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ととのう(サウナとマッスル)
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本屋の話をしているのに、何を血迷ったか! そう叱られそうだが、今回はサウナの話。
俺は、日ごろのストレスを解消し、身も心も整えるつもりでサウナに向かった。
そう。
これ以上、あのマッスル脳筋思考に流されないために、自分を取り戻すのだ。
そのためには、並みのサウナでは足りない!
だから、ネットで調べて『世界大会級!!』とキャッチコピーがついているサウナへと足を向けたのだ。
世界大会? そういう疑問符は、捨てきれない。
サウナに世界大会も何もないだろうと思うのが普通だ。
サウナの世界大会。
サウナルームが広いとか? 使っている素材が豪華でファビュラスな感じ?
えっと……他に世界大会と言われそうな要素は?
ああ、最北端にあるとか……景色が良いとか……後は、場所が高い位置にあるとか……。
熱すぎるのは、ちょっと困るかな。それは、逆に健康に悪そうだ。
様々な想像を膨らませて、ワクワクして来たのだが、想像していたどれもが当てはまらない。
あれ? 普通のサウナだ。
『サウナ』と言われて、八割か九割の人が想像しそうな、普通の小さな部屋。
細長く、木の段差が部屋の端に設置されて、そこに座れるようになっている。
部屋の端には、熱源と思われる熱く熱された石。そこに水をかければ、ジュウウウと音を立てて水蒸気が上がる。
?? 世界とは?
これは、キャッチコピーに騙されたかな?
そう苦笑いしながら、俺はごく普通に他のお客さんと一緒にサウナを楽しむ。
ド級だの絶品だの強烈な言葉で誘っている商品を買ってみれば、拍子抜けするほど普通だったなんてことは、よくあることだ。
この間はなんだっけ?
究極のタレ! これさえあれば、どんな物も美味くなる! なんて言葉にスーパーで思わず買ってしまったのだが、ただの焼き肉のタレだった。
落ち着いてよく成分を見てみれば、家ですでに使っていた焼き肉のタレとほとんど成分表示が変わらない。
だが、訴えようにも、『究極』なんて抽象的な言葉。作った本人が「これこそ究極なんです!」と言い切ってしまえば、それに反論なんて出来そうにない。
本因坊さんなら、キャッチコピーを正しく読むためには、どんな筋肉が必要だというのだろうか……
いかんいかん。
完全に思考がマッスル寄りになってきている。
要らないのだ。マッスルは。
キャッチコピーを正しく読み取るためには、筋肉が必要なわけではない!!
冷静な判断! それ一択だろう。
普通のサウナで少しも整わずに、マッスルに流されそうになってると、サウナ室の扉が開く。
「お待たせいたしました!!」
なんだがムキムキのお兄さんが、サウナに入ってくる。
黒いティーシャツに赤いハチマキ。
すごく美味いラーメンを作りそうな出で立ちのお兄さん。
掃除の時間なのだろうか。
「今から、世界大会経験の技を披露いたします!!」
ムキムキのお兄さんが宣言する。
このサウナの常連らしき客が、「待っていました!」と歓声をあげて喜んでいる。
おっと、どうやらこのサウナの「世界大会」要素は、このお兄さんの『技』にあるようだ。
仁王立ちになるお兄さん。
熱源の石に水を素早くかけたお兄さんは、その卓越した上腕二頭筋を活かして猛烈なスピードでタオルで扇ぐ。
アウフグーツ
ロウリュ、つまり、サウナストーンに水をかけて蒸気を発生させろ。それを扇ぐ技、それがアウフグーツ。
お兄さんの世界大会級のアウフグーツで扇がれた熱風が、サウナ客である俺たちを襲う。
蒸気を含んだ強烈な熱風は、俺たちの日ごろのストレスや雑念を、マッスルに引っぺがしていく。
こ、これは整う……。
予想の斜め上の熱風サウナは、満喫できたが、俺の心は晴れなかった。
くっそう! 結局、すべては筋肉かよ!!
俺は、日ごろのストレスを解消し、身も心も整えるつもりでサウナに向かった。
そう。
これ以上、あのマッスル脳筋思考に流されないために、自分を取り戻すのだ。
そのためには、並みのサウナでは足りない!
だから、ネットで調べて『世界大会級!!』とキャッチコピーがついているサウナへと足を向けたのだ。
世界大会? そういう疑問符は、捨てきれない。
サウナに世界大会も何もないだろうと思うのが普通だ。
サウナの世界大会。
サウナルームが広いとか? 使っている素材が豪華でファビュラスな感じ?
えっと……他に世界大会と言われそうな要素は?
ああ、最北端にあるとか……景色が良いとか……後は、場所が高い位置にあるとか……。
熱すぎるのは、ちょっと困るかな。それは、逆に健康に悪そうだ。
様々な想像を膨らませて、ワクワクして来たのだが、想像していたどれもが当てはまらない。
あれ? 普通のサウナだ。
『サウナ』と言われて、八割か九割の人が想像しそうな、普通の小さな部屋。
細長く、木の段差が部屋の端に設置されて、そこに座れるようになっている。
部屋の端には、熱源と思われる熱く熱された石。そこに水をかければ、ジュウウウと音を立てて水蒸気が上がる。
?? 世界とは?
これは、キャッチコピーに騙されたかな?
そう苦笑いしながら、俺はごく普通に他のお客さんと一緒にサウナを楽しむ。
ド級だの絶品だの強烈な言葉で誘っている商品を買ってみれば、拍子抜けするほど普通だったなんてことは、よくあることだ。
この間はなんだっけ?
究極のタレ! これさえあれば、どんな物も美味くなる! なんて言葉にスーパーで思わず買ってしまったのだが、ただの焼き肉のタレだった。
落ち着いてよく成分を見てみれば、家ですでに使っていた焼き肉のタレとほとんど成分表示が変わらない。
だが、訴えようにも、『究極』なんて抽象的な言葉。作った本人が「これこそ究極なんです!」と言い切ってしまえば、それに反論なんて出来そうにない。
本因坊さんなら、キャッチコピーを正しく読むためには、どんな筋肉が必要だというのだろうか……
いかんいかん。
完全に思考がマッスル寄りになってきている。
要らないのだ。マッスルは。
キャッチコピーを正しく読み取るためには、筋肉が必要なわけではない!!
冷静な判断! それ一択だろう。
普通のサウナで少しも整わずに、マッスルに流されそうになってると、サウナ室の扉が開く。
「お待たせいたしました!!」
なんだがムキムキのお兄さんが、サウナに入ってくる。
黒いティーシャツに赤いハチマキ。
すごく美味いラーメンを作りそうな出で立ちのお兄さん。
掃除の時間なのだろうか。
「今から、世界大会経験の技を披露いたします!!」
ムキムキのお兄さんが宣言する。
このサウナの常連らしき客が、「待っていました!」と歓声をあげて喜んでいる。
おっと、どうやらこのサウナの「世界大会」要素は、このお兄さんの『技』にあるようだ。
仁王立ちになるお兄さん。
熱源の石に水を素早くかけたお兄さんは、その卓越した上腕二頭筋を活かして猛烈なスピードでタオルで扇ぐ。
アウフグーツ
ロウリュ、つまり、サウナストーンに水をかけて蒸気を発生させろ。それを扇ぐ技、それがアウフグーツ。
お兄さんの世界大会級のアウフグーツで扇がれた熱風が、サウナ客である俺たちを襲う。
蒸気を含んだ強烈な熱風は、俺たちの日ごろのストレスや雑念を、マッスルに引っぺがしていく。
こ、これは整う……。
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