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お風呂とご飯と委員長
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「はぁ、はぁ……。一体、なんだっていうの……」
時計を見ると、現在お昼ぴったり。
あれ? お昼?
「夕方かと思ったけど……。そうだよね。朝から夕方まで寝られるわけないよね」
だけど……だったら、なんで?
なんで委員長は、お昼なのにウチに来れたの?
学校で授業があるでしょ?
「いや、そもそも。あの人が本当に委員長かも怪しいぞ、これは……っ」
もしかして不審者かもしれない!気を引き締めて戸締りをしないと――!
そう思った私が、ひっくり返りそうになったのは……お母さんが仕事から帰って来た、夕方の事だった。
ガチャ
「(あ、お母さんが帰って来た)」
「どうも、ごめんねぇ。わざわざウチにまで運んでもらっちゃってぇ」
「(ん? 誰かと話してる?)」
不思議に思った私は、玄関まで急ぐ。
すると――見えた光景に、衝撃で言葉を失った。
「あら一花。さっきね、そこで偶然に桂木くんに会ってね」
「か、桂木……?」
名前を復唱すると、さっき我が家の洗濯物を懸命に取り入れてくれた委員長が、お母さんの横に立っていた。
お母さんが買ったであろう、大量の買い物袋を持って。
「一花と同じクラスで、しかも委員長なんだって? もう! お母さんビックリしちゃった~」
「僕も驚きました。どこの学校の生徒さんかと思いきや、まさか一花さんのお母様だったとは」
「やっだー、もう! 褒め上手なんだから!」
バシンと叩かれてふらつく委員長――もとい桂木くん。
えっと、なんで……桂木くんがいるの?
「絶対、偶然なんかじゃないよね?」
「はて、何のお話でしょうか」
「(この男は~!!)」
「はて?」じゃないよ! 絶対、ウチの周りをウロウロしてたでしょ!
え? じゃあなに?
まさか、お昼に私が家を追い出してから、桂木くんはずっとウチの周りにいたって事!?
「一花~今日は本当にヒドイ雨だったわ。洗濯物は無事?」
「ぶ、無事、だけど……」
チラリと窓を見ると、まだカーテンのされていない窓に、雨がすごい勢いでぶつかっている。
え、じゃあ……桂木くんは、この雨の中にずっといたの?
「ちょ、あの……」
「どうされました?また僕の顔に釘付けですか? 飽きないですね」
「じゃなくて! 手!」
私が自分の手を桂木くんに伸ばす。すると、桂木くんは「タダで僕の手を触ろうなんて」と、まさかの同級生にせびろうとしてくるから驚きだ。
呆れた私は「もういい、貸して」と、桂木くんの手を握る。すると、その手は驚くほど冷たかった。
「バカじゃないの!? 何でこんなに冷えてんの!?」
「馬鹿……? 僕以外の人間に言うならまだしも、僕に……?」
「そーだよ! バカの桂木くんだよ!」
桂木くんのひんやりした手を握ったまま、彼に靴を脱ぐように促す。
「お母さん、桂木くんにお風呂入ってもらってもいい?」
「何が何だか分からないけど、いいわよ~」
「……ん、ありがとう」
私は短くお母さんにお礼を言って、桂木くんとお風呂場に行く。そしてお風呂場のドアを開けて「どうぞ」と、彼に入浴を促した。
「僕の入浴シーンにいくらの価値があると?シャワーを出したその瞬間から、カビも薔薇に変わりますよ?」
「わかったから、早く入って。桂木くんが入ってる間に、コンビニでメンズの下着とか買ってくるから」
返事も聞かずにバタンとドアを閉めようとしたところ「あの」と、浴室の中から声が響く。
え? もう真っ裸になって入ったの? そして、その状況で私を呼ぶ意味とは……。
「なに?」と、おそるおそる返事をする。
すると、
「一花さんのお母さん、優しいですね」
「え、どうして……?」
「何も事情を聞かず、僕の入浴に許可をした。普通の親なら、絶対に根掘り葉掘り聞きますよ」
「……何が言いたいの?」
「普通の親なら」という単語が引っかかって、私は思わず声のトーンを低くして尋ねる。すると桂木くんは「勘違いしないでください」と抑揚のない声で言った。
「一花さんの親が、あのお母さんで良かったなって。そう思ったまでです」
「!」
「今日、初めて一花さんにお会いして、一花さんの表情を見て、思いました。家の中では、一花さんの居場所はちゃんと温かいところにあるんだなと」
「……そ」
私はまた、短く返事をして。今度こそドアを閉める。
桂木くんの人を見る目というか、観察する目は鋭いなって……そう思った。だって、私自身がお母さんの「普通じゃない部分」に助かってる一人だから。
初めて学校を拒否した、あの日も――
時計を見ると、現在お昼ぴったり。
あれ? お昼?
「夕方かと思ったけど……。そうだよね。朝から夕方まで寝られるわけないよね」
だけど……だったら、なんで?
なんで委員長は、お昼なのにウチに来れたの?
学校で授業があるでしょ?
「いや、そもそも。あの人が本当に委員長かも怪しいぞ、これは……っ」
もしかして不審者かもしれない!気を引き締めて戸締りをしないと――!
そう思った私が、ひっくり返りそうになったのは……お母さんが仕事から帰って来た、夕方の事だった。
ガチャ
「(あ、お母さんが帰って来た)」
「どうも、ごめんねぇ。わざわざウチにまで運んでもらっちゃってぇ」
「(ん? 誰かと話してる?)」
不思議に思った私は、玄関まで急ぐ。
すると――見えた光景に、衝撃で言葉を失った。
「あら一花。さっきね、そこで偶然に桂木くんに会ってね」
「か、桂木……?」
名前を復唱すると、さっき我が家の洗濯物を懸命に取り入れてくれた委員長が、お母さんの横に立っていた。
お母さんが買ったであろう、大量の買い物袋を持って。
「一花と同じクラスで、しかも委員長なんだって? もう! お母さんビックリしちゃった~」
「僕も驚きました。どこの学校の生徒さんかと思いきや、まさか一花さんのお母様だったとは」
「やっだー、もう! 褒め上手なんだから!」
バシンと叩かれてふらつく委員長――もとい桂木くん。
えっと、なんで……桂木くんがいるの?
「絶対、偶然なんかじゃないよね?」
「はて、何のお話でしょうか」
「(この男は~!!)」
「はて?」じゃないよ! 絶対、ウチの周りをウロウロしてたでしょ!
え? じゃあなに?
まさか、お昼に私が家を追い出してから、桂木くんはずっとウチの周りにいたって事!?
「一花~今日は本当にヒドイ雨だったわ。洗濯物は無事?」
「ぶ、無事、だけど……」
チラリと窓を見ると、まだカーテンのされていない窓に、雨がすごい勢いでぶつかっている。
え、じゃあ……桂木くんは、この雨の中にずっといたの?
「ちょ、あの……」
「どうされました?また僕の顔に釘付けですか? 飽きないですね」
「じゃなくて! 手!」
私が自分の手を桂木くんに伸ばす。すると、桂木くんは「タダで僕の手を触ろうなんて」と、まさかの同級生にせびろうとしてくるから驚きだ。
呆れた私は「もういい、貸して」と、桂木くんの手を握る。すると、その手は驚くほど冷たかった。
「バカじゃないの!? 何でこんなに冷えてんの!?」
「馬鹿……? 僕以外の人間に言うならまだしも、僕に……?」
「そーだよ! バカの桂木くんだよ!」
桂木くんのひんやりした手を握ったまま、彼に靴を脱ぐように促す。
「お母さん、桂木くんにお風呂入ってもらってもいい?」
「何が何だか分からないけど、いいわよ~」
「……ん、ありがとう」
私は短くお母さんにお礼を言って、桂木くんとお風呂場に行く。そしてお風呂場のドアを開けて「どうぞ」と、彼に入浴を促した。
「僕の入浴シーンにいくらの価値があると?シャワーを出したその瞬間から、カビも薔薇に変わりますよ?」
「わかったから、早く入って。桂木くんが入ってる間に、コンビニでメンズの下着とか買ってくるから」
返事も聞かずにバタンとドアを閉めようとしたところ「あの」と、浴室の中から声が響く。
え? もう真っ裸になって入ったの? そして、その状況で私を呼ぶ意味とは……。
「なに?」と、おそるおそる返事をする。
すると、
「一花さんのお母さん、優しいですね」
「え、どうして……?」
「何も事情を聞かず、僕の入浴に許可をした。普通の親なら、絶対に根掘り葉掘り聞きますよ」
「……何が言いたいの?」
「普通の親なら」という単語が引っかかって、私は思わず声のトーンを低くして尋ねる。すると桂木くんは「勘違いしないでください」と抑揚のない声で言った。
「一花さんの親が、あのお母さんで良かったなって。そう思ったまでです」
「!」
「今日、初めて一花さんにお会いして、一花さんの表情を見て、思いました。家の中では、一花さんの居場所はちゃんと温かいところにあるんだなと」
「……そ」
私はまた、短く返事をして。今度こそドアを閉める。
桂木くんの人を見る目というか、観察する目は鋭いなって……そう思った。だって、私自身がお母さんの「普通じゃない部分」に助かってる一人だから。
初めて学校を拒否した、あの日も――
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