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ゴブリン
しおりを挟む「まさか…これがゴブリンか…?」
多分そうだろう。家の窓から覗いて見た姿と体が一致している。
それよりもこいつ頭はどこに行ったんだ?
答えは簡単、俺が殴ったせいで頭が木っ端微塵に吹き飛んだのだ。
「すまないゴブリン……あまりの出来事で手が出てしまった……」
別に頭が吹き飛んだことには対して驚かない。びっくりする系は苦手でも、気持ち悪いのはかなり耐性がある。
さらに人間であっても雲竜が本気で顔を殴ればこのゴブリンと同じ未来を辿ることが直感的にわかっているからだ。
だからこそ彼を驚かそうとする人がいなかったことがせめてもの救いだった。
もし、雲竜を後ろから驚かすという勇敢な者がいれば、爆裂四散した死体の完成である。
だからこそ雲竜は毎日力の制御をしていたわけだ。もし制御が不完全であったなら、体育の授業で死人が出ていたことだろう。
「しかし……このゴブリンはどこから出てきたんだ?ドアが開いた形跡も無いし……」
俺は端から歩いてきたはずだ。となれば上の階にいたのか。このアパートは4階建てだ。こいつは4階から降りてきて、踊り場にいた俺を見つけて飛びかかってきたというところだろう。
結果的に死へのダイブとなってしまったが……
するとゴブリンの死体がキラキラ光ったと思うとその場から消えた。
「は?」
一瞬呆気にとられたが、これに似た現象を俺は見たことがある気がする。
「消えた?もしかしたら、ゲームみたいに倒せば消えるのか。アイテムを落とす わけではないみたいだが。」
また一つ賢くなったな。倒せば消える。
そしてゴブリンがいた場所を見つめながら思ったことを呟いた。
「上にまだおりそうだな。」
俺は下に降りるのではなく上に上がった行く。
4階に到着すると案の定いた。しかも3匹。
そいつらは何か食っていた。よく見てみると人間の手だった。住人の誰かの手だ。
「映画や漫画ではこんな光景よく見るが、実際この目で見てみると何とも胸糞悪いな。」
自分の口から発したとは思えないほど、言葉に怒気が籠っているのがわかる。
気持ち悪いとか怖いとかそんな気分は沸き起こらない。湧き上がっているのは純粋な怒りだ。
こんなに腹が立ったのは久しぶりだな。
今までなら我慢していた。それは人相手だからだ。
しかし今回の相手は人じゃない。
思う存分力を震える。
「ギギギィィィィィィィィ!!」
1匹が俺に気づいたのか襲いかかってきた。
だがこの程度怖くもなんともない。トレーラーが突っ込んできた時の方がまだ何倍も怖い。
そして飛びかかってきたゴブリンの頭を掴む。
「人の死体を弄ぶな」
そのまま頭を握り潰した。
そしてそのままゴブリンは光となって消えた。
「さて残りは2匹か……」
そのままゴブリンを睨み付けるとガタガタ震え始めた。まさかモンスターにモンスターを見つけたような目で見られるとは思わなかった。これはこれで新鮮だな。
そしてそのまま2匹のゴブリンは4階から飛び降り、蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。
「えぇ………、ゴブリンって普通逃げないんじゃないの?」
まさか びびられて逃げられるとは……
俺の方が怪物だって言いたいのかこの野郎。ブチ殺すぞ。
ひとまず殺された人に対して手を合わせて拝んでから俺はその場を離れた。
その後は特に誰も襲ってくることはなく、俺は無事にアパートから出ることが出来た。
そしてわかったことがもう一つ。
「俺の力、余裕で通じるな。」
自分の人外具合に少々驚いたが、通じないよりかはマシだと気持ちを切り替え、これからどうするか考え始めた。
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