溺愛パパは勇者!〜悪役令嬢の私のパパが勇者だった件〜

ハルン

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第3章

No.129 ごめんなさい

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「と、父さん?僕の聞き間違いかな?」

ヒクヒクと口の端を引き攣らせたノアは、アーノルドを見つめる。

「此処に来る事、国王陛下に必ず伝えるって約束したよね?アーロンにも、何度も忠告されてたよね?」

ノアにそう言われた途端、アーノルドは視線を彷徨わせる。

「あ~、うん。も、勿論ちゃんと手紙は用意したんだよ?アーロンに何度も書き直させられたから、ちゃんとした手紙を書いたんだよ」

アーノルドはそう言いながら愛息子をチラチラと見るが、ノアは無表情で父親を見る。

「…で?その手紙はどうしたの?勿論、書いたんだから出したんだよね?」
「う、あ…」
「手紙っていうのは、相手に届けてこそ手紙だものね。僕もアーロンも、手紙をちゃんと出す様に何度も言ったよね?」

ノアは、冷たい声でアーノルドに問いかける。愛する息子の冷たい視線に、アーノルドは今にも泣きそうだ。そうして、恐る恐るノアに尋ねた。

「ノ、ノア?お、怒ってる?」

その言葉に、普段温厚なノアが切れた。

「……怒ってるだって?怒ってるに決まってるだろ!」
「ひゃっ!」

息子の怒声に、飛び跳ねるアーノルド。
そんなアーノルドを無視して、ノアは父親を怒鳴り付ける。

「父さんはいつもそうだ!あれほど大事な事だとアーロン達と何度も言ってたのにっ!何でそうやっていつも忘れるんだ!」
「ご、ごめ…」
「ごめんで済むなら、こんなに怒ってないよ!父さんがした事は、侵略行為に等しい事だと分かってるの?国のトップが許可どころか、訪問を知らせないなんてっ!父さんは、人間にとって脅威となり得る力を持ってるんだよ?そんな人物が無断で国に現れたら、この国の人間はどう思うと思ってるんだ!」
「ご、ごめんよ、ごめんよノア…」

息子に本気で叱られ、アーノルドはシクシクと泣き始める。そんな父を見て、ノアも怒りが少し収まったのだろう。先程よりは冷静にアーノルドに話しかける。

「僕に謝っても意味がないだろ?兎に角、すぐにグリード陛下に状況説明と謝罪をしないと」

そう言って、ノアは呆然と隣に立つティアに声をかける。

「ティア、身内の恥ずかしい所を見せてごめんね?聞いてたと思うけど、これから直ぐにグリード陛下に謝罪しに行かないと行けなくなった。それでお願いがあるんだ」
「お願い?」
「うん。今すぐギルバートさんを呼んでくれないかな?勇者であるギルバートさんを連れてけば、少しは魔王に対する恐怖の抑止力になると思うんだ。これ以上、グリード陛下達に悪い印象を与えたくないんだ。……まぁ、この場にいる時点で手遅れだと思うけど」
「わ、分かった。直ぐにお父さんを呼んでくるから!」
「ありがとう。ごめんね、こんな事に巻き込んじゃって」

力なく微笑むノアを見て、ティアは酷く同情と心配をしながらギルバートを呼ぶ為に図書館を出たのだった。
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