溺愛パパは勇者!〜悪役令嬢の私のパパが勇者だった件〜

ハルン

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第3章

No.63 バロン②

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店の中は、まだ完全な夜になっていないのに席は満席だった。そして、既に出来上がっている人々が数人。

「おっ!バロン、こっちだ」

声の方を向くと、カウンターに近い席に座るギルバート。

「遅くなってすみません」
「こっちが無理に誘ったんだ。気にするな」

ギルバートは、近くの胸元が大胆に開いた服を着た美人なウェイトレスに料理と酒を注文する。

「バロンは何にする?」
「同じ料理を。酒はいりません」

注文を受けたウェイトレスは、最後にギルバートに流し目をして形の良いお尻を見せつける様に動かしながら去って行く。周りの男達は、目をハートにしながらウェイトレスを見る。しかし、アプローチをかけられた当の本人は全く興味を示さずバロンに話しかける。

「騎士団はどうだ?」
「やっと、慣れてきたってとこですね。今年新しく新人も入って来たし、身が引き締まる思いですよ」
「そっか。すっかりバロンも立派な先輩だな。今日は、俺の奢りだから沢山食べろよ」
「ありがとうございます!」

暫くすると、料理と酒が運ばれて来た。先程の美人なウェイトレスが運んできたのだが、先程とは服が違っていた。先程は、胸元の開いた赤い服だった。だが今は、異国の踊り子の様なお腹が出ている青い衣装に着替えていた。

(あっ、これ本気でアプローチされてる)

豊かな金髪を高い位置で1つに纏め綺麗なうなじを晒している。目元には、紅い線が引かれ更に艶やかな雰囲気を出している。

「お待たせしましたぁ~」

そう言って、バロンの方に先に料理を置く。
次に、ギルバートの前に酒と料理を置いた。その時、彼女は豊満な胸をギルバートの顔にワザと当てる。

「きゃっ!胸が当たっちゃった。…ごめんなさい」

顔を赤く染め、潤んだ瞳でギルバートを見ながら胸の下で腕を組んで更に胸を強調した。周りの男達は既に彼女の虜だ。

ーーだが。

「あぁ、大丈夫だよ。俺は、君の胸に興味なんて無いから」

顔色1つ変えずにギルバートは答える。

「それじゃあ、食べようか」

唖然とする彼女を無視して食事を始める。

「おっ!この肉、上手いな!」
「…そうですね」

少しだけ、彼女が可哀想に思えた。
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