貴方の事を愛していました

ハルン

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想像もしていなかったルークのその言葉に、ミレーナは一瞬聞き間違いかと思った。そんなミレーナを見て、ルークは笑顔でもう一度繰り返した。

「ねぇ、ミレーナ。僕達、婚約しないかい?」
「こ、こん…」
「婚約。将来、結婚する事を約束した相手だよ」

それは知っている。
ミレーナだって、将来ルークと結婚する事を想像しなかった訳ではない。だが、幼くても貴族としての教育を受けているミレーナは、自身の結婚は家の繁栄の為にするのだと理解していた。だから、いきなりの婚約の話に戸惑った。

「な、なんでそんな急に…」

落ち着きの無いミレーナを見ながら、ルークは話出す。
「ミレーナにとっては急な話だよね。でも、僕は忙しくて会えなくなる前から考えていた事なんだ。僕の家のハイデン侯爵家と君のロードン伯爵家は、仲がいいだろう?」

その通りなので頷く。

「元々、事業関係で繋がりがあっだけれど僕達の婚約でそれをより強固に出来ればと思ってるんだ」

(嗚呼、これは政略結婚だわ…)

ズキンと胸が痛み、テーブルの下でギュッと手を握り締める。零れ落ちそうになる涙を堪えていると。

「ーーと言うのは、建前なんだ」
「えっ…?」
「本当は、僕がミレーナと婚約したかったからなんだ。確かに、さっき言った事は全部が嘘だとは言えない。けれど、僕はミレーナといるのが一番楽しい。だから、他の誰かの婚約者になる前にミレーナと婚約したいと思ったんだ」


ーー他の誰かの婚約者になる前に。


そこにどんな思惑があったにせよ、ルークがミレーナを誰かに取られる心配をして焦ったという事がミレーナにはとても嬉しかった。

「実は、リグル様には既に手紙で婚約の申し込みはしているんだ」

父は、ミレーナに婚約の事は何も言っていなかった。それは、反対しているからでは?

「そしたら、ミレーナの了承を得たなら婚約してもいいと言われていてね。ミレーナをもしかしたら僕より可愛がってるかもしれない両親にも、ミレーナが了承したらと言われているんだ」
「おじ様達が…」

ミレーナの脳裏に、会う度に可愛がってくれるルークの両親達が浮かんだ。

(例え理由がなんであれ、ルーク様と結婚出来る)

将来、見知らぬ誰かと結婚するより好きな相手と結婚したいと思うのは、幼いミレーナにしたら当然であった。

「私、ルーク様と婚約したいです!」
「本当かい?ありがとう、大切にするよ」

そう言って少し頬を染めて嬉しそうに話すルークは、今までで一番輝いて見えた。




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