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1.賢風寮
3.そして出会い
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そういうわけで進路を決めたんだけど、七星大学は私学のトップクラスで、まあまあ狭き門ってやつで。
自慢じゃねえけど成績は良い方だったんだけど、じいさんロスもあって、ちょいヤバ目でかなり頑張った。毎日十二時間くらい机にかじりついて、塾にも通ったし猛勉強したよ。勉強に一所懸命なってたら、じいさんの思い出とか飛ぶし考えねえで済むから、その方が楽だったつか。ぜってー一発合格してやるつうのもあったし。
理系や記憶科目はまあまあイケたんだけど、英語や現代国語、特に小論文はけっこう苦労した。したら親父が淡々とコツやなんか教えてくれたりして、そっから親父とも話すようになったり、なんてのもあったりしたけど、受験までの一年間は、マジできつかった。
んで受験終えたら一気に脱力して、ぼわ~っとしてたなー。
毎日仏壇には詣ってたけど、久しぶりにじっくり、じいさんと話したりして。てか仏壇に向かって一人でブツブツ言うだけなんだけど、葬式後はすぐ涙じんわりしてたのが少し吹っ切れてたつか。
うん、まあ、なんつか、……落ち着いてじいさんの思い出追えたつか、そゆ感じで。
じいさんが使ってた部屋はお袋の家具置き場になっちまってたし、そんなしみじみできねえ雰囲気ありつつ、ぼわ~としすぎて合格発表行くの忘れてメールで見た。
で、確認した瞬間、嬉しすぎて吠えた。
自然に涙でてくるし、どうしたらいいか分からないくらい嬉しくて、吠えながら暴れた。
お袋がおろおろして、妹に蹴られて、そんでやっと正気に戻って仏壇に行って、じいさんに報告して、すぐ大学に行って賢風寮に申込んだら、待ってたみたいに即刻入寮が許された。後で聞いたけど、本当は申し込みから入寮許可まで最低一週間はかかるんだって。
んで~、妹に「お兄ちゃんダサダサ! なんとかしなよ!」とか言われて、ついてってもらって服買ったり、じいさんの遺品からよさげな服見繕ったり、無精で伸ばしっぱなしだった髪は、生まれて初めて美容院行って、なんか変なテンションなって茶髪にしちゃったりして、浮かれてたなあ。
そんで4月1日。
その日のことは忘れない。いろんな意味で。
憧れの大学の正門前、小雨と強風の中到着した俺は、立ち止まって石造りの門に手を伸ばした。これから四年間ヨロシクの思いを込めて軽く叩く。
門はなにも言わない。
でもずっと昔から、じいさんが学生だった頃からあったんだ。
何千何万って学生が通るのを見てきた。じいさんもこの門通った、なんて思うと、なんだか嬉しくなって「よろしくな!」とか言いながらパシパシ叩いた。
少し濡れた石はごつごつと冷たい手触りで、その感触からじいさんのがっしりとした腕や節の太い指が連想されてきて、顔を引き締める。
(やっとここまできた。けどまだスタートラインだよな。こっからもっと頑張る)
自分に言い聞かせるように心の中で呟き、
「見てろよ、じいさん」
今度は小声で口に出して、大股でキャンパスに足を踏み入れる。前にじいさんとココに来たとき、色々教えてくれた声が聞こえるみてーな感じして、いちいち思い出しながら歩いてく。
デカくてゴツイ手でヨシヨシされんの大好きだった。デッカイ背中によじ登ったり、抱っことかもハンパねえ安定感で、めちゃ安心した。怒るときはめちゃ怖かったけど、そんなんマジで悪いことしたときだけだったし、いっつも優しくてカッコ良くて。『拓海』とか『たっくん』とか呼んでくれる低い声も大好きだった。
めちゃ優しいのに、デカくて顔もゴツイ感じだったし、響くような低い声とか、鋭い目つきとか、怖く見えたんだろな。近所のガキ連中に「カッコイイだろ」なんつって自慢したけど、なにげにビビってたの面白かったなあ。
なんつって、色々思い出しちまってちょいジーンとかしてたのは内緒な。
やがて見えてきた歴史ある法学部棟の横、細い道入って進むと、武骨な建物が視界に入る。
賢風寮。
コンクリート四階建てのそっけない外観にそぐわず、ここは中身も武骨な男子寮だ。
建物や土地は風聯会の持ち物で、大学とは全く別の組織なのだが、賢風寮は大学の敷地内にある。そんで女人禁制つう、いまどきあり得ねえ寮則とかあって、運営してる自治組織がガッチリ守るよう目を光らせてる。
つっても法学部棟の隣なんで、通学時間はとても短くて済むし、なにより寮費が安いから、寮生はそれなりにいるんだよ。
ネット使い放題、光熱費込みで月一万二千五百円。朝夕の寮食を希望すればプラス一万五千円。それ入れても三万行かないってすごくね? いまどきありえない格安なのだ。
その分、当然ながら今時あって欲しい設備には乏しい。昭和四十年代に立てられた建物でエアコンなんて無いし、セキュリティなんてもんは概念からしてありえないってレベル。まあ男ばかり、金のない学生ばかりだから、泥棒も来ないだろってことなんだろうけど。
それでも一応、鍵はかけれる玄関のガラス戸を開けると、見上げるような大男がいきなり吠えた。
「来たか! おまえ名前は!」
話に聞いてた入寮のイベントだ! と一気に嬉しくなる。
保守のリーダーが新寮生を恫喝してビビらせる。この為だけに保守責任者は一番デカくて声もデカい人がやるんだよ。んで、じいさんは初代の保守責任者だったんだ。
じいさんがデカくて声もデカかったから、それからずっと伝統になってるって聞いてる。
つまりこの人は保守のリーダーだ。賢風寮で一番ガタイのいい人だ。じいさんの後輩だ!
ワクワクしてきて、笑顔満面で返す。
「藤枝拓海です!!」
「よし、良い返事だ! そいつに聞いて荷物を探してから部屋に入れ!」
顎で指された先で、小柄で痩せたメガネの茶髪が手をヒラヒラさせている。
「フジエダタクミ君ね、よろしくー。靴はそこの下駄箱に入れても良いけど、取り違えとかあるから心配なら部屋まで持って上がって。荷物はあっちの続き間にあるから探して、先輩に部屋教わってね」
「はい!」
玄関の左側は天井まで木の棚になってて、けっこう靴が放り込まれてる。上の方が空いていたんで俺も一番上の段に靴を放り込んだ。あまり広くないロビーから右側に曲がると、和室の引き戸が開いてて、畳の上に段ボールや布団袋が山と積まれているのが見えた。そこにたむろする数人がコッチ見てる。
へえ、と思ってニヤニヤしちまう。
(保守のリーダーが大声出すのは、新寮生が来たって知らせる意味もあんのかな)
なんて思いつつ入って挨拶すると、先輩達が手分けして荷物を探してくれた。見つけた段ボール二つを重ねて持ち上げると、布団袋を持った先輩が「こっち、ついてきて」と先に立ってロビーへ戻り、中央の階段を上がっていった。二階の廊下を歩き、開いているドアを頭で指して先輩が言った。
「はいここ、213号が君の部屋ね。ベッドと机は早い者勝ちだから、好きなとこに陣取って良いよ」
「ういーっす」
部屋に入ると、既に窓際のベッドに荷物を置いて荷ほどきをしている奴がいた。もう一人、デスクに寄りかかって腕組みしてる奴もいて、そいつはコッチ見てにやにやしている。
「せんぱーい、なんか既に埋まってるみたいなんすけどー。窓際の一番よさげなとこ」
言いながらとりあえず段ボールを置くと、その隣に布団袋を下ろした先輩はニヤッと笑って「先越されたみたいだな」とだけ言い、すぐ戻っていった。
「うーす。なに、二人とも同室? 一番乗りだと思ったのにな」
とりあえず声をかけると、にやけたメガネが腕を組んだまま言う。
「残念だったねー。そっちのでっかいお兄さんの方が早かったんだよ」
ずいぶん軽い調子の声が終わらぬうちに、目もくれず段ボールを開いていた背中が、動きを止めて身体を起こし、振り返った。
背が高い。
見上げるってことは百九十ぐらいはある。
長身の男は無表情にこっち見た。
肩幅広く、身体の厚みもあって、がっしりとした体格は同じ年とは思えないほど大人の男の雰囲気だ。なのに髪型が妙にスッキリ、つーか張り切って床屋行きました、的な小学生みてーなダサダサの短髪、て感じなのがちぐはぐ。けどよく見ると、顎や口許にも少年ぽい幼さがちょい残ってる。
意志の強そうな一文字の濃い眉、その下でコッチに向けられた目は一重だが黒目が大きく眼光鋭くて、表情の窺えない顔はなんとなく迫力がある。
けどすぐ、そいつは少しだけ表情を和らげた。
口許がぎこちなく笑みを作り、目が細まって、頑張って笑ってますって感じになる。
「よろしく。ニュウダ タケロウです」
小さく頭を下げながら低めの声が響く。
その声を聞いた脳内で、なにかがスパークした。歩み寄り、両手を突き出して、勝手に彼の手を取り、上下に振ったところまで、全く無意識だった。
「よろしく! 俺、藤枝! 藤枝拓海!! えっと、ニュウダタケロウさん! ものすっごいヨロシク!!」
ニュウダタケロウは少し驚いたような顔をした。だけどデカくてゴツイ手が、なんだか離しがたくて、そのまま手を握って上下に振ってた。なんか分かんないけど、一気にバラ色な感じ!
(うわー、うわー、なにこれ、どんなミラクル?)
よろしくよろしく言いながら、ニュウダタケロウの顔を見つめる。全然意味不明にテンション上がって、なんか分かんない感じでニッコニコになってたんだけど、ニュウダは徐々に戸惑うように眉を寄せた。
するとクスクス笑っていたメガネがさりげなく近寄って来て無理矢理手を取って、ギュッと握ってきた。
自慢じゃねえけど成績は良い方だったんだけど、じいさんロスもあって、ちょいヤバ目でかなり頑張った。毎日十二時間くらい机にかじりついて、塾にも通ったし猛勉強したよ。勉強に一所懸命なってたら、じいさんの思い出とか飛ぶし考えねえで済むから、その方が楽だったつか。ぜってー一発合格してやるつうのもあったし。
理系や記憶科目はまあまあイケたんだけど、英語や現代国語、特に小論文はけっこう苦労した。したら親父が淡々とコツやなんか教えてくれたりして、そっから親父とも話すようになったり、なんてのもあったりしたけど、受験までの一年間は、マジできつかった。
んで受験終えたら一気に脱力して、ぼわ~っとしてたなー。
毎日仏壇には詣ってたけど、久しぶりにじっくり、じいさんと話したりして。てか仏壇に向かって一人でブツブツ言うだけなんだけど、葬式後はすぐ涙じんわりしてたのが少し吹っ切れてたつか。
うん、まあ、なんつか、……落ち着いてじいさんの思い出追えたつか、そゆ感じで。
じいさんが使ってた部屋はお袋の家具置き場になっちまってたし、そんなしみじみできねえ雰囲気ありつつ、ぼわ~としすぎて合格発表行くの忘れてメールで見た。
で、確認した瞬間、嬉しすぎて吠えた。
自然に涙でてくるし、どうしたらいいか分からないくらい嬉しくて、吠えながら暴れた。
お袋がおろおろして、妹に蹴られて、そんでやっと正気に戻って仏壇に行って、じいさんに報告して、すぐ大学に行って賢風寮に申込んだら、待ってたみたいに即刻入寮が許された。後で聞いたけど、本当は申し込みから入寮許可まで最低一週間はかかるんだって。
んで~、妹に「お兄ちゃんダサダサ! なんとかしなよ!」とか言われて、ついてってもらって服買ったり、じいさんの遺品からよさげな服見繕ったり、無精で伸ばしっぱなしだった髪は、生まれて初めて美容院行って、なんか変なテンションなって茶髪にしちゃったりして、浮かれてたなあ。
そんで4月1日。
その日のことは忘れない。いろんな意味で。
憧れの大学の正門前、小雨と強風の中到着した俺は、立ち止まって石造りの門に手を伸ばした。これから四年間ヨロシクの思いを込めて軽く叩く。
門はなにも言わない。
でもずっと昔から、じいさんが学生だった頃からあったんだ。
何千何万って学生が通るのを見てきた。じいさんもこの門通った、なんて思うと、なんだか嬉しくなって「よろしくな!」とか言いながらパシパシ叩いた。
少し濡れた石はごつごつと冷たい手触りで、その感触からじいさんのがっしりとした腕や節の太い指が連想されてきて、顔を引き締める。
(やっとここまできた。けどまだスタートラインだよな。こっからもっと頑張る)
自分に言い聞かせるように心の中で呟き、
「見てろよ、じいさん」
今度は小声で口に出して、大股でキャンパスに足を踏み入れる。前にじいさんとココに来たとき、色々教えてくれた声が聞こえるみてーな感じして、いちいち思い出しながら歩いてく。
デカくてゴツイ手でヨシヨシされんの大好きだった。デッカイ背中によじ登ったり、抱っことかもハンパねえ安定感で、めちゃ安心した。怒るときはめちゃ怖かったけど、そんなんマジで悪いことしたときだけだったし、いっつも優しくてカッコ良くて。『拓海』とか『たっくん』とか呼んでくれる低い声も大好きだった。
めちゃ優しいのに、デカくて顔もゴツイ感じだったし、響くような低い声とか、鋭い目つきとか、怖く見えたんだろな。近所のガキ連中に「カッコイイだろ」なんつって自慢したけど、なにげにビビってたの面白かったなあ。
なんつって、色々思い出しちまってちょいジーンとかしてたのは内緒な。
やがて見えてきた歴史ある法学部棟の横、細い道入って進むと、武骨な建物が視界に入る。
賢風寮。
コンクリート四階建てのそっけない外観にそぐわず、ここは中身も武骨な男子寮だ。
建物や土地は風聯会の持ち物で、大学とは全く別の組織なのだが、賢風寮は大学の敷地内にある。そんで女人禁制つう、いまどきあり得ねえ寮則とかあって、運営してる自治組織がガッチリ守るよう目を光らせてる。
つっても法学部棟の隣なんで、通学時間はとても短くて済むし、なにより寮費が安いから、寮生はそれなりにいるんだよ。
ネット使い放題、光熱費込みで月一万二千五百円。朝夕の寮食を希望すればプラス一万五千円。それ入れても三万行かないってすごくね? いまどきありえない格安なのだ。
その分、当然ながら今時あって欲しい設備には乏しい。昭和四十年代に立てられた建物でエアコンなんて無いし、セキュリティなんてもんは概念からしてありえないってレベル。まあ男ばかり、金のない学生ばかりだから、泥棒も来ないだろってことなんだろうけど。
それでも一応、鍵はかけれる玄関のガラス戸を開けると、見上げるような大男がいきなり吠えた。
「来たか! おまえ名前は!」
話に聞いてた入寮のイベントだ! と一気に嬉しくなる。
保守のリーダーが新寮生を恫喝してビビらせる。この為だけに保守責任者は一番デカくて声もデカい人がやるんだよ。んで、じいさんは初代の保守責任者だったんだ。
じいさんがデカくて声もデカかったから、それからずっと伝統になってるって聞いてる。
つまりこの人は保守のリーダーだ。賢風寮で一番ガタイのいい人だ。じいさんの後輩だ!
ワクワクしてきて、笑顔満面で返す。
「藤枝拓海です!!」
「よし、良い返事だ! そいつに聞いて荷物を探してから部屋に入れ!」
顎で指された先で、小柄で痩せたメガネの茶髪が手をヒラヒラさせている。
「フジエダタクミ君ね、よろしくー。靴はそこの下駄箱に入れても良いけど、取り違えとかあるから心配なら部屋まで持って上がって。荷物はあっちの続き間にあるから探して、先輩に部屋教わってね」
「はい!」
玄関の左側は天井まで木の棚になってて、けっこう靴が放り込まれてる。上の方が空いていたんで俺も一番上の段に靴を放り込んだ。あまり広くないロビーから右側に曲がると、和室の引き戸が開いてて、畳の上に段ボールや布団袋が山と積まれているのが見えた。そこにたむろする数人がコッチ見てる。
へえ、と思ってニヤニヤしちまう。
(保守のリーダーが大声出すのは、新寮生が来たって知らせる意味もあんのかな)
なんて思いつつ入って挨拶すると、先輩達が手分けして荷物を探してくれた。見つけた段ボール二つを重ねて持ち上げると、布団袋を持った先輩が「こっち、ついてきて」と先に立ってロビーへ戻り、中央の階段を上がっていった。二階の廊下を歩き、開いているドアを頭で指して先輩が言った。
「はいここ、213号が君の部屋ね。ベッドと机は早い者勝ちだから、好きなとこに陣取って良いよ」
「ういーっす」
部屋に入ると、既に窓際のベッドに荷物を置いて荷ほどきをしている奴がいた。もう一人、デスクに寄りかかって腕組みしてる奴もいて、そいつはコッチ見てにやにやしている。
「せんぱーい、なんか既に埋まってるみたいなんすけどー。窓際の一番よさげなとこ」
言いながらとりあえず段ボールを置くと、その隣に布団袋を下ろした先輩はニヤッと笑って「先越されたみたいだな」とだけ言い、すぐ戻っていった。
「うーす。なに、二人とも同室? 一番乗りだと思ったのにな」
とりあえず声をかけると、にやけたメガネが腕を組んだまま言う。
「残念だったねー。そっちのでっかいお兄さんの方が早かったんだよ」
ずいぶん軽い調子の声が終わらぬうちに、目もくれず段ボールを開いていた背中が、動きを止めて身体を起こし、振り返った。
背が高い。
見上げるってことは百九十ぐらいはある。
長身の男は無表情にこっち見た。
肩幅広く、身体の厚みもあって、がっしりとした体格は同じ年とは思えないほど大人の男の雰囲気だ。なのに髪型が妙にスッキリ、つーか張り切って床屋行きました、的な小学生みてーなダサダサの短髪、て感じなのがちぐはぐ。けどよく見ると、顎や口許にも少年ぽい幼さがちょい残ってる。
意志の強そうな一文字の濃い眉、その下でコッチに向けられた目は一重だが黒目が大きく眼光鋭くて、表情の窺えない顔はなんとなく迫力がある。
けどすぐ、そいつは少しだけ表情を和らげた。
口許がぎこちなく笑みを作り、目が細まって、頑張って笑ってますって感じになる。
「よろしく。ニュウダ タケロウです」
小さく頭を下げながら低めの声が響く。
その声を聞いた脳内で、なにかがスパークした。歩み寄り、両手を突き出して、勝手に彼の手を取り、上下に振ったところまで、全く無意識だった。
「よろしく! 俺、藤枝! 藤枝拓海!! えっと、ニュウダタケロウさん! ものすっごいヨロシク!!」
ニュウダタケロウは少し驚いたような顔をした。だけどデカくてゴツイ手が、なんだか離しがたくて、そのまま手を握って上下に振ってた。なんか分かんないけど、一気にバラ色な感じ!
(うわー、うわー、なにこれ、どんなミラクル?)
よろしくよろしく言いながら、ニュウダタケロウの顔を見つめる。全然意味不明にテンション上がって、なんか分かんない感じでニッコニコになってたんだけど、ニュウダは徐々に戸惑うように眉を寄せた。
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