溺愛パパは勇者!〜悪役令嬢の私のパパが勇者だった件〜

ハルン

文字の大きさ
125 / 131
第3章

No.125 昼ドラ的展開ではありません

しおりを挟む
悲しい現実と向き合いながら、昼休みを終えて午後の授業に取り組むティア。しかし、残りの授業は全て憂鬱な気持ちで過ごしたのだった。

「ごめんね、ティアちゃん」

放課後になり、サーシャが申し訳無さそうにティアに謝る。昼休みに自分が言った言葉の謝罪と、今日は一緒に帰る事が出来ない事への謝罪だ。

「ううん、大丈夫!今日は、久し振りにアンドレイ殿下とのお茶会でしょ?サーシャ、ずっと楽しみにしてたじゃん!それなのに、そんな暗い顔しないでよ。そんな顔でアンドレイ殿下とあったら、『私のサーシャに何したんだい?』って怒られるから」
「アンドレイは、そんな事で怒らないわ」

(いや、怒るんですよ)

私は、サーシャに一つ隠し事をしている。
それは、月に一度アンドレイ殿下から手紙が届いている事を。

別に、アンドレイ殿下とティアがサーシャを裏切っている…言う訳では断じて無い。そんな昼ドラ的な手紙では無い。それは、アンドレイ殿下がサーシャと親しいティアに向けた近状報告を催促する手紙である。

初めて手紙が来たのは、入学して1ヶ月が経つ頃だった。

『あれ、何この手紙?送り主の名前が無い?お父さんからの手紙はこっちだし…間違いかな?いや、でも宛先は私だし…』

不審に思いながら手紙を開いたらティアは、驚いた。何故なら、アンドレイ殿下からの手紙だったからだ。入学式の時に一度だけしか話した事の無いティアに、アンドレイ殿下から手紙が来るなど想像していなかったからだ。

『な、何の用だろう…』

緊張しながら恐る恐る手紙を読み進めていくティア。しかし、読み終わる頃には無表情になっていた。だが、それも仕方ないだろう。手紙には、こう書かれていた。

『私の愛しいサーシャの友達になったんだってね。最近のサーシャからの手紙には、君の事ばかり書かれているよ。サーシャに、損得無しで心許せる友達が出来た事は非常に喜ばしい事だ。しかし、私のサーシャの関心を奪うのは許せないね。どうやら、私の愛しいサーシャは君にご執心のようだ。前までは、私の事を気遣う手紙だった。しかし、今では君とどんな風に話したり過ごしたりしている事ばかり。それってどう思う?婚約者である私を差し置いてサーシャとずっと一緒って何なの?そもそも、年齢差のせいでサーシャと学園に通えないこと自体が理不尽だと思わないかい?大体ーー』

それから手紙には、とんでも無く長い愚痴が書かれていた。そして5枚目の手紙の最後にこう書かれていた。

『ーーという訳で、本当なら毎日がいいんだがティア嬢も入学してばかりで忙しいだろう?だから、月に一度でいいからサーシャの近状を手紙で私に知らせてくれ。因みに、これはお願いでは無く王太子命令だと思ってくれ。勿論、サーシャには秘密にね。  
      アンドレイ=フィン=アスカーラン』

こうして、私欲に塗れた王太子命令でティアはアンドレイ殿下とサーシャの近状報告の手紙のやり取りをしているのだった。


しおりを挟む
感想 93

あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

転生した世界のイケメンが怖い

祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。 第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。 わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。 でもわたしは彼らが怖い。 わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。 彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。 2024/10/06 IF追加 小説を読もう!にも掲載しています。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

処理中です...