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シロノの心
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「シロノ!! 誕生日おめでとう!」
俺は、心からの想いを込めて、最愛の人に誕生日を祝う言葉を贈る。
「お兄様ったら、ご自分の誕生日でしょ?」
その通りだ。双子なんだから、シロノの誕生日は、俺の誕生日でもある! だが、そんなことはどうでもいいんだ! 俺は、シロノ誕生日を祝いたいんだ!
シロノは笑う。笑ったシロノは、誰よりも可愛い。
レポート、終わって良かった。リンネ、ありがとう!!
「そうだ。リンネを紹介しよう! リンネは、俺の大切な友達。とても博識で頭がいいんだ。そして、リンネ。この美少女が、ご存知の通り、俺の妹、シロノだ。と言っても、もう合同授業でも一緒に授業を受けているし、知っているよな?」
「もちろんです。……リオス、浮かれる気持ちはわかりますが、あなたのことですから、浮かれすぎると体調崩しますよ?」
「その通りなんです。リンネ様。お兄様は、毎年誕生日の翌日には、体調を崩して寝込んでしまいます」
和やかな時間。
使用人のほとんどいないこの家では、俺達は病気の時以外は、自分の世話は自分でする。おおよそ貴族とは思えない生活。
シロノとリンネと俺で食事を用意して、三人で食卓を囲む。
何代も前から貴族の家系であるリンネには、料理なんて初めての経験で面白かったようで、リンネも心から楽しんでくれているようだった。
シロノの焼いてくれたケーキ、オーブンから出したばかりのスパイスの利いたチキン、新鮮なサラダ、焼きたてのパン。
仕事で帰らないグスタフは放っておいて、三人でワイワイ騒ぎながら、お腹いっぱいになるまで食べる。
話題は、自然と四月のセシルの誕生日の話。
セシルの正妃になりたい人間は、その日のパーティに参加して、セシルに選ばれるのを待つ。パーティに参加することが、すなわち、正妃になりたいという意志の表明になるのだ。
「正妃の選定には、シロノも参加するのだろう?」
俺が、当然YESという答えが返ってくると思いながら、シロノに尋ねれば、
「いいえ。参加はいたしません」
と、シロノから意外な答えが返ってくる。
顔を見合わせる俺とリンネ。
「え、だって。あんなにシロノはセシル様を好きだったじゃないか」
「お、お兄様! ちょっと、リンネ様もいらっしゃるのに!」
シロノが真っ赤な顔になる。
ほら、セシルのことが、こんなにも好きなのに。どうして?
「好きだからこそです。わたくしは、グスタフの娘です。学校でも、どんなに一生懸命に向き合っても、悪くいう者は、後を絶ちません。わたくしの様に、評判の悪い娘は、そんな場に参加することもおこがましいと存じます。そんな娘が、セシル様の大切な式の場を穢すなんて、セシル様のためになりません」
頑張って突っ張って生きてきてはいても、シロノは心に傷を受けていたのだろう。
「シロノ……そんな。グスタフが親父だからって、どうしてシロノが恋を諦めないと駄目なんだよ。セシル様は、そんなことで人を評価するような人ではないよ? だから、シロノもセシル様を好きになったんだろう?」
「でもわたくしは……私は、農奴の子で……どんなにマナーを守って振舞っても、所詮は……下賤な身で……」
シロノの声が震えている。シロノは、泣かない。こういう時には、ただ、グッと涙をこらえて悔しさも悲しさも飲み込んでしまう。
この言葉は、シロノがずっと周囲からこの一年言われ続けていた言葉だろう。
俺も似たようなことは言われたが、友達もいたし、どうせ将来は貴族社会から離れるんだと思っていたから、それほどのショックを受けはしなかった。
だが、真面目なシロノは、こんな心無い誹謗中傷を、真正面から受けて悩んでいたのだろう。
「ごめんな、シロノ。俺が、ちゃんと寄り添ってやれなかったから、そんな思いつめて……」
シロノが、慌ててフルフルと首を横に振る。
俺は、心からの想いを込めて、最愛の人に誕生日を祝う言葉を贈る。
「お兄様ったら、ご自分の誕生日でしょ?」
その通りだ。双子なんだから、シロノの誕生日は、俺の誕生日でもある! だが、そんなことはどうでもいいんだ! 俺は、シロノ誕生日を祝いたいんだ!
シロノは笑う。笑ったシロノは、誰よりも可愛い。
レポート、終わって良かった。リンネ、ありがとう!!
「そうだ。リンネを紹介しよう! リンネは、俺の大切な友達。とても博識で頭がいいんだ。そして、リンネ。この美少女が、ご存知の通り、俺の妹、シロノだ。と言っても、もう合同授業でも一緒に授業を受けているし、知っているよな?」
「もちろんです。……リオス、浮かれる気持ちはわかりますが、あなたのことですから、浮かれすぎると体調崩しますよ?」
「その通りなんです。リンネ様。お兄様は、毎年誕生日の翌日には、体調を崩して寝込んでしまいます」
和やかな時間。
使用人のほとんどいないこの家では、俺達は病気の時以外は、自分の世話は自分でする。おおよそ貴族とは思えない生活。
シロノとリンネと俺で食事を用意して、三人で食卓を囲む。
何代も前から貴族の家系であるリンネには、料理なんて初めての経験で面白かったようで、リンネも心から楽しんでくれているようだった。
シロノの焼いてくれたケーキ、オーブンから出したばかりのスパイスの利いたチキン、新鮮なサラダ、焼きたてのパン。
仕事で帰らないグスタフは放っておいて、三人でワイワイ騒ぎながら、お腹いっぱいになるまで食べる。
話題は、自然と四月のセシルの誕生日の話。
セシルの正妃になりたい人間は、その日のパーティに参加して、セシルに選ばれるのを待つ。パーティに参加することが、すなわち、正妃になりたいという意志の表明になるのだ。
「正妃の選定には、シロノも参加するのだろう?」
俺が、当然YESという答えが返ってくると思いながら、シロノに尋ねれば、
「いいえ。参加はいたしません」
と、シロノから意外な答えが返ってくる。
顔を見合わせる俺とリンネ。
「え、だって。あんなにシロノはセシル様を好きだったじゃないか」
「お、お兄様! ちょっと、リンネ様もいらっしゃるのに!」
シロノが真っ赤な顔になる。
ほら、セシルのことが、こんなにも好きなのに。どうして?
「好きだからこそです。わたくしは、グスタフの娘です。学校でも、どんなに一生懸命に向き合っても、悪くいう者は、後を絶ちません。わたくしの様に、評判の悪い娘は、そんな場に参加することもおこがましいと存じます。そんな娘が、セシル様の大切な式の場を穢すなんて、セシル様のためになりません」
頑張って突っ張って生きてきてはいても、シロノは心に傷を受けていたのだろう。
「シロノ……そんな。グスタフが親父だからって、どうしてシロノが恋を諦めないと駄目なんだよ。セシル様は、そんなことで人を評価するような人ではないよ? だから、シロノもセシル様を好きになったんだろう?」
「でもわたくしは……私は、農奴の子で……どんなにマナーを守って振舞っても、所詮は……下賤な身で……」
シロノの声が震えている。シロノは、泣かない。こういう時には、ただ、グッと涙をこらえて悔しさも悲しさも飲み込んでしまう。
この言葉は、シロノがずっと周囲からこの一年言われ続けていた言葉だろう。
俺も似たようなことは言われたが、友達もいたし、どうせ将来は貴族社会から離れるんだと思っていたから、それほどのショックを受けはしなかった。
だが、真面目なシロノは、こんな心無い誹謗中傷を、真正面から受けて悩んでいたのだろう。
「ごめんな、シロノ。俺が、ちゃんと寄り添ってやれなかったから、そんな思いつめて……」
シロノが、慌ててフルフルと首を横に振る。
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