130 / 131
第3章
No.130 アーロン、ありがとう
しおりを挟む
ギルバートを呼びにティアがその場を離れた途端、ノアは真剣な表情でアーノルドを見た。
「………で?会ってみてどうだった?」
「ん~、微妙かなぁ」
「何それ?」
「覚醒してたら、はっきりと分かるんだけどね。恐らく、ティアちゃんは未だ未覚醒なんだと思うよ。それか、そもそも僕らの勘違いだったか。なんせ、最後に存在したのが200年も前だからね。いくら僕だって、200年も前の事を鮮明に覚えてるわけじゃ無いしね」
そう言って、アーノルドはお手上げだという様に肩をすくめた。
「でも、完全に否定は出来ないんだよね?」
「そうだね。本当に微妙だけど、ティアちゃんからはアレと同じ気配がしたからね。ギルからの手紙で知った時は、まさかとは思ったけど…」
アーノルドは、先程までの泣きそうな表情から冷たい魔王としての顔になる。
「例え僕達の勘違いだったなら、何の問題も無い。だが、もし本物だった場合、あの連中達に存在を知られたらあの子は間違い無く命を狙われる」
「そんな事させない!」
アーノルドの言葉に、ノアは力強く答える。
(絶対に、ティアを傷付けさせるものかっ…!)
「勿論、僕も同意見だよ。………まぁ、ノアとは理由が少し違うけどね」
勇者ギルバートの愛する娘であるティア。
そんな彼女が魔族に殺されたとなれば、ギルバートは怒り狂い魔族を滅ぼす為に魔国に襲いかかるだろう。魔王としてギルバートに立ち向かうつもりだが、恐らく魔族の大半は死に魔国は実質滅びるだろう。それだけは、何としても阻止しなければならない。理由の大半はこれだが、親友の娘であり息子の想い人であるティアの事を傷付けさせる事など許せない想いも勿論ある。
「そう言えば、アーロンはどうしてるの?」
「アーロンなら、今頃僕の代わりに仕事してると思うけど…何で?」
「いや、アーロンにはいつも父さんの尻拭…お世話をして貰ってるからね。今度、長期休暇でもあげないと」
(事実、父さんが出し忘れた訪問に関する手紙の存在に気付いて、色々とやらかす前に出してくれたからね)
ティアがいた時の手紙を出し忘れた云々の話は、殆ど嘘である。確かにアーノルドは、時々やらかしてしまう事がある。しかし、それを阻止する為に優秀なアーロンが付いている。アーノルドの側にアーロンがいる限り、そんなミスは絶対にあり得ないのだ。「もうアーロンが魔王でいいのでは?」と思うが、残念ながら魔王は一番力のある者がなると言う決まりなのだ。
「………本当に、アーロンさんがいてくれて良かったよ」
呑気に息子と一緒にいる事を喜ぶ父親を見て、ノアは今一度アーロンに感謝を捧げるのだった。
「………で?会ってみてどうだった?」
「ん~、微妙かなぁ」
「何それ?」
「覚醒してたら、はっきりと分かるんだけどね。恐らく、ティアちゃんは未だ未覚醒なんだと思うよ。それか、そもそも僕らの勘違いだったか。なんせ、最後に存在したのが200年も前だからね。いくら僕だって、200年も前の事を鮮明に覚えてるわけじゃ無いしね」
そう言って、アーノルドはお手上げだという様に肩をすくめた。
「でも、完全に否定は出来ないんだよね?」
「そうだね。本当に微妙だけど、ティアちゃんからはアレと同じ気配がしたからね。ギルからの手紙で知った時は、まさかとは思ったけど…」
アーノルドは、先程までの泣きそうな表情から冷たい魔王としての顔になる。
「例え僕達の勘違いだったなら、何の問題も無い。だが、もし本物だった場合、あの連中達に存在を知られたらあの子は間違い無く命を狙われる」
「そんな事させない!」
アーノルドの言葉に、ノアは力強く答える。
(絶対に、ティアを傷付けさせるものかっ…!)
「勿論、僕も同意見だよ。………まぁ、ノアとは理由が少し違うけどね」
勇者ギルバートの愛する娘であるティア。
そんな彼女が魔族に殺されたとなれば、ギルバートは怒り狂い魔族を滅ぼす為に魔国に襲いかかるだろう。魔王としてギルバートに立ち向かうつもりだが、恐らく魔族の大半は死に魔国は実質滅びるだろう。それだけは、何としても阻止しなければならない。理由の大半はこれだが、親友の娘であり息子の想い人であるティアの事を傷付けさせる事など許せない想いも勿論ある。
「そう言えば、アーロンはどうしてるの?」
「アーロンなら、今頃僕の代わりに仕事してると思うけど…何で?」
「いや、アーロンにはいつも父さんの尻拭…お世話をして貰ってるからね。今度、長期休暇でもあげないと」
(事実、父さんが出し忘れた訪問に関する手紙の存在に気付いて、色々とやらかす前に出してくれたからね)
ティアがいた時の手紙を出し忘れた云々の話は、殆ど嘘である。確かにアーノルドは、時々やらかしてしまう事がある。しかし、それを阻止する為に優秀なアーロンが付いている。アーノルドの側にアーロンがいる限り、そんなミスは絶対にあり得ないのだ。「もうアーロンが魔王でいいのでは?」と思うが、残念ながら魔王は一番力のある者がなると言う決まりなのだ。
「………本当に、アーロンさんがいてくれて良かったよ」
呑気に息子と一緒にいる事を喜ぶ父親を見て、ノアは今一度アーロンに感謝を捧げるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
転生した世界のイケメンが怖い
祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。
第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。
わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。
でもわたしは彼らが怖い。
わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。
彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。
2024/10/06 IF追加
小説を読もう!にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる