極妻、乙女ゲームの世界に悪役令嬢として転生しちゃいました!

ハルン

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No.40

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次の日。
今日は、朝から屋敷内がバタバタと騒がしい。今日やって来るという来客を迎える準備に、使用人達が奔走しているのだ。

かく言うサーシャも、来客を迎える為に準備をしていた。

「これは?」
「いえ、この青いドレスには赤い宝石が似合うんじゃ無い?」
「靴はどうしましょう?」
「そうね、先日旦那様が買われたあの靴は?」

目の前では、数人のメイド達がサーシャを飾り付ける為に様々な宝石やリボン、靴などを持って「ああでもない、こうでもない」と話し合っていた。

(ま、まだ終わらないのか……)

当のサーシャは、青いドレスを身に纏いながらその様子を彼此20分は眺めていた。

「サーシャ様、髪はどう致しましょう?」

そう言ったのは、サーシャの専属メイドであるリラだった。歳は10歳とまだ幼いが、母であるメイド長アンにメイドとしての技術は仕込まれていた。

「………そうね。今日は涼しいから、ハーフアップにしてくれる?」
「でしたら、最近王都で流行りの編み込みをしましょう!」
「お願いするわ」

そうしている間にも、メイド達の争いは不穏な気配を漂わせ始めた。

「………あら?貴女のセンスは、時代遅れではなくて?」
「そう言う貴女のセンスこそ…。私、20年前の時代にタイムワープしたのかと思ったわ」
「ちょっと!やめなさいよ….」
「そうよ!時間が無いのよ?」
「煩いわよ!大体、朝から思ってたんだけど!貴女の今日の髪型ちょっと変よ!」
「………何ですって?」
「それに、時間がないって言ってるけど…。約束の時間には、まだ三時間はあるわ。時間の計算も出来ないなんて、恥ずかしいわよ?」
「………言ったわね?」

「アハハウフフ」と黒い笑みを浮かべて笑い合う睨み合うメイド達。メイド服の裾に手を伸ばしたその手には、何やら怪しく光る複数の暗器が…。

ーーそう。『王家の番犬』であるアベルシュタイン家の使用人達は、全ての者が一流の暗殺者達なのである。

その様子を見ていたサーシャは思った。

(やっぱり、私の家って少し……いや、かなり普通とは違うよね?)

……まぁ、普通の貴族がどんなものか知らない。
しかし、我が家は絶対に普通では無いと思う。どちらかと言うと、サーシャの前世であった極道に近い物だと感じる。

そんな事を思っていた時、勢い良く部屋の扉が開いた。

ーーバンッ!

「………貴女達?一体、サーシャ様の前で何をそんなに騒いでいるの?」
「「「「ア、アン様!!」」」」

そこには、にっこりと微笑むメイド長アンの姿が。

「サーシャ様、ノックもせずに失礼しました」
「う、ううん。大丈夫…」

何故だろう。
優しい笑みなのに、とても怖い。

「この者達には、少々教育が足りなかった様です。少しだけ、お待ち下さい。………貴女達、ついていらっしゃい」
「「「「は、はい…」」」」

そして、とても怯えたメイド達はアンの後をついて行った。

「………お母さん、凄く怒ってました」
「……そうね」

いつの世も、ああいう普段優しい人が怒るととても怖い事を、身を持って実感したのだった。

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