溺愛パパは勇者！〜悪役令嬢の私のパパが勇者だった件〜

第3章

No.48 契約師①

「俺達、たった2人の家族だろ？今までどんなに辛い時でも一緒だっただろ？それなのに離れて暮らすなんて…。ティアは、寂しく無いのか？」

哀しそうな顔で弱々しくお父さんが尋ねる。確かにどんなつらい時魔王討伐だって一緒だった。それは認めよう。

ーーしかし。

「あっ！」
「やっぱり！！絶対に隠し持ってるって思ってた！！」

お父さんに近付き、服の中に手を突っ込んで手を動かすと小さな硬い物に触れる。。それを掴んで取り出して見てみれば。そこには、やはり想像していた物があった。

「録音なんかして一体、どうするつもりだったのよ！」

私の手には、手の平サイズの四角い黒い魔道具。それは、人の喋った事を録音出来る魔道具。私達の間で出回っているのはこれでは無い。普通は、両手で抱えて持つ位の大きさの四角い黒の魔道具だ。
この手の平サイズの魔道具は、本来なら王族又は諜報員などがこっそりと使う為の物だ。これ１つだけでも、お屋敷が買えるほどの値段なのだ。

（…それなのに、何でそんな高価な物を持ってるの？）

「べ…別に？ちょっとティアの声が録音したくなっただけで…」

ーートントン

「こんにちは～。今回、仕事を依頼された契約師の店から来ましたロバートです。ギルバートさんはご在宅ですか？」

外から男性の声が聞こえて来た。
契約師…。その台詞が聞こえた途端、全てを理解した。

ーー契約師

それは、ある一種の特殊な魔法を使う人達の事だ。契約師はその名の通り、契約を結ぶ事が出来る人達だ。普通の契約は、紙に書いたりするものでその証拠の契約書が無くなれば契約は無効になる。

しかし、契約師の結ぶ契約は違う。

契約師は、契約内容・相手の同意を持って魔法で結ぶ特殊な契約だ。
まず、契約内容を決める。その次に、契約相手の同意。この２つをもって契約師は魔法で特別な契約書を作る。この契約は決して消える事は無い。また、決して破れない。破ると、その者に契約違反魔法が発動する。それは、何段階かの強さがあり1番重いモノで全身が引き千切られる様な痛みだと言う。

（だから、契約師立ち会いの契約を気軽にする人はいない。とっても大事な契約をする時だけって聞いてる）