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勘違いジェラシ―
しおりを挟む先輩と出会ったのは、職員室に入る前の事だった。
「わゎ、結構重たいなぁ……」
皆の英語ノートを集めて、職員室にいる先生に提出しようと、廊下を歩いていた私。
クラス全員分のノートの重みが、腕にズッシリとのしかかる。
そういえば……教室を出る前、煌人にこんな事を言われた。
『英語ノートを集めてるの。煌人の分ちょうだい』
『……俺が職員室に持って行くよ』
『なんで?私が係なんだから私が、』
すると、煌人は私からノートを取って、こう言った。
『女子にこんな重いの持たせらんねーって』
『……』
『おい、なんだよ。その顔は』
『別に。めんどくさいなって思っただけ』
『めんどくさいってなんだよ!他に言う事あるだろ!』
不機嫌になりながら、煌人は私からノートをかっさらい、教室を出て行こうとする。
『ちょ、ちょっと!』
持ってもらう義理はない、と、慌ててノートを取り返した。
『私が係だから!私が持って行く!』
『お前は、ちょっとは甘えるって事を、』
『私が・持って・行く。ね?』
『お、おぅ……』
(半ば無理やり)煌人からノートを奪い返した。
のはいいんだけど、さすがに重たくて。
やっぱり煌人に甘えれば良かったかな?と、少しだけ後悔中。
「後は、ドアを開けるだけ……!」
ドアの取っ手に手を伸ばした瞬間。私はバランスを崩し、ノートタワーは崩壊した。
バサッと、床に盛大に広がるノートたちを見て、思わずため息が出る。
「はぁ~、最悪だよ」
でも自業自得か――とノートを集めていた、その時だった。
「大変そうだね、手伝うよ」
「え?」
私が困っているのを見過ごさず、すかさず手を貸してくれた人。
それが先輩だった。
長身に、猫っ毛な黒い髪。少しだけ長い襟足が、よく似合ってる。
「英語のノート?女の子一人で、クラス全員分を持つのは大変でしょ」
「いけると思ったんですが、ダメでした」
「はは」と苦笑いを浮かべると、先輩も「ふふ」と笑って私を見る。
「私を見る」と言っても、先輩が見ているのは、半袖で顕になってる私の腕。そこをスッと指さして「ココがね」と言った。
「だいぶ赤くなってるよ?」
「あ、本当だ」
「白い肌だから、よく目立つね」
ノートを支えていた私の腕には、それらの痕がクッキリと残っていて……確かによく目立つ。「すぐ消えるかな?」と思っていると、先輩が、いつの間にか全部のノートを持って立ちあがっていた。
「選手交代。どの先生に持っていけばいい?」
「あ、ありがとうございます。でも、」
「こういう時は素直に甘えて。それに、もう持っちゃったしね」
「あ、じゃあ……お願いします」
職員室から帰る時も先輩と一緒で「何かお礼をさせてください」と言ったら、先輩が嬉しそうに笑った。
そして、
「じゃあしばらくの間、俺と一緒に帰らない?」
と提案され――――今に至る。
「いらっしゃいませー」
「何で煌人が私の隣に座るの?」
「男同士で座れっていうのかよ」
「嫌なら、私が先輩の隣に、」
「!」
どこの席に座るかで争うなんて、本当に幼稚だと思う。だから穏便に解決しようと、私が先輩の隣に移動しようとした……のに。
パシッ
「いーから、俺の隣に大人しく座っとけって!」
なぜか怒った煌人に、席の主導権を握られる。見かねた先輩が「俺はこっちに一人で座るね」と発言したことにより、私と煌人が隣同士で座ることになった。
「(なぜ、こうなった……)」
先輩へのお礼のつもりなのに、煌人と合流してからというものの、先輩に迷惑をかけすぎてる。常に一歩引いて周りを見ている先輩とは違って、どうして煌人は、いつも私しか見てないんだろう。何かにつけイチャモンをつけられる、こっちの身にもなってほしい。
「煌人、もう帰って良いよ?」
「真顔で言うの本当にやめて」
さっきから帰るように言ってるのに、煌人は全くめげない。
そうか。自分がアウェーって事に、気づいてないんだ(憐れみの目)。
「煌人の鈍感な所、少しだけ尊敬する」
「じゃあそこだけでも大いに見習えよ。ほら、メニュー」
大きなメニュー表を私に渡す煌人。そして先輩にも。
先輩は炭酸、私はココアを頼むと決めて……最後は煌人。何やらメニュー表をじっくり眺めてる。
「煌人、お腹すいたの?」
「んー、そんなところ。凜はココア?」
「うん」
「あっそ」
あっそ、って……自分で聞いてきたくせに。
「(もう、自分勝手)」
すると煌人は頼みたいものが決まったのか、メニュー表を閉じて「お店の人を呼んでも大丈夫ですか?」と先輩に確認する。その後すぐに店員さんがテーブルに来た、のだけど……
同時に、思いもよらない事が起こった。
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