大嫌いなキミに愛をささやく日

またり鈴春

文字の大きさ
8 / 40

勘違いジェラシ―

しおりを挟む

 先輩と出会ったのは、職員室に入る前の事だった。


「わゎ、結構重たいなぁ……」


 皆の英語ノートを集めて、職員室にいる先生に提出しようと、廊下を歩いていた私。
 クラス全員分のノートの重みが、腕にズッシリとのしかかる。
 そういえば……教室を出る前、煌人にこんな事を言われた。


『英語ノートを集めてるの。煌人の分ちょうだい』
『……俺が職員室に持って行くよ』
『なんで?私が係なんだから私が、』


 すると、煌人は私からノートを取って、こう言った。


『女子にこんな重いの持たせらんねーって』
『……』

『おい、なんだよ。その顔は』
『別に。めんどくさいなって思っただけ』

『めんどくさいってなんだよ!他に言う事あるだろ!』


 不機嫌になりながら、煌人は私からノートをかっさらい、教室を出て行こうとする。


『ちょ、ちょっと!』


 持ってもらう義理はない、と、慌ててノートを取り返した。


『私が係だから!私が持って行く!』
『お前は、ちょっとは甘えるって事を、』

『私が・持って・行く。ね?』
『お、おぅ……』


(半ば無理やり)煌人からノートを奪い返した。
 のはいいんだけど、さすがに重たくて。
 やっぱり煌人に甘えれば良かったかな?と、少しだけ後悔中。


「後は、ドアを開けるだけ……!」


 ドアの取っ手に手を伸ばした瞬間。私はバランスを崩し、ノートタワーは崩壊した。
 バサッと、床に盛大に広がるノートたちを見て、思わずため息が出る。


「はぁ~、最悪だよ」


 でも自業自得か――とノートを集めていた、その時だった。


「大変そうだね、手伝うよ」
「え?」


 私が困っているのを見過ごさず、すかさず手を貸してくれた人。
 それが先輩だった。
 長身に、猫っ毛な黒い髪。少しだけ長い襟足が、よく似合ってる。


「英語のノート?女の子一人で、クラス全員分を持つのは大変でしょ」
「いけると思ったんですが、ダメでした」


「はは」と苦笑いを浮かべると、先輩も「ふふ」と笑って私を見る。
「私を見る」と言っても、先輩が見ているのは、半袖で顕になってる私の腕。そこをスッと指さして「ココがね」と言った。


「だいぶ赤くなってるよ?」
「あ、本当だ」
「白い肌だから、よく目立つね」


 ノートを支えていた私の腕には、それらの痕がクッキリと残っていて……確かによく目立つ。「すぐ消えるかな?」と思っていると、先輩が、いつの間にか全部のノートを持って立ちあがっていた。


「選手交代。どの先生に持っていけばいい?」
「あ、ありがとうございます。でも、」

「こういう時は素直に甘えて。それに、もう持っちゃったしね」
「あ、じゃあ……お願いします」


 職員室から帰る時も先輩と一緒で「何かお礼をさせてください」と言ったら、先輩が嬉しそうに笑った。
 そして、


「じゃあしばらくの間、俺と一緒に帰らない?」


 と提案され――――今に至る。


「いらっしゃいませー」


「何で煌人が私の隣に座るの?」
「男同士で座れっていうのかよ」

「嫌なら、私が先輩の隣に、」
「!」


 どこの席に座るかで争うなんて、本当に幼稚だと思う。だから穏便に解決しようと、私が先輩の隣に移動しようとした……のに。

 パシッ


「いーから、俺の隣に大人しく座っとけって!」


 なぜか怒った煌人に、席の主導権を握られる。見かねた先輩が「俺はこっちに一人で座るね」と発言したことにより、私と煌人が隣同士で座ることになった。


「(なぜ、こうなった……)」


 先輩へのお礼のつもりなのに、煌人と合流してからというものの、先輩に迷惑をかけすぎてる。常に一歩引いて周りを見ている先輩とは違って、どうして煌人は、いつも私しか見てないんだろう。何かにつけイチャモンをつけられる、こっちの身にもなってほしい。


「煌人、もう帰って良いよ?」
「真顔で言うの本当にやめて」


 さっきから帰るように言ってるのに、煌人は全くめげない。
 そうか。自分がアウェーって事に、気づいてないんだ(憐れみの目)。


「煌人の鈍感な所、少しだけ尊敬する」
「じゃあそこだけでも大いに見習えよ。ほら、メニュー」


 大きなメニュー表を私に渡す煌人。そして先輩にも。
 先輩は炭酸、私はココアを頼むと決めて……最後は煌人。何やらメニュー表をじっくり眺めてる。


「煌人、お腹すいたの?」
「んー、そんなところ。凜はココア?」

「うん」
「あっそ」


 あっそ、って……自分で聞いてきたくせに。


「(もう、自分勝手)」


 すると煌人は頼みたいものが決まったのか、メニュー表を閉じて「お店の人を呼んでも大丈夫ですか?」と先輩に確認する。その後すぐに店員さんがテーブルに来た、のだけど……
 同時に、思いもよらない事が起こった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

【完結】またたく星空の下

mazecco
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 君とのきずな児童書賞 受賞作】 ※こちらはweb版(改稿前)です※ ※書籍版は『初恋×星空シンバル』と改題し、web版を大幅に改稿したものです※ ◇◇◇冴えない中学一年生の女の子の、部活×恋愛の青春物語◇◇◇ 主人公、海茅は、フルート志望で吹奏楽部に入部したのに、オーディションに落ちてパーカッションになってしまった。しかもコンクールでは地味なシンバルを担当することに。 クラスには馴染めないし、中学生活が全然楽しくない。 そんな中、海茅は一人の女性と一人の男の子と出会う。 シンバルと、絵が好きな男の子に恋に落ちる、小さなキュンとキュッが詰まった物語。

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

Dear Prince ~超人気アイドルは地味女子を溺愛する~

山崎つかさ@SFB小説大賞金賞書籍化決定
児童書・童話
芽衣はクラスでも目立たない地味女子高生。 ある日、芽衣の学校に人気ボーカルユニット・Honey Blueの冬真が転校してくる。 偶然、冬真の隣の席になった芽衣。 冬真の仕事に真剣な姿や、意外と甘党なところ、優しく明るいところに次第に惹かれていく。 けれど、クラスメイトの女子たちが仲の良い芽衣と冬真をよく思っていなくて……!? ※表紙絵は漫画家の川野タニシさんにお描きいただきました。 ※青春ランキング10位!

合言葉はサンタクロース~小さな街の小さな奇跡

辻堂安古市
絵本
一人の少女が募金箱に入れた小さな善意が、次々と人から人へと繋がっていきます。 仕事仲間、家族、孤独な老人、そして子供たち。手渡された優しさは街中に広がり、いつしか一つの合言葉が生まれました。 雪の降る寒い街で、人々の心に温かな奇跡が降り積もっていく、優しさの連鎖の物語です。

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

処理中です...