自殺志願少女と獣の王

えりー

文字の大きさ
14 / 38

公の場

しおりを挟む
王の間に王族、貴族たちが集められた。
皆一様に驚いた。
それは人間である唯奈が煌びやかな衣装に身を包み、玉座の横に立っていたからだ。
「人間だ」
「人間がいるぞ」
「美味そうだな」
「いい匂いがするな」
「でも何故王の横に?」
「王のペットか?」
皆口々に色々な事を言っている。
「皆に紹介しよう。これは私の妃の唯奈だ」
王の間はざわついた。
「唯奈、挨拶を」
唯奈はそう言われ一歩前へ出た。
「唯奈と申します。お見知りおきください」
そう言いながら軽く会釈した。
「人間が妃!?」
「今までそんな事無かったはずだ」
「何かの間違えじゃないのか!?」
1人の王族の男が前へ出てきた。
「王よ、人間は食すものでございます。添い遂げる者ではありません」
リハはその言葉を聞き剣を抜いてその男へ向けた。
「唯奈は確かに人間だ。しかし私の妃でもある。貴様、唯奈を愚弄する気か!?」
その瞳は妖しく煌いていた。
一歩間違えば男の首は飛ぶだろう。
そう思い唯奈は男を庇うように立った。
「唯奈、そこをどけ。何のつもりだ」
「剣をお納めください」
唯奈の背筋には冷たい汗が流れた。
しかしここで引くわけにはいかない。
唯奈は王族や、貴族たちのほうに向きなおり言った。
「私は、確かに人間です。しかし王を愛しています。」
「・・・」
会場は静まり返った。
「皆様が人間を食すことも知っています。ですが私は王の傍に居たいのです」
リハは剣を納めた。
「唯奈、こちらへ」
「はい」
そう言われ、唯奈はリハの手を取った。
リハは狼の姿なので今一体どんな表情をしているのか分からない。
しかし、剣を納めたという事はそんなに怖い表情ではないだろう。
唯奈は玉座の横に用意された椅子に座ろうとしたが、リハは自分の膝の上に唯奈を座らせた。
「リハ様・・・?」
「震えているな。怖かったのだろう?」
「・・・」
優しい声音だった。
きっと今の表情は優しい顔をしているのだろう。
唯奈はそう思った。
唯奈は周りに獣たちがたくさんいる中だがリハに抱きついた。
すると王族、貴族たちから罵りの声が上がった。
「人間を王家にいれるおつもりですか!?」
「人間の血が入るなんておぞましい」
「黙れ!!」
「!!」
一同は黙った。
「これはもう決定事項だ。私も唯奈を愛している」
「はははは、やっぱりこうなったな。兄貴」
そこに現れたのはティだった。
ティは笑いながら玉座に近づいてきた。
ティは王族、貴族の方を見据えて言った。
「俺も唯奈の事を愛している。もし彼女に手出しするようなら殺す」
ティの目は本気だった。
皆、ティの残虐性を知っている。
きっと言いたいことはたくさんあっただろうがそれから誰も何も言わなくなった。
「集会はここまでだ。皆自分の場所へ戻れ」
そう言うと王の間から慌てて皆去っていった。
「・・・ティ、礼を言う」
「唯奈の為だ。兄貴に礼を言われる筋合いはない」
「ティ様、ありがとうございました」
ティは唯奈に手を振り去って行った。
唯奈が思っているほどティは本当は悪い人ではないのかもしれない。
唯奈はティに一度抱かれたが手荒な真似はされなかったことを思いだした。
「唯奈、騙されるな。ティはああやって油断させてまた同じことをするつもりだぞ」
「!!」
「それは嫌だろう?」
唯奈は凄い勢いで頷いた。
これで唯奈は公の場に出られるようになった。
しかし、王族たちや貴族たちは納得していない様子だった。
本当にこれで大丈夫なのか不安になった。
だが、これ以上手の打ちようがない。
気がつけばいつの間にかリハは人型になっていた。
「よく頑張ったな」
そう言い唯奈にキスをした。
軽く触れあうキスから深いキスへと変わっていく。
「待って、ここは王の間よ」
「そうだが?何か問題があるのか?」
「もし人に見られたらどうするの!」
「見られても困らないだろう。もう妃としての紹介も終わった」
「でも・・・」
やはり落ち着かない。
「できれば・・・部屋で」
「何だ。キスだけでは足りないのか?」
「違います!!」
慌てて否定した。
すると愉快そうにリハは笑った。
リハはたまに意地悪を言う。
そういう所はティとよく似ていると唯奈は思った。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

二十年以上無視してきた夫が、今さら文通を申し込んできました

小豆缶
恋愛
「お願いです。文通から始めてもらえませんか?」 二十年以上会話もなかった夫――この国の王が、ある日突然そう言ってきた。 第一王妃マリアは、公爵家出身の正妃。だが夫はかつて、寵愛する第三王妃の話のみを信じ、彼女を殴ったことがある。その事件が原因で、マリアは男性恐怖症が悪化して、夫と二人きりでは会話すらできなくなっていた。 それから二十年。 第三王妃はとある事故で亡くなり、夫は反省したらしい。だからといって――今さら夫婦関係をやり直したいと言われても遅すぎる。 なのに王は諦めない。毎日の手紙。花を一輪。夜食の差し入れ。 不器用すぎる求愛に振り回されるうち、マリアの中で止まっていた感情が少しずつ動き始める。 これは、冷えきった政略夫婦が「文通」からやり直す恋の話。 ※本作は「存在されていないことにされていた管理ギフトの少女王宮で真の家族に出会う」のスピンオフですが、単体で読めます。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

お久しぶりです旦那様。そろそろ離婚ですか?

奏千歌
恋愛
[イヌネコ] 「奥様、旦那様がお見えです」 「はい?」 ベッドの上でゴロゴロしながら猫と戯れていると、侍女が部屋を訪れて告げたことだった。

グリモワールの塔の公爵様【18歳Ver】

屋月 トム伽
恋愛
18歳になり、結婚が近いと思われたプリムローズは、久しぶりに王都の邸にいる婚約者に会いに行っていた。 だけど、義姉クレアと婚約者ジャンのベッドインを目撃してしまい、婚約破棄されてしまったプリムローズ。 プレスコット伯爵家から追い出すための名目で、金持ちの子爵様に売られるも同然の後妻に入ることになったプリムローズ。 そんなある日、夜会で出会ったクライド・レイヴンクロフト次期公爵様から結婚をもうしこまれる。 しかし、クライドにはすでに親の決めた婚約者がおり、第2夫人でいいなら……と、言われる。 後妻に入るよりは、第2夫人のほうがマシかもとか思っていると、約束だ、と頬にキスをされた。 「必ず迎え入れる」と約束をしたのだ。 でも、クライドとのデートの日にプリムローズは来なかった。 約束をすっぽかされたと思ったクライドは、その日から一向にプリムローズと会うことはなかった。 時折出す手紙のやり取り。プリムローズがどうしたいのかわからないクライドは困惑していた。 そして、プレスコット家での現状を知り、クライドはプリムローズをプレスコット伯爵邸から連れ出し、グリモワールの塔に連れて行き……。 最初は、形だけの結婚のつもりかと思っていたのに、公爵様はひどく甘く、独占欲の固まりだった。 ※以前投稿してました作品を【18歳Ver】に書き直したものです。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

処理中です...