極妻、乙女ゲームの世界に悪役令嬢として転生しちゃいました!

ハルン

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No.58

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泣き真似をする女の子を無視して着いた一座の巨大なテント。アランに手を引かれるままに中に入ると、サーシャは驚きに軽く目を見開いた。

暗いテントの中を明るく照らす多くの光の球体が、サーシャ達を出迎える。
中央の舞台を丸く囲む様に作られた座席。その間を、冷たく気持ちの良い風が常に吹き抜けていた。

「……凄い。色んなところに魔法が使われてるわ」
「サーシャ、あの光の球体をよく見てみなよ」

アランに言われた通りに、テント内を照らす光の球体を見詰める。暫くして、サーシャはその光の球体の正体に気が付く。

「あれって妖精…?」
「そうだよ。サーシャは、妖精を初めて見るよね?」

その問いに、妖精を見つめながらコクコクと頷く。
掌サイズの身体に透明で綺麗な羽を持つ可愛らしい妖精達が、キラキラと光る美しい鱗粉の様なものを撒きながら楽しげにテント内を飛び回る。

その様子は、まるで幻想の様に美しかった。

「本来、妖精は人前に現れない。………と、言うより見えないって言うのが本当かな」
「見えない?」

サーシャは、その言葉にアランを見る。

(そう言う割には、バッチリ見えてるけど……)

そんなサーシャの疑問を読み取ったのだろう。
アランは、話を続ける。

「妖精は、契約して初めて人の目に見える様になるんだよ。つまり、此処にいる精霊達は皆んな一座の誰かと契約してるって事さ」
「精霊との契約は難しいの?」
「うーん、難しいって言ったら難しいかな。精霊と契約するには、二つの条件があるんだ」
「条件?」

(まぁ、契約には何らかの条件があるのは当たり前だよね)

「そう。一つ、一定の魔力がある事。精霊と契約した後、契約者は精霊に自身の魔力を与え続けなきゃいけないんだ。簡単に言うと、ご飯だね。だから、一定の魔力が無いと精霊と契約出来ない。逆に、多くの魔力があったらそれだけ多くの精霊と契約は出来る可能性があるって事だよ」

確かに、払うものが無ければ契約したくても出来ない。

(それより、精霊って魔力を食べるんだ。初めて知ったなぁ)

「もう一つは?」
「もう一つは至極当たり前の事なんだけど、精霊に気に入られるかどうかだね。どんなに膨大な魔力を持っていても、精霊に気に入ってもらえなければ絶対に契約出来ないんだ。精霊が気にいる判断は、魔力か人柄か容姿と、その精霊によって色々なんだけどね」

(契約主が自身の好みじゃ無いと契約してくれないんだ…)

確かに、自身が気に入らない相手にずっと使えるのは嫌だ。だからと言って、人間はある程度妥協しなければ生きていけない。その点、自然の中で自由に生きる精霊達の中には、「妥協」と言う言葉は無いだろう。

好きなら好き
嫌いなら嫌い

単純明快は精霊達を、サーシャは好ましく感じたのだった。






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