夢喰い

えりー

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淳の悪夢

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淳が眠りに落ちた後、由愛は自分も眠りについた。
そうすることによって相手の夢に入ることが出来るようになる。
淳の夢の中でみたのは幼い淳が母親らしき人に暴力を振るわれている場面だった。
暴力だけならまだしも暴言も吐かれていた。
聞こえてくるのは数々の暴言と頬をぶつ音。
由愛は思わず耳をふさぎたくなった。
だが、それでは助けになれない。
母親らしい人物から淳を守らなければと思い2人の間に割って入った由愛だった。
彼女を睨み彼女を丸く空で囲い飴玉に変えた。
飴玉は黒く濁っていた。
悪夢は黒い飴玉。
良い夢は黄色。
普通の夢は透明。
この夢は悪夢なので真っ黒な飴玉になった。
それを躊躇わず、由愛は口に入れた。
悪夢でも栄養になるからだ。
だが、味は悪いものだった。
(苦い・・・)
その様子を呆然と淳は見ていた。
思わず口から出したくなったが幼い淳が見ているのでそれもできなかった。
「・・・もう大丈夫だよ。これからは私が護ってあげるからね」
「うん」
幼い淳は笑顔でそう言い消えてしまった。
(目を覚ましたのかな?熟睡しているのかな?)
そう思い夢の世界から出た。
するとすーすーっと寝息を立てて眠っている淳が目に入った。
(さっきの夢は現実にあったことだろうか・・・)
もしそうなら由愛はあの女性に酷い目に合ってもらいたいと思ってしまった。
「・・・あまり人間に情をかけるのは良くないわよね・・・」
そう思いつつもあの女性に対して憎しみの感情を抱いている自分がいた。
膝枕で気持ちよさそうに眠る淳にしか真実は分からなかった・・・。
改めて聞けるような話題ではないし、淳はもしかして話したくないのかもしれない。
もやもやする感情を抱きながら気持ちよさそうに眠る淳を見つめた。
それから3時間膝枕をする羽目になるとは思わなかった由愛だった。

「今日はありがとう。もう遅いから送っていく」
「いえ、ここから近いので・・・」
「でも、この辺は変質者おおいばしょだ多い場所だ。それに何かお礼がしたい」
何を言っても引き下がらない淳に根負けして結局由愛は送ってもらうことになった。
「私の家族には正体がバレたの秘密にしておいてほしいのですが」
「どうして?」
徐々に顔を赤らめながら由愛は俯いた。
夢魔の掟には異性に正体を知られた場合は伴侶となってもらうというしきたりがあった。
当然人間の淳にはわからないことだった。
しかし、実際正体を見抜かれた相手と結婚させられてきたのだ。
自分も例外ではないだろうと由愛は思った。
家は淳のマンションから1時間近く歩いた場所にある。
「・・・どうして近くだなんて嘘ついた?」
「色々事情があるんです」
「わかった。今日の事は秘密にしておく」
「ありがとうございます」
(この人、態度は良くないけど良い人だわ)
「これからも悪夢から護ってくれるんだろう?」
そういい淳は意地の悪い表情を見せた。
「覚えていたの!?」
「もちろん」
(前言撤回。この人は良い人ではないわ)
由愛は家の近くで車を止めて降ろしてもらった。
「また明日、今日の公園で待ってるから」
「・・・わかりました」
こう答えるしかないだろう。
由愛はそう思った。
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