自殺志願少女と獣の王

えりー

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話し合い

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その晩、リハは城外へティを呼び出した。
「何だよこんな夜中に」
「ティ、お前自分が何をしたかくらい覚えているだろう?」
そう言いティを睨んだ。
「ああ、唯奈の事か」
あくびをしながらそう言った弟に苛立ちを感じた。
「よくも唯奈を傷つけてくれたな」
「傷つけてなんてないさ。唯奈も気持ち良さそうだったし」
その言葉を聞きリハはティに飛びかかった。
ティは軽々とそれを避けた。
「何故今回は殺さない?」
「俺は唯奈に惚れてしまったらしい」
「お前がか?」
リハは驚いた。
残虐なティが人を好きになることは信じがたかった。
「俺もこんな気持ちになった事ないから驚いているんだ」
「・・・本気なんだな?」
「ああ」
例え本気だとしてもリハは唯奈をティにくれてやる気はない。
「・・・」
「・・・」
2人の間に沈黙が落ちる。
「唯奈は兄貴が好きだそうだ」
「・・・」
「抱いているときはっきりそう言われた。だが俺も唯奈が欲しい」
そう言うとティはリハに襲い掛かった。
リハはそれをかわした。
2人の力はほぼ互角。
戦ったとしても勝負にならない。
「これからも隙があれば唯奈を奪いに行こうと思う」
「これからは隙は作らない!」
2人は戦っても勝負がつかないことを知っている。
だから仕方なく話し合いで解決することになった。
しかし、お互いの主張を一切曲げないので話し合いは進まない。
「兄貴とこうしていても埒が明かない」
「ああ、そうだな」
「唯奈がそんなに大事ならさっさと公にしてしまえばいい」
「・・・そう簡単な事じゃないことくらいお前だってわかるだろう」
「はははは、そうだな。だが、このままずっといられないことくらいわかるだろう?」
「・・・」
その言葉を聞きリハは黙った。
「話はそれだけか?兄貴。それなら俺はもう城へ戻るぞ」
「今回はこちらにも非があったがもう由奈には手を出すな」
「はっ、せいぜい隙を作らないことだな」
それは隙があればまた連れ去ると言っているようなものだった。
リハはティが去った後、1人呟いた。
「唯奈の事を公に・・・か」
そうしてすぐに城へ戻り、唯奈の存在を確かめた。
唯奈は深く眠っていた。
そんな彼女を見ていると一気に眠気に襲われた。
唯奈を抱きしめ、リハは眠りについた。

翌日、いつもより煌びやかなドレスが用意されていた。
「リハ様・・・あのドレスは?」
「もちろんお前が着るものだ」
「昨日私のいない隙にティに攫われただろう?」
「はい」
「ずっと唯奈を傍に置いておくために妃にすると公にしようと思う」
「ええ!?」
でも確か反人間派も多くいるって言っていたはずだ。
王の妃が人間だとまずいことになるのではと唯奈もそれくらいわかる。
「なんだ、またティに抱かれたいのか?」
唯奈は思い切り頭を横に振った。
「でも・・・私なんかが王の妃なんて周りに知れたら・・・」
「気付いている者は気付いている」
そう言い狼の姿のままベロっと唯奈の頬を舐めた。
唯奈はそれでも勇気が出なかった。
俯きシーツを掴みなかなかベッドから出なかった。
痺れを切らしたリハは無理やりベッドから引きずり出し煌びやかなドレスを唯奈に着せた。
鏡に映っているのはまるで別人のようだった。
「明日はそれを着て公の場に一緒に出てもらう」
そう言い今度は丁寧にドレスを脱がせ始めた。
全く唯奈の意見は聞いてもらえないらしいかった。
唯奈は少し悲しい気持ちになった。

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