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奇病
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来賓席でセシルが立ち上がったのが見える。
護衛兵達に止められているが、こちらの騒ぎに気付いて、ここに来ようとしているのだろう。
「ああ! 残念! 衛兵がいなかったら!!」
メリッサ? ここに来られたら困るだろう? どうして衛兵に引き留められているのを残念に思っているの? 好都合でしょうが!
「だ、大丈夫ですか? お嬢様」
突然アップルパイめがけて突っ込んできた俺に、驚きながらも給仕が手を差し伸べる。
「あ、ああ。ごめんなさい。リリィは持病があって、時々こんな風になるんです。特にアップルパイは危険で……まさか、今日アップルパイが料理にあるとは思わなかったから、油断していました」
カイルが、慌てて俺に駆け寄って抱き起してくれる。
とても苦しい言い訳。「アップルパイを見たら突っ込んでいく病」なんて奇病は、見たことがない。
「カイル様、ちょっと外の風に当たりとうございます」
元々病弱人生を歩んできた俺だ。気分の悪い仕草は得意だ。
うつむいて、カイルのもたれながら、そう小声でつぶやく。
「そうだな。それが良いだろう」
この場を早く離れたいカイルも応じてくれる。
メリッサとアーシュには、他にも何か計略があった時のために念のため会場に残ってもらって、俺とカイルは会場の外に出る。
会場の外。建物の横の目立たない場所にあるベンチに二人で座る。
「先輩。協力していただいたのに、こんなことになって、すみませんでした」
俺の行動の理由を説明してから、俺は、カイルに謝る。
折角の卒業記念のプロムを台無しにしてしまったのだ。楽しみにしていたであろう今日のイベントを、途中退席させてしまった。
会場では、何事もなかったように音楽が再開され、楽し気な声が漏れ聞こえる。
「俺、ここで、一人でいますから、どうぞ会場に戻って下さい」
「何で? 可愛い婚約者一人にして平気な男に見える?」
「先輩、それは今日だけの設定でしょ? 病弱でアップルパイツッコミ病という奇病も発覚したリリィは、四月には死亡予定です」
「でも、今日は俺の婚約者だ」
ニコリと笑うカイル。俺を抱き寄せる。
頬を撫でて、こちらを見つめてくる。
「えっと……」
戸惑う俺に、カイルの顔が近づいてくる。
「カイル!! てめぇ!! 手を出すんじゃねえ!!」
激怒りのマキノがカイルから俺を引きはがす。
おお、そういえば、会場の外に、フランネとリンネと一緒に待機してくれていたんだった。
ゼイゼイと激しく息をしているから、どっかから俺とカイルを見つけて、慌てて走って来てくれたのだろう。
「くっそっ! マキノ! あと一歩だったのに!」
カイルが悔しがる。
ねえ、そのチャラ男ノリに俺を巻き込むの、そろそろ止めてくれない? 俺、付いていけないんだけれども。
護衛兵達に止められているが、こちらの騒ぎに気付いて、ここに来ようとしているのだろう。
「ああ! 残念! 衛兵がいなかったら!!」
メリッサ? ここに来られたら困るだろう? どうして衛兵に引き留められているのを残念に思っているの? 好都合でしょうが!
「だ、大丈夫ですか? お嬢様」
突然アップルパイめがけて突っ込んできた俺に、驚きながらも給仕が手を差し伸べる。
「あ、ああ。ごめんなさい。リリィは持病があって、時々こんな風になるんです。特にアップルパイは危険で……まさか、今日アップルパイが料理にあるとは思わなかったから、油断していました」
カイルが、慌てて俺に駆け寄って抱き起してくれる。
とても苦しい言い訳。「アップルパイを見たら突っ込んでいく病」なんて奇病は、見たことがない。
「カイル様、ちょっと外の風に当たりとうございます」
元々病弱人生を歩んできた俺だ。気分の悪い仕草は得意だ。
うつむいて、カイルのもたれながら、そう小声でつぶやく。
「そうだな。それが良いだろう」
この場を早く離れたいカイルも応じてくれる。
メリッサとアーシュには、他にも何か計略があった時のために念のため会場に残ってもらって、俺とカイルは会場の外に出る。
会場の外。建物の横の目立たない場所にあるベンチに二人で座る。
「先輩。協力していただいたのに、こんなことになって、すみませんでした」
俺の行動の理由を説明してから、俺は、カイルに謝る。
折角の卒業記念のプロムを台無しにしてしまったのだ。楽しみにしていたであろう今日のイベントを、途中退席させてしまった。
会場では、何事もなかったように音楽が再開され、楽し気な声が漏れ聞こえる。
「俺、ここで、一人でいますから、どうぞ会場に戻って下さい」
「何で? 可愛い婚約者一人にして平気な男に見える?」
「先輩、それは今日だけの設定でしょ? 病弱でアップルパイツッコミ病という奇病も発覚したリリィは、四月には死亡予定です」
「でも、今日は俺の婚約者だ」
ニコリと笑うカイル。俺を抱き寄せる。
頬を撫でて、こちらを見つめてくる。
「えっと……」
戸惑う俺に、カイルの顔が近づいてくる。
「カイル!! てめぇ!! 手を出すんじゃねえ!!」
激怒りのマキノがカイルから俺を引きはがす。
おお、そういえば、会場の外に、フランネとリンネと一緒に待機してくれていたんだった。
ゼイゼイと激しく息をしているから、どっかから俺とカイルを見つけて、慌てて走って来てくれたのだろう。
「くっそっ! マキノ! あと一歩だったのに!」
カイルが悔しがる。
ねえ、そのチャラ男ノリに俺を巻き込むの、そろそろ止めてくれない? 俺、付いていけないんだけれども。
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