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加護
稲荷神の条件
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稲荷神の元に送った書状の返事を持ってきたのは、狐面の痩せた男であった。
「稲荷神様のご意向は、西寧王に加護を約束してもええっちゅうことです」
男はそう言った。
西寧の送った書状は、黒い虎精であっても、白虎王の子孫。その行動に正義がある限りは、西寧王を味方し、加護を与えてもらえるかと伺いを立てる内容だった。
四神獣、烏天狗、稲荷神。多方面に応援を要請し、その加護を得られるように願いだてしている。
忌み嫌われた黒虎の精であるということは、虎精の国においては致命的なことだと理解しているからこそ、様々な後ろ盾を得ることで、黄虎の国が大胆な行動に出た時に、その行動に敵対しても、正義がこちらにあるのだという根拠が欲しい。
「ただし条件があります」
「なんだ? 言ってみろ」
「条件は、二つに一つ。一つ目は、西寧王の妹君、福寿様を稲荷神様の元へ差し出すこと。もう一つは、逆に、稲荷神様の元から、妖狐を一匹、側室として迎え入れるか。二つに一つ。さあ、選んでくれなはれ」
つまりは、西寧が稲荷神の意向に染まぬことをしでかした時の人質をよこすか、逆に、西寧の行動を監視するお目付け役の派遣を許すか。それを選べというのだろう。
ならば、選ぶのは簡単。幼い福寿を犠牲にして見知らぬ土地にやるくらいならば、目付け役を受け入れて、西寧が気に入らぬならば、西寧を妖狐に喰らってもらえばいいのだ。
壮羽がいれば、もう少しよく考えろと説教されそうだが、壮羽は烏天狗の里に使いに出している。……まあ、多少叱られても、納得はしてくれるだろう。福寿を犠牲にしたくなかった西寧の気持ちが分からない壮羽ではない。
「では、妖狐を側室としてもらい受けよう。手厚くもてなす」
西寧は、そう返答した。
なんの問題もないはず……。ないはずと思ったのだが……。
「側室? 側室とおっしゃいましたか!!」
目の前の玉蓮が、とんでもなく怒っている。
形ばかりの夫婦であっても、正妃である玉蓮には、話しておいた方が良いと思って報告に来たのだが、思ってもみなかった剣幕に、西寧はたじろぐ。
「うん。そうだ。その、稲荷神の加護を得るには、条件として必要だったから……」
福寿を人質にすることを提示されたことは伏せておく。言えばきっと、どうしてそうしなかったのかとなじられる。
「そう言う場合は、加護自体をお諦め下さいませ!!」
ぴしゃりと玉蓮が言い切る。
ど、どうしてそれを玉蓮が決めるのか?
「で?」
「で? とは?」
『で』という言葉が、これほど怖いと思ったことはない。
「どのような方かとお伺いしているのです!」
「えっと、齢百年を越える白狐で、妖力は高く、のんびりとした人柄……舞が上手いらしい……」
使いの狐面が言っていたことを、そのまま西寧は玉蓮に伝える。
「齢百年! フンッ! おばさんではないですか!」
玉蓮が勝ち誇る。
「おばさんって、そんな……稲荷神様に直接お仕えする妖狐だぞ? そんな失礼な」
「いいですか? まず、奥の間にその方の部屋は作りません! 入れたくありません! 西寧様が、適当に寝所を、王宮の外にお造り下さい! そして、結婚当初の通いはなさらないで下さい」
玉蓮の言葉に、西寧はコクコクとうなずく。要は、この話が気に入らないから、その妖狐も見る前から気に入らない。視界に入れたくないということか。
「そもそも、形だけの夫婦なのに、側室を入れることにどうしてそんなに怒るのだ?」
西寧の素朴な疑問。だが、それがまた、玉蓮の逆鱗に触れたようだった。
「プ・ラ・イ・ドの問題です! そんな事も分かって下さらない西寧様なんて大っ嫌いです!」
怒り狂う玉蓮を、西寧はどうしてよいのか、さっぱり分からなかった。
「稲荷神様のご意向は、西寧王に加護を約束してもええっちゅうことです」
男はそう言った。
西寧の送った書状は、黒い虎精であっても、白虎王の子孫。その行動に正義がある限りは、西寧王を味方し、加護を与えてもらえるかと伺いを立てる内容だった。
四神獣、烏天狗、稲荷神。多方面に応援を要請し、その加護を得られるように願いだてしている。
忌み嫌われた黒虎の精であるということは、虎精の国においては致命的なことだと理解しているからこそ、様々な後ろ盾を得ることで、黄虎の国が大胆な行動に出た時に、その行動に敵対しても、正義がこちらにあるのだという根拠が欲しい。
「ただし条件があります」
「なんだ? 言ってみろ」
「条件は、二つに一つ。一つ目は、西寧王の妹君、福寿様を稲荷神様の元へ差し出すこと。もう一つは、逆に、稲荷神様の元から、妖狐を一匹、側室として迎え入れるか。二つに一つ。さあ、選んでくれなはれ」
つまりは、西寧が稲荷神の意向に染まぬことをしでかした時の人質をよこすか、逆に、西寧の行動を監視するお目付け役の派遣を許すか。それを選べというのだろう。
ならば、選ぶのは簡単。幼い福寿を犠牲にして見知らぬ土地にやるくらいならば、目付け役を受け入れて、西寧が気に入らぬならば、西寧を妖狐に喰らってもらえばいいのだ。
壮羽がいれば、もう少しよく考えろと説教されそうだが、壮羽は烏天狗の里に使いに出している。……まあ、多少叱られても、納得はしてくれるだろう。福寿を犠牲にしたくなかった西寧の気持ちが分からない壮羽ではない。
「では、妖狐を側室としてもらい受けよう。手厚くもてなす」
西寧は、そう返答した。
なんの問題もないはず……。ないはずと思ったのだが……。
「側室? 側室とおっしゃいましたか!!」
目の前の玉蓮が、とんでもなく怒っている。
形ばかりの夫婦であっても、正妃である玉蓮には、話しておいた方が良いと思って報告に来たのだが、思ってもみなかった剣幕に、西寧はたじろぐ。
「うん。そうだ。その、稲荷神の加護を得るには、条件として必要だったから……」
福寿を人質にすることを提示されたことは伏せておく。言えばきっと、どうしてそうしなかったのかとなじられる。
「そう言う場合は、加護自体をお諦め下さいませ!!」
ぴしゃりと玉蓮が言い切る。
ど、どうしてそれを玉蓮が決めるのか?
「で?」
「で? とは?」
『で』という言葉が、これほど怖いと思ったことはない。
「どのような方かとお伺いしているのです!」
「えっと、齢百年を越える白狐で、妖力は高く、のんびりとした人柄……舞が上手いらしい……」
使いの狐面が言っていたことを、そのまま西寧は玉蓮に伝える。
「齢百年! フンッ! おばさんではないですか!」
玉蓮が勝ち誇る。
「おばさんって、そんな……稲荷神様に直接お仕えする妖狐だぞ? そんな失礼な」
「いいですか? まず、奥の間にその方の部屋は作りません! 入れたくありません! 西寧様が、適当に寝所を、王宮の外にお造り下さい! そして、結婚当初の通いはなさらないで下さい」
玉蓮の言葉に、西寧はコクコクとうなずく。要は、この話が気に入らないから、その妖狐も見る前から気に入らない。視界に入れたくないということか。
「そもそも、形だけの夫婦なのに、側室を入れることにどうしてそんなに怒るのだ?」
西寧の素朴な疑問。だが、それがまた、玉蓮の逆鱗に触れたようだった。
「プ・ラ・イ・ドの問題です! そんな事も分かって下さらない西寧様なんて大っ嫌いです!」
怒り狂う玉蓮を、西寧はどうしてよいのか、さっぱり分からなかった。
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