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No.72
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クリスの登場で、会場は大騒ぎになった。
「これはクリス王子!お会い出来て光栄です!私は、クシュー子爵家当主ダゾンです。此方が、娘のミミーラで御座います。妻に似て、とても可愛らしい顔立ちをしておりまして」
「ふんっ!そなたの娘は、王子より5歳も歳上ではないか。殿下、お久しぶりです。先日城内にてお会いして以来ですな。今日は、ちょうど娘も来ておりまして。アリス、此方に来なさい」
「はい、お父様」
「どうですか?とても美しい娘でしょう。歳は殿下の一つ上ですが、釣り合いが取れているかと…」
「いいえ、殿下!うちの娘の方が!」
「いいえ、うちの方がーー!」
この場に娘を連れ立ってやって来た貴族達が、こぞってクリスに娘を紹介する。娘を連れて来なかった者達は、直ぐに娘を呼ぶ様にお付きの者に伝える。
(ある意味、清々しい位に魂胆が見え見えだ)
だが、それも仕方ない。
現在、王位継承一位はクリス王子である。このまま何事も無ければ、クリスは順当に次の王となる。そのクリスの婚約者になるという事は、未来の王妃になると言う事。もしも、上手く娘をクリスの婚約者にする事が出来れば、自身は未来の王の身内になれると言う事。
(だから、王子に必死に娘を紹介するその気持ちは分かる。でも、だからと言って今日の主役である私を放って王子にすり寄るのは、完全にアウトでしょ)
仮に娘をクリスの婚約者にする事が出来たとしても、直ぐに婚約破棄されるとサーシャは思った。
(王子の婚約者になると言う事は、未来の王妃になると言う事。それなのに、パーティーの主役を放って身分の高い者にすり寄るなんて礼儀に反する事をする親子は、国の母である王妃として相応しくないと思うけどな…)
何より、クリスのあの目。
(あの目は、未来の婚約者を探す目じゃない。あれは、家畜を見る目だ)
絶対に、目の前の親子達を煩く鳴き喚く動物だと思っているに違いない。
「こんな若輩者の私には勿体無いくらい、素敵なお嬢様達ばかりです。皆さん、小鳥の囀る様な素敵な声ですね。私は、その素敵な声を聞いているだけで天にも昇る気持ちです」
その褒め言葉に、娘達は頬を赤く染める。
王子に褒められるなど、名誉な事だ。
ーーしかし、サーシャには別の言葉に聞こえた。
『皆さん、ピグーの様な騒がしい声ですね。私は、その騒がしい声を聞いているだけで天に召されそうな気分です』…と。
だが、あながち間違いでは無いとサーシャは思っている。
(だって話している途中、ピグーを使った料理を何度も見ながら喋っていたもの…)
そんな風に、クリスを時折見ながら招待客への挨拶をしていたサーシャ。そして、ようやく全ての招待客が揃ったところでパーティーが始まった。
「これはクリス王子!お会い出来て光栄です!私は、クシュー子爵家当主ダゾンです。此方が、娘のミミーラで御座います。妻に似て、とても可愛らしい顔立ちをしておりまして」
「ふんっ!そなたの娘は、王子より5歳も歳上ではないか。殿下、お久しぶりです。先日城内にてお会いして以来ですな。今日は、ちょうど娘も来ておりまして。アリス、此方に来なさい」
「はい、お父様」
「どうですか?とても美しい娘でしょう。歳は殿下の一つ上ですが、釣り合いが取れているかと…」
「いいえ、殿下!うちの娘の方が!」
「いいえ、うちの方がーー!」
この場に娘を連れ立ってやって来た貴族達が、こぞってクリスに娘を紹介する。娘を連れて来なかった者達は、直ぐに娘を呼ぶ様にお付きの者に伝える。
(ある意味、清々しい位に魂胆が見え見えだ)
だが、それも仕方ない。
現在、王位継承一位はクリス王子である。このまま何事も無ければ、クリスは順当に次の王となる。そのクリスの婚約者になるという事は、未来の王妃になると言う事。もしも、上手く娘をクリスの婚約者にする事が出来れば、自身は未来の王の身内になれると言う事。
(だから、王子に必死に娘を紹介するその気持ちは分かる。でも、だからと言って今日の主役である私を放って王子にすり寄るのは、完全にアウトでしょ)
仮に娘をクリスの婚約者にする事が出来たとしても、直ぐに婚約破棄されるとサーシャは思った。
(王子の婚約者になると言う事は、未来の王妃になると言う事。それなのに、パーティーの主役を放って身分の高い者にすり寄るなんて礼儀に反する事をする親子は、国の母である王妃として相応しくないと思うけどな…)
何より、クリスのあの目。
(あの目は、未来の婚約者を探す目じゃない。あれは、家畜を見る目だ)
絶対に、目の前の親子達を煩く鳴き喚く動物だと思っているに違いない。
「こんな若輩者の私には勿体無いくらい、素敵なお嬢様達ばかりです。皆さん、小鳥の囀る様な素敵な声ですね。私は、その素敵な声を聞いているだけで天にも昇る気持ちです」
その褒め言葉に、娘達は頬を赤く染める。
王子に褒められるなど、名誉な事だ。
ーーしかし、サーシャには別の言葉に聞こえた。
『皆さん、ピグーの様な騒がしい声ですね。私は、その騒がしい声を聞いているだけで天に召されそうな気分です』…と。
だが、あながち間違いでは無いとサーシャは思っている。
(だって話している途中、ピグーを使った料理を何度も見ながら喋っていたもの…)
そんな風に、クリスを時折見ながら招待客への挨拶をしていたサーシャ。そして、ようやく全ての招待客が揃ったところでパーティーが始まった。
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