前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!

ハルン

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動き始めた歯車

リュシルside

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「どうした!もう終わりか?」
「っ!まだお願いします!」

師匠に弾き飛ばされた剣を握り直し、再び走る。

「よし、今日は此処までだ」
「ハァハァ…。有難うございました」

日も傾いてきた頃、師匠が手を止め漸く今日の稽古が終わる。

「しかしどうした?少し前から焦り過ぎだぞ」

自覚はある。
最近は特に稽古を厳しくして貰っていた。実力に見合わない稽古で身体の至る所に痣が出来ている。

「…わかってます」

そう、原因は分かっている。

ーーヴォーグ・アルケミオン。

あの人の存在だ。

ヴォーグさんは人当たりの良い穏やかな人だ。それは俺もよく分かっている。誰に聞いても皆んなが彼を良い人だと言うだろう。実際にその通りだ。

なのに。
俺はあの人が嫌いだ。

初めて会った時からそうだった。
あの人を初めて見た時、俺はこの人が嫌いだ…と思った。初めは、自身より歳上の大人の様な彼にレムリアが取られてしまうからだと思っていた。

レムリア。
俺が小さい時からずっと好きな女の子。

そんな彼女が、子供の俺より歳上のあの人を好きになってしまう。だからあの人が嫌いなのだと。だがどんなに良い人だと知っても、レムリアが彼を好きでは無いと知っても。

『嫌い』

この想いは変わらなかった。
いや、大きくなるにつれどんどん強くなる。あの人に何かされたわけでは無い。どちらかといえば、よくして貰ってる方だと思う。それでもあの人の側にいるととても嫌な気持ちになる。

そんな時。
知り合いからレムリアとあの人が一緒にいる所を見た…と聞いた時、感じだ感情。

それは、恐怖。

まさかあの人を好きになったのか?そんな想いも少しはあった。だが1番に思ったのは、『彼女を守らなくては』。何故そんな事を思ったかは分からない。だけど気付いたら彼女にあの人に近付かないで欲しいと懇願していた。俺にはそんなこと言う資格がないのに彼女は妥協して聞いてくれた。

それから俺は師匠に稽古をさらに厳しくつけてもらう様になった。もし何かあった時、彼女を守れる様に。



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