極妻、乙女ゲームの世界に悪役令嬢として転生しちゃいました!

ハルン

文字の大きさ
19 / 105

18 ガダルside

しおりを挟む
オレの名前は、ガダル・グラシェール。
このグラシェール王国の第二王子として生まれた。

賢王として名高い父に、その父を妻として王妃として支える母、そして次代の王として相応しいと思える尊敬する兄。ガダルは、とても恵まれた環境に生まれた。
この国の第二王子として生まれたガダルを、周りの大人は褒め称えた。

『ガダル王子は、陛下の生写しの様に似ていらっしゃる』
『本当に。金の髪に緑の瞳もそっくりだ』
『いずれ、クリス王子と二人でより良い国を築いて下さるだろう』
『流石、我が国の王子だ』

その様な言葉を聞かされて育ったガダルは、「自分は選ばれた素晴らしい人間」だと思い込むようになった。いずれ、あの素晴らしい兄を支えるべく生まれた特別な人間だと。現に、勉強や剣術も他の貴族の子供達より上だった。それが余計にガダルを調子づかせた。

そんなガダルが5歳になる頃、母ミレーヌが歳の近い貴族の子女を招いたお茶会を開く事になった。最初は、ガダルは嫌がった。つまらないお茶会に出るくらいなら、大好きな兄と剣の稽古をしたかったからだ。だが、兄にお茶会に参加しなさいと言われた為に、渋々参加する事にしたのだ。


そのお茶会で、ガダルは二重の意味で"運命の出会い"をする事になった。


ミレーヌと共に会場入りしたガダルは、挨拶に来る貴族達を見ながら既に飽き始めていた。貴族達のミレーヌへの挨拶はまだ終わらない。自分の紹介までまだ時間があった為、コッソリとミレーヌの側から離れる。

(オレの挨拶になるまでに戻れば、母上も怒らないよな!)

そう思いながら誰にも見つからない様に歩いていると、視界の端に何かが映る。それは、ふわふわとした柔らかい髪を持つ女の子の後ろ姿だった。そのふわふわは、人目を避ける様に奥にある薔薇園へと向かっていく。それに吸い寄せられる様に、ガダルは跡をついて行く。薔薇園に着くと、女の子は立ち止まりリラックスした様に身体から力が抜けるのが分かった。

「ふぅ~。此処は落ち着くなぁ…」

その声は、とても可愛らしかった。
どうしても顔が見たくなり、ガダルは大きな声で少女に話しかけた。

「おい!此処で何をしている」
「っ!?」

振り返った少女は、とても可愛らしい女の子だった。ふわふわの茶色い髪にガダルと同じ緑の瞳を持つ少しふっくらとした小動物の様な可愛らしい少女。ガダルは、一瞬にして少女に恋をした。

所謂一目惚れである。

「ん?お前は…」

少女の胸元の紋章の入ったブローチを見て、何か思い出しそうになる。だが、少女の声が聞こえて来て直ぐに意識は少女に向く。

「あ、あの…」
「何だ?喋るならちゃんと話せよ!」

所詮、まだまだ5歳のお子様であるガダル。好きな子に構って欲しくて意地悪する子供の様に…また、人の上に立つ王族としての本能の様に少女にマウントを取る様に大きな声を出してしまう。

「え、えっと…、その…」

ガダルの大声に怯えた少女は、ガダルから視線を逸らす。その事に、ガダルは苛立ちを覚えた。

「おいっ!オレをちゃんと見ろ!」
「きゃっ……!」

自身を見て欲しくて、少女のふわふわの髪を掴む。


ーーその時だった。


「こんのクソガキが!!私の友達に何してやがんだ!」
「「!?」」

そんな聞いた事もないガラの悪い言葉と共に、今まで経験した事の無い物凄い衝撃がガダルを襲う。そうして、ガダルは勢いよく後方へと吹き飛んだ。

これが、優しい天使の様なティミアと天使の皮を被った悪魔の様なサーシャとの出会いであった。







しおりを挟む
感想 117

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!

ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」 それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。 挙げ句の果てに、 「用が済んだなら早く帰れっ!」 と追い返されてしまいました。 そして夜、屋敷に戻って来た夫は─── ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

処理中です...