溺愛パパは勇者!〜悪役令嬢の私のパパが勇者だった件〜

ハルン

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第3章

No.130 アーロン、ありがとう

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ギルバートを呼びにティアがその場を離れた途端、ノアは真剣な表情でアーノルドを見た。

「………で?会ってみてどうだった?」
「ん~、微妙かなぁ」
「何それ?」
「覚醒してたら、はっきりと分かるんだけどね。恐らく、ティアちゃんは未だ未覚醒なんだと思うよ。それか、そもそも僕らの勘違いだったか。なんせ、最後に存在したのが200年も前だからね。いくら僕だって、200年も前の事を鮮明に覚えてるわけじゃ無いしね」

そう言って、アーノルドはお手上げだという様に肩をすくめた。

「でも、完全に否定は出来ないんだよね?」
「そうだね。本当に微妙だけど、ティアちゃんからはアレと同じ気配がしたからね。ギルからの手紙で知った時は、まさかとは思ったけど…」

アーノルドは、先程までの泣きそうな表情から冷たい魔王としての顔になる。

「例え僕達の勘違いだったなら、何の問題も無い。だが、もし本物だった場合、あの連中達に存在を知られたらあの子は間違い無く命を狙われる」
「そんな事させない!」

アーノルドの言葉に、ノアは力強く答える。

(絶対に、ティアを傷付けさせるものかっ…!)

「勿論、僕も同意見だよ。………まぁ、ノアとは理由が少し違うけどね」

勇者ギルバートの愛する娘であるティア。
そんな彼女が魔族に殺されたとなれば、ギルバートは怒り狂い魔族を滅ぼす為に魔国に襲いかかるだろう。魔王としてギルバートに立ち向かうつもりだが、恐らく魔族の大半は死に魔国は実質滅びるだろう。それだけは、何としても阻止しなければならない。理由の大半はこれだが、親友の娘であり息子の想い人であるティアの事を傷付けさせる事など許せない想いも勿論ある。

「そう言えば、アーロンはどうしてるの?」
「アーロンなら、今頃僕の代わりに仕事してると思うけど…何で?」
「いや、アーロンにはいつも父さんの尻拭…お世話をして貰ってるからね。今度、長期休暇でもあげないと」

(事実、父さんが出し忘れた訪問に関する手紙の存在に気付いて、色々とやらかす前に出してくれたからね)

ティアがいた時の手紙を出し忘れた云々の話は、殆ど嘘である。確かにアーノルドは、時々やらかしてしまう事がある。しかし、それを阻止する為に優秀なアーロンが付いている。アーノルドの側にアーロンがいる限り、そんなミスは絶対にあり得ないのだ。「もうアーロンが魔王でいいのでは?」と思うが、残念ながら魔王は一番力のある者がなると言う決まりなのだ。

「………本当に、アーロンさんがいてくれて良かったよ」

呑気に息子と一緒にいる事を喜ぶ父親魔王を見て、ノアは今一度アーロンに感謝を捧げるのだった。
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