溺愛パパは勇者！〜悪役令嬢の私のパパが勇者だった件〜

第3章

No.115 必ず消す

ドンドンッ！

「っ！出してよ！私を此処から出しなさいよっ！」

アナがティアを襲ったあの日から今日で2日目。
ギルバートとアニーに連行され学園に連れ戻されたアナは、また特別室に閉じ込められた。

アナは、すぐに前と同じ方法で部屋を出ようとした。だが前回とは違い、今回は自殺行為などの自傷行為が一切出来ない様にアニーが直々に魔法をかけた為にそれが出来なかった。

「何よ…何なのよ！？何で全員で私の邪魔をするのよ！どいつもこいつもモブのくせして！！」

アナは、怒りに任せ扉を叩く。

「うわぁ～、マジで怖いな。最近の女の子ってこんなに過激なのかよ…」
「馬鹿…そんなわけ無いだろ？もしも仮にそうだったら、この国は終わりだぜ？」
「違いねぇ」

前回と違い、扉の外には2人の騎士が配置されていた。前回、教師達の監視の目をすり抜けて救護室から突然姿を消した為に国から騎士が派遣されたのだ。

「だけどよ、オレ等が監視する意味あんのか？魔法を使う教師が逃げられたんだろ？」
「此処には、アニー魔術師団長自ら結界を張ってくれたみたいだぜ？だから魔法の心配は無いらしい。オレ等は、決められた人物以外来ない様に見張るだけだ」
「それなら簡単だな」

その会話の間、止むことのないアナの怒鳴り声と扉を叩く音。

「このっ！」

ーーバキッ！

アナが、扉に椅子を叩きつけるが扉はビクともしない。椅子の足が折れるが、それも直ぐに直り元の位置に戻る。

「何でゲームの通りに行動してるのにこんな事になるのよ。攻略キャラとは、誰とも好感度が上がらないし。それに、いつまで経ってもヒロインにあった治癒魔法が使えないなんて…」

イライラしながら自身の親指の爪を噛む。

（せっかく生まれ変わって大好きだったゲームのヒロインになったのに…）

前世のブスだった時とは違い、大好きなゲームの可愛いヒロインに生まれ変わった。その時、アナは神に感謝した。

「私は此処で幸せになれる」と。

だが、現実はどうだ。
ヒロインの筈の自分がこんな部屋に監禁されて、嫌われ者の悪役令嬢が攻略キャラと一緒にいる。本来なら、そこはヒロインである自分の場所だ。

「………そうよ、あの女が邪魔なのよ。あの目障りな女が消えれば全部上手く行くわ。そうよ、それ以外あり得ない…」

（必ずあの女を消してやる…）

そこに居たのは、誰からも愛される可愛い女の子ではなく憎しみに囚われた醜い女だった。