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勘違いコロッケ
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夕方の極楽商店街は西からの淡い夕陽に照らされて、見るもの全てが橙色に映る。無数に立ち並ぶ商店からは時折、食べ物のいい匂いが漂ってきた。クラス替えをして、始業式を終えた僕は、友人である桐島薫と共に寄り道をしに来たのである。
「なぁ秦野、今年のクラスだと誰が一番可愛いと思う? 俺は断然、深田さんかなぁ! なんと言ってもあの落ち着いた雰囲気、堪んねぇよなぁ」
制服を崩して着用していて、校則に引っ掛かるほどの大量のアクセサリーを身につけている大分チャラい奴だが、こう見えて成績だけで見れば学年トップで運動も出来る奴なのだ。
「僕も深田さんかな、普通に美人だし。そんな事より僕は何故また桐島と同じクラスになったのかが不思議で仕方が無いよ」
「つれねぇなぁ、腐れ縁ってやつだろ? それに俺は中々嬉しかったぜ。なんせ今年は修学旅行もあるんだからよ! 知ってるか? 修学旅行で海にも行くらしいぜ?」
それは興味深いな。自然と深田さんの水着姿を想像してしまった事は内緒にしておこう⋯⋯。
「そうなのか、興味無いけど」
「はぁ? あれ、コロッケ屋さんの前に居るのって深田さんじゃないか?」
居るわけないだろ、と相槌を打ちながらも横目でコロッケ屋さんの方を見る。ただ店の前で立ち尽くす制服を着た女子高生が一人。その後ろ姿は、紛れもなく深田さんだ。
「ほ、ほんとだ。精肉店の前で何してるんだろう」
「ちょ、秦野。話しかけてこいよ! 困ってるかもしれないだろ」
こういう時だけ僕に押し付けるんだよな、なんて思いながらも近づいて話しかけようとする。声をかけようと思ったその時、彼女はコチラへ振り返った。
「秦野くん? どうしたのこんな所で」
「いや帰ってる時に見かけたからさ」
「え? なんだよ、秦野。お前いつから深田さんと話す仲になったんだ! 抜け駆けは狡いぞ!」
お前は少し黙ってろ、余計ややこしくなるから⋯⋯。まぁ、でも佐々木さんに買い物頼まれたとか、そんなとこだろ。
「えっと⋯⋯コロッケ食べたいなぁって思って来たんだけど、部屋に忘れちゃって⋯⋯。お願い! 秦野くん、百円貸して下さい! 家に帰ったら返すから」
彼女は手を合わせて、申し訳なさそうな顔で#懇願____#してきた。コロッケ食べたいなぁ、って可愛すぎかよ⋯⋯。僕はとりあえず財布を取り出して百円を彼女に手渡した。
「ありがとうね! それで、そっちの子は⋯⋯仮島くんだったかしら?」
「桐島だよ! いや、すみません桐島と申します」
この流れって、どっかで見たことあるようなネタだな。何気にこの2人は初めて話すんだよな、去年もクラス一緒だったのに。
「ごめんなさい、てっきりそう思ってて⋯⋯。今年もクラス一緒ね、宜しく」
「あ、はい、全然平気です。むしろ仮島でいいです⋯⋯!」
何言い出してるんだこのバカは。
「あのー、お嬢ちゃん達? そこだとお客さんの邪魔になっちゃうから避けてもらっていいかな?」
店主に言われるまで話に夢中で気がついていなかったが、割と周りの客からは顰蹙を買っていたらしい。後ろに並んでいるおばちゃんの鋭い眼差しが、それを物語っていた。このまま帰るのは更に迷惑だと思って、僕と桐島もコロッケを買って精肉店をあとにした。
「うんま! ここのコロッケ絶品だな、見かけによらず」
「最後の一言余計だけどな⋯⋯」
横目で深田さんを確認すると、コロッケに夢中になって桐島の話などまるで耳に入っていないようだ。そのちまちま食べている姿も、またギャップ萌えをさせる。
「じゃあ僕らはこれで」
気づけば、既に枯野荘に着いていた。夕陽を浴びた枯野荘は、いつもに増して輝きを放っている。
「僕らって。なんだよ、お前ら一緒に住んでるみたいじゃねぇか」
「いや、一緒に住んでるわけじゃないけど⋯⋯」
そう言えば、桐島にはまだ言ってないんだったな。なんと説明すれば丸く収まるか⋯⋯。
「一緒に住んでるようなものでしょ?」
ここでコロッケを食べ終わった深田さんが会話に参加してきた。しかも、桐島にさらに誤解を招くような言い方をして。
「え、ああ、あ、失礼しましたあ!」
目を大きく見開き唖然としている桐島は、ショックでそのまま走ってかえってしまった。これは明日面倒な事になるぞ⋯⋯、深田さんは不思議そうな顔をしているけど。
「ま、何とかなるか」
「あの子どうして走って帰っちゃったの?」
「知らないな⋯⋯」
こうして僕らは枯野荘に帰った。
「なぁ秦野、今年のクラスだと誰が一番可愛いと思う? 俺は断然、深田さんかなぁ! なんと言ってもあの落ち着いた雰囲気、堪んねぇよなぁ」
制服を崩して着用していて、校則に引っ掛かるほどの大量のアクセサリーを身につけている大分チャラい奴だが、こう見えて成績だけで見れば学年トップで運動も出来る奴なのだ。
「僕も深田さんかな、普通に美人だし。そんな事より僕は何故また桐島と同じクラスになったのかが不思議で仕方が無いよ」
「つれねぇなぁ、腐れ縁ってやつだろ? それに俺は中々嬉しかったぜ。なんせ今年は修学旅行もあるんだからよ! 知ってるか? 修学旅行で海にも行くらしいぜ?」
それは興味深いな。自然と深田さんの水着姿を想像してしまった事は内緒にしておこう⋯⋯。
「そうなのか、興味無いけど」
「はぁ? あれ、コロッケ屋さんの前に居るのって深田さんじゃないか?」
居るわけないだろ、と相槌を打ちながらも横目でコロッケ屋さんの方を見る。ただ店の前で立ち尽くす制服を着た女子高生が一人。その後ろ姿は、紛れもなく深田さんだ。
「ほ、ほんとだ。精肉店の前で何してるんだろう」
「ちょ、秦野。話しかけてこいよ! 困ってるかもしれないだろ」
こういう時だけ僕に押し付けるんだよな、なんて思いながらも近づいて話しかけようとする。声をかけようと思ったその時、彼女はコチラへ振り返った。
「秦野くん? どうしたのこんな所で」
「いや帰ってる時に見かけたからさ」
「え? なんだよ、秦野。お前いつから深田さんと話す仲になったんだ! 抜け駆けは狡いぞ!」
お前は少し黙ってろ、余計ややこしくなるから⋯⋯。まぁ、でも佐々木さんに買い物頼まれたとか、そんなとこだろ。
「えっと⋯⋯コロッケ食べたいなぁって思って来たんだけど、部屋に忘れちゃって⋯⋯。お願い! 秦野くん、百円貸して下さい! 家に帰ったら返すから」
彼女は手を合わせて、申し訳なさそうな顔で#懇願____#してきた。コロッケ食べたいなぁ、って可愛すぎかよ⋯⋯。僕はとりあえず財布を取り出して百円を彼女に手渡した。
「ありがとうね! それで、そっちの子は⋯⋯仮島くんだったかしら?」
「桐島だよ! いや、すみません桐島と申します」
この流れって、どっかで見たことあるようなネタだな。何気にこの2人は初めて話すんだよな、去年もクラス一緒だったのに。
「ごめんなさい、てっきりそう思ってて⋯⋯。今年もクラス一緒ね、宜しく」
「あ、はい、全然平気です。むしろ仮島でいいです⋯⋯!」
何言い出してるんだこのバカは。
「あのー、お嬢ちゃん達? そこだとお客さんの邪魔になっちゃうから避けてもらっていいかな?」
店主に言われるまで話に夢中で気がついていなかったが、割と周りの客からは顰蹙を買っていたらしい。後ろに並んでいるおばちゃんの鋭い眼差しが、それを物語っていた。このまま帰るのは更に迷惑だと思って、僕と桐島もコロッケを買って精肉店をあとにした。
「うんま! ここのコロッケ絶品だな、見かけによらず」
「最後の一言余計だけどな⋯⋯」
横目で深田さんを確認すると、コロッケに夢中になって桐島の話などまるで耳に入っていないようだ。そのちまちま食べている姿も、またギャップ萌えをさせる。
「じゃあ僕らはこれで」
気づけば、既に枯野荘に着いていた。夕陽を浴びた枯野荘は、いつもに増して輝きを放っている。
「僕らって。なんだよ、お前ら一緒に住んでるみたいじゃねぇか」
「いや、一緒に住んでるわけじゃないけど⋯⋯」
そう言えば、桐島にはまだ言ってないんだったな。なんと説明すれば丸く収まるか⋯⋯。
「一緒に住んでるようなものでしょ?」
ここでコロッケを食べ終わった深田さんが会話に参加してきた。しかも、桐島にさらに誤解を招くような言い方をして。
「え、ああ、あ、失礼しましたあ!」
目を大きく見開き唖然としている桐島は、ショックでそのまま走ってかえってしまった。これは明日面倒な事になるぞ⋯⋯、深田さんは不思議そうな顔をしているけど。
「ま、何とかなるか」
「あの子どうして走って帰っちゃったの?」
「知らないな⋯⋯」
こうして僕らは枯野荘に帰った。
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