貴方の事を愛していました

ハルン

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ーールークは、キャロラインが好きかも知れない。


そう思ったのには、勿論理由があった。
元々、この婚約は家同士の繋がりの為の関係である事だ。幼い頃ルークが言っていた、『ミレーナといるのが一番楽しい。だから、他の誰かの婚約者になる前にミレーナと婚約したい』と言った気持ちも本当だろう。だが、それだけで婚約出来るほど貴族の婚姻は簡単では無い。

(それに、ルークは私を大切にしてくれるけど…)

ルークは、ミレーナの婚約者として今まで誠実にミレーナに接して来た。それは疑いようが無い。
大切にしてもらってるのは、ミレーナ自身が一番よく分かってる。だが、ミレーナだって年頃の女性なのだ。態度だけでなく言葉にしてもらいたいと思うのは当然であった。


ーーだが、ミレーナはルークに好きや愛していると言われた事が一度も無かった。


親愛と恋情が別物だという事を、ルークに恋しているミレーナは知っていた。
ルークはミレーナに親愛を持っているのは確かだが、恋情を抱いているとは今のミレーナには到底思えなかった。デビュタントの時の馬車の中でルークにキスされた事は、年頃の男性ならそういう事をしたいと思うのは当然だろう。

「………だとしても、キャロライン様は結婚しているわ。そして、将来ルークと結婚するのは私」

ルークが浮気をしているかと言われたら微妙だ。
別に、ミレーナが冷遇されている訳でもなく今まで通り大切にしてもらっている。2人が秘密裏に会っているかと言われたら否だ。2人が会うのは殆どパートナー同伴の夜会でのみ。心ではキャロラインを思ってるのかも知らないが、それだけだ。

(けど、ルークがキャロライン様を好きかも知れないと思うとこんなにも胸が苦しい…)

誠実なルークは、決してミレーナに対して不誠実な事はしないと断言出来る。ならば、ミレーナのすべき事は唯一つ。

「ルークに私を好きになってもらえる様に、今まで以上に努力すればいいのよ」

現状、ルークとキャロラインが結ばれる事はあり得ない。何より、キャロラインがルークに恋情を抱いているとは思えない。キャロラインは、フィオール侯爵を愛しているのだから。

「よしっ!そうと決まれば…!」

ミレーナは、勢い良く立ち上がると部屋を飛び出す。すると、廊下の途中でラナとすれ違う。

「お嬢様っ!?貴族の女性が走ってはいけません!それに、どこに行くんですか!」
「マダムクレアの店よ!夕食前には戻るから!」
「ちょっ、お嬢様!」

ラナの声を無視して、ミレーナはマダムクレアの店へと向かったのだった。







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