところに報告にきたんだ」
「え?そうなんですか?」
横を見るとキセが安心しきった表情を浮かべていた。
「真理子様、まるで死んだように眠っていたのですよ?」
彼女は今にも泣きそうだった。
「・・・心配かけてごめんなさい・・・」
(疲れていたのかな)
「キセ、真理子の夕食はまだだったな」
「はい」
「俺もこの部屋で共に食事をする」
(えぇっ!?)
「何だ?不満か?」
「仕事はー・・・?」
真理子は控えめに聞いた。
「今は仕事より真理子の方が大事だ。仕事は大体終わっている」
「そ、そうなんですか」
リアンはむっとした表情になった。
「そろそろ、その敬語やめてくれないか?」
「だってリアンは王様じゃないですか!?」
そう言うとさらに面白くないといった表情になった。
「俺は、”木”の時みたいに屈託なく話かけられる方がいい」
「でも・・・」
「それでは王として命じる。敬語を使うな」
命令されてしまい仕方なく真理子は敬語を外すことにした。
「リアンはいつもどこで食事をとっているの?」
「俺専用の食堂がある」
(じゃあ、そこで食べたらいいじゃない)
「あそこで食事するより真理子と食べる方が美味しく食べられる」
「~っ」
真理子はここまで素直に感情を出すリアンを好ましくは思う。
でもどう反応していいのかわからなかった。
食事は日本食、和食だった。
「いつも和食なの?」
「ああ、色々食べるが今日は真理子が食べやすいように消化にいいものにしてみた」
どうやら今日の夕飯のメニューはリアンが決めたらしい。
リアンの優しさが胸に染みた。
「食欲はあるか?さっきから食が進んでないようだが」
「・・・あまりないかな」
今日は色々あって疲れてしまいお腹があまり空いていない。
「でも、体力がなくなるからきちんと食えよ」
「うん・・・」
せっかくの心遣いだ。
食べないと申し訳ない。
真理子はそう思い食事を少しずつとった。
食事が終わると後片付けにキセが部屋に入って来た。
手早く食器を持つと部屋からいなくなってしまった。
また2人きりになり気まずい空気が流れる。
共通の話題を探すが見つからない。
そんな時、キセが戻って来た。
「リアン王様。真理子様。入浴の準備が出来ました」
「では行くか」
「えっ?」
ひょいと担がれてしまい真理子は一瞬呆然とした。
リアンは浴室までこのまま連れて行く気らしい。
「ちょ、ちょっとリアン!私、自分で歩けるわ」
周囲の視線が痛い。
皆2人を遠巻きに見ている。
すると声が聞こえた。
「あれが俺たちの敵の人間か・・・」
「あいつらのせいで俺は家族を失った」
「私もよ」
敵意に満ちた言葉ばかりだった。
「どうして王はあんな人間の娘を気に掛けるんだ!?」
(それは、私が一番聞きたい)
どうしてリアンは人間を恨んでいないのだろう。
人間と居るとリアンまで悪く言われてしまう。
(あの悪口、リアンはどう受け止めているのだろうか・・・)
「リアン、降ろして。リアンの評判が悪くなる」
「評判・・・か。そんなもの元より悪いさ」
そんな会話をしていると浴場へ着いた。
リアンはゆっくり床に真理子を降ろした。
「真理子から入れ」
「え?」
「何だ?一緒に入りたいのか?」
真理子は真っ赤になり否定した。
「違う!!」
「俺はここで待っているからゆっくり入って来い」
浴場の戸を開けるとキセが待っていた。
キセが何から何まで世話をしてくれる。
裸を見られるのは恥ずかしかったが真理子はキセにすべて任せた。
それが彼女の仕事だと思ったからだ。
体まで拭いてもらい、バスローブを着せられた。
下着も新しいものが用意されていた。
汚れた衣服はキセが籠に入れ持って行ってしまった。
浴場を出ると椅子に座ったままのリアンと目が合った。
「体はきつくないか?」
「うん。大丈夫」
「次は俺が入ってくるからこの椅子に座っておけ、勝手に動くなよ?」
「わかてる」
そう答えるとリアンは浴場に入って行った。
脱衣所の椅子に座り、リアンを待つことになった。
体はきつくはないが心が痛かった。
城には人間に敵意を持つ者があんなにいるのかと思うと苦しくなった。
暫くすると浴場からリアンが同じバスローブ姿で出てきた。
そしてまた担ぎ上げられ奇異な視線を受けながら王の部屋まで戻った。
その間ずっと人間への悪口が聞こえてきた。
でも真理子にはどうすることもできなかった。
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