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木のぼりと筋肉
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「そういえば、ルドガー様はルイ様に剣術などのご指導をされているのですか?」
エメリーンがふと疑問に思って聞いた質問にも、ルドガーは笑った。
「ルドガーで構いませぬ。奥様に様付けされるなんて、むず痒くてたまりませんからな。あと、わしは4歳の幼子に剣術など教えませんぞ」
「そうですか。答えていただいてありがとうございます。ルドガー」
そういうものなのかと、エメリーンは不思議に思った。なぜならアリサの弟のレイは、わずか2歳で小剣を握っていたからだ。1歳の頃から体力が有り余っていたのか、夜もなかなか眠らずにエメリーンの周りを歩き回っていたレイは、もしかしたら特殊だったのかもしれないが、比較対象がレイとルイだけでは、あまりにも情報が少なすぎる。
「もー。はやくっ!」
ぷんっと音が聞こえそうなくらいに頬を膨らませたルイの姿に、エメリーンは顔が笑ってしまう。ルドガーも楽しそうに口角が上がっている。
「はい、それじゃあ始めましょうか」
エメリーンが、ルイに木のぼりを教える。そんな突拍子もないことが許されたのは、あの反省文の効果とルイからの懇願に抗える大人がいなかったかららしい。だが貴族令嬢として育ったエメリーンに木のぼりができるのか、そんな当然の疑問があったからだろう。こうして兵士長であるルドガー、さらに兵士二人が見張りとして付き添うことになった。
兵士二人のうち一人は、エメリーンも面識がある。王都からの移動が一緒だった若い兵士で、おそらく20歳そこそこの男だ。バアルという名前のこの兵士は、見た目は細いがなかなか強いらしく、馬車の中でマーサが「バアルがいるので、多少の盗賊や魔物なら問題ありませんよ」と言っていた。アリサの記憶が戻った今なら、その言葉が本当だったのだと分かる。おそらくバアルは、兵士長であるルドガーの次くらいに強い。
もう一人の兵士は、20代後半くらいのセイディという女性兵士だ。金髪茶眼でビキニアーマーでさえ着こなせそうな美しい筋肉の持ち主は、なぜだか分からないがエメリーンに鋭い眼差しを向けている。
「じゃあ、まず見本を見せますね」
前回は泣いていたせいもあって、エメリーンの木のぼりの技術など何一つ見ていなかったであろうルイに、今度はしっかりと見ていてほしいと、エメリーンは少しゆっくりと木に登ってみせた。
「うわあ」と嬉しそうな顔をしたルイの後ろ、バアルとセイディが目を見開いている。少し大げさなのではないかと首を傾けたエメリーンは、兵士長のルドガーも二人とよく似た表情をしていることに気が付いた。
――兵士たちは木のぼりが苦手なのかしら?
登ったときと同様にするすると木から下りたエメリーンに、ルイが嬉しそうに駆け寄ってくる。
「すごいすごい! じゃあぼくもやってみるね」
「あ、ルイ様はこっちの木からのぼってみましょうか」
兵士たちが揃って固まっているのを横目に見ながら、エメリーンは自身が登った大木ではなく、子供にも登れそうな小枝が多い木を指さすと、ルイが素直に頷いた。
「うん、わかった。えへへ、あっちの木はおおきいもんね」
「うーんと」と、ルイがこれから登る木を見上げている。その様子にエメリーンは感心した。ルイはエメリーンのしたことを、しっかりと見て理解している。
「そうですね。どこからどうやって登っていくのか、最初に全体を見て確認するのはとても正しいです」
上までじっと見つめた後、目を閉じたルイの姿にエメリーンは笑みこぼれた。
「ええ、そうです。目を閉じたら、さっき見た木を登るルイ様の姿を思い浮かべてください。右手をどこに置くのか、左手をどうするのか、右足、左足、どうやって登るのか、一つずつ想像してみてくださいね」
しばらく経って、目を開けたルイは困ったようにエメリーンを振り返った。
「ルイ様、どうしましたか?」
「あのね、いっこめのえだまでしか、のぼれなかった」
「まあ」
ルイは本当に頭が良い子供なのだと、エメリーンは改めて思う。自分が木に登る姿を、正しくイメージできている。それは4歳の子供にそうそうできることではない。だがエメリーンが教えるのはその先だ。その想像を超えていくことにこそ意味がある。
「ルイ様、では実際にやってみましょうか」
「うん」
枝を一つ登る。それはそんなに危険なことでも困難なことでもない。すっと登って、ルイは次の枝を見た。一つ目の枝に比べると、手がぎりぎり届くかどうかという高さにあるその枝を、ルイは今の自分では登れないと思ったのだ。
「ではルイ様、そこで目を閉じてください」
「え? ……わかった」
「いいですね。それでは次の枝についてもう一度、どうやって登るのか思い浮かべてください。さっき、私が大きな木に登ったときのことも思い出して」
「うん。……あれ? のぼれる?」
目を開けてきょとんとしているルイに、エメリーンは力強く答えた。
「ええ、登れます。登ってみましょうか」
もしものことがあったとしても、エメリーンの手が届く範囲だ。だがエメリーンは、もしものことなど起こらないと確信していた。
するりともう一段、手をしっかり肘から伸ばすことで危なげなく枝を登ったルイが、やり遂げた高揚感に頬を赤く染めている。
「登れましたね、ルイ様」
「うん!」
「ではルイ様、今日はここまでです」
「ええ?」
もう一つ上の枝をと、見上げたルイをエメリーンが留める。今のルイでもきっとこの木の天辺までは登れるだろうが、今日はもう十分だとエメリーンは判断した。
「そこから、ぴょんと飛んでください」
「え?」
「私が受け止めます。絶対大丈夫ですから」
両手を広げたエメリーンを見て、ルイは一瞬も躊躇うことなく、枝から飛び降りた。ぎゅうとエメリーンを抱きしめるルイの温かさに、エメリーンは頬が緩んだ。
「よくできましたね」
「うん!」
ルイの表情は、あの日、木に登れずに泣いていた子供のものとは変わっている。その瞳の輝きまでもが、まるで違うのだ。
「ルイ様はもうこの木の天辺まで登れますよ」
「ええ? そうなの?」
エメリーンの言葉にルイが不思議そうな顔をしている。だったらなぜ下りろと言ったのか、分からなかったのだろう。
「でもルイ様は、先にもう少し力をつけた方がいいですね」
ルイを地面に下した後、肘から上を曲げて、エメリーンは自身の筋肉のなさにも気が付いた。
――そうだった。私の腕も細すぎるわね。
「私もですけどね」と言うと、エメリーンと同じように肘から上を曲げていたルイが笑った。
「ちからって、ルドガーみたいに?」
「そうですね。あそこまででなくてもいいので、私もルイ様にも力ーー筋力が必要です」
「ん、と。きんりょくがなくても、木にはのぼれるのに?」
やはり賢い子供だと思いながら、エメリーンは頷く。
「ええ、必要です」
ルイは少し考える様子を見せたが、エメリーンに屈託のない笑顔を見せた。
「わかった。がんばる」
「ええ、頑張りましょう。私も頑張りますね」
もう一度、肘を曲げてむんっと腕に力を入れてみせると、ルイが無邪気に笑った。やはりエメリーンの腕にも、筋肉がほとんどない。
「じゃあ、ルイ様。今度は筋力トレーニングを一緒にしましょう」
「うん! わかったー!」
まるでいたずらっ子のように元気に答えたルイの姿に、エメリーンはもちろん、兵士たちまでもが眩しそうに目を細めた。
エメリーンがふと疑問に思って聞いた質問にも、ルドガーは笑った。
「ルドガーで構いませぬ。奥様に様付けされるなんて、むず痒くてたまりませんからな。あと、わしは4歳の幼子に剣術など教えませんぞ」
「そうですか。答えていただいてありがとうございます。ルドガー」
そういうものなのかと、エメリーンは不思議に思った。なぜならアリサの弟のレイは、わずか2歳で小剣を握っていたからだ。1歳の頃から体力が有り余っていたのか、夜もなかなか眠らずにエメリーンの周りを歩き回っていたレイは、もしかしたら特殊だったのかもしれないが、比較対象がレイとルイだけでは、あまりにも情報が少なすぎる。
「もー。はやくっ!」
ぷんっと音が聞こえそうなくらいに頬を膨らませたルイの姿に、エメリーンは顔が笑ってしまう。ルドガーも楽しそうに口角が上がっている。
「はい、それじゃあ始めましょうか」
エメリーンが、ルイに木のぼりを教える。そんな突拍子もないことが許されたのは、あの反省文の効果とルイからの懇願に抗える大人がいなかったかららしい。だが貴族令嬢として育ったエメリーンに木のぼりができるのか、そんな当然の疑問があったからだろう。こうして兵士長であるルドガー、さらに兵士二人が見張りとして付き添うことになった。
兵士二人のうち一人は、エメリーンも面識がある。王都からの移動が一緒だった若い兵士で、おそらく20歳そこそこの男だ。バアルという名前のこの兵士は、見た目は細いがなかなか強いらしく、馬車の中でマーサが「バアルがいるので、多少の盗賊や魔物なら問題ありませんよ」と言っていた。アリサの記憶が戻った今なら、その言葉が本当だったのだと分かる。おそらくバアルは、兵士長であるルドガーの次くらいに強い。
もう一人の兵士は、20代後半くらいのセイディという女性兵士だ。金髪茶眼でビキニアーマーでさえ着こなせそうな美しい筋肉の持ち主は、なぜだか分からないがエメリーンに鋭い眼差しを向けている。
「じゃあ、まず見本を見せますね」
前回は泣いていたせいもあって、エメリーンの木のぼりの技術など何一つ見ていなかったであろうルイに、今度はしっかりと見ていてほしいと、エメリーンは少しゆっくりと木に登ってみせた。
「うわあ」と嬉しそうな顔をしたルイの後ろ、バアルとセイディが目を見開いている。少し大げさなのではないかと首を傾けたエメリーンは、兵士長のルドガーも二人とよく似た表情をしていることに気が付いた。
――兵士たちは木のぼりが苦手なのかしら?
登ったときと同様にするすると木から下りたエメリーンに、ルイが嬉しそうに駆け寄ってくる。
「すごいすごい! じゃあぼくもやってみるね」
「あ、ルイ様はこっちの木からのぼってみましょうか」
兵士たちが揃って固まっているのを横目に見ながら、エメリーンは自身が登った大木ではなく、子供にも登れそうな小枝が多い木を指さすと、ルイが素直に頷いた。
「うん、わかった。えへへ、あっちの木はおおきいもんね」
「うーんと」と、ルイがこれから登る木を見上げている。その様子にエメリーンは感心した。ルイはエメリーンのしたことを、しっかりと見て理解している。
「そうですね。どこからどうやって登っていくのか、最初に全体を見て確認するのはとても正しいです」
上までじっと見つめた後、目を閉じたルイの姿にエメリーンは笑みこぼれた。
「ええ、そうです。目を閉じたら、さっき見た木を登るルイ様の姿を思い浮かべてください。右手をどこに置くのか、左手をどうするのか、右足、左足、どうやって登るのか、一つずつ想像してみてくださいね」
しばらく経って、目を開けたルイは困ったようにエメリーンを振り返った。
「ルイ様、どうしましたか?」
「あのね、いっこめのえだまでしか、のぼれなかった」
「まあ」
ルイは本当に頭が良い子供なのだと、エメリーンは改めて思う。自分が木に登る姿を、正しくイメージできている。それは4歳の子供にそうそうできることではない。だがエメリーンが教えるのはその先だ。その想像を超えていくことにこそ意味がある。
「ルイ様、では実際にやってみましょうか」
「うん」
枝を一つ登る。それはそんなに危険なことでも困難なことでもない。すっと登って、ルイは次の枝を見た。一つ目の枝に比べると、手がぎりぎり届くかどうかという高さにあるその枝を、ルイは今の自分では登れないと思ったのだ。
「ではルイ様、そこで目を閉じてください」
「え? ……わかった」
「いいですね。それでは次の枝についてもう一度、どうやって登るのか思い浮かべてください。さっき、私が大きな木に登ったときのことも思い出して」
「うん。……あれ? のぼれる?」
目を開けてきょとんとしているルイに、エメリーンは力強く答えた。
「ええ、登れます。登ってみましょうか」
もしものことがあったとしても、エメリーンの手が届く範囲だ。だがエメリーンは、もしものことなど起こらないと確信していた。
するりともう一段、手をしっかり肘から伸ばすことで危なげなく枝を登ったルイが、やり遂げた高揚感に頬を赤く染めている。
「登れましたね、ルイ様」
「うん!」
「ではルイ様、今日はここまでです」
「ええ?」
もう一つ上の枝をと、見上げたルイをエメリーンが留める。今のルイでもきっとこの木の天辺までは登れるだろうが、今日はもう十分だとエメリーンは判断した。
「そこから、ぴょんと飛んでください」
「え?」
「私が受け止めます。絶対大丈夫ですから」
両手を広げたエメリーンを見て、ルイは一瞬も躊躇うことなく、枝から飛び降りた。ぎゅうとエメリーンを抱きしめるルイの温かさに、エメリーンは頬が緩んだ。
「よくできましたね」
「うん!」
ルイの表情は、あの日、木に登れずに泣いていた子供のものとは変わっている。その瞳の輝きまでもが、まるで違うのだ。
「ルイ様はもうこの木の天辺まで登れますよ」
「ええ? そうなの?」
エメリーンの言葉にルイが不思議そうな顔をしている。だったらなぜ下りろと言ったのか、分からなかったのだろう。
「でもルイ様は、先にもう少し力をつけた方がいいですね」
ルイを地面に下した後、肘から上を曲げて、エメリーンは自身の筋肉のなさにも気が付いた。
――そうだった。私の腕も細すぎるわね。
「私もですけどね」と言うと、エメリーンと同じように肘から上を曲げていたルイが笑った。
「ちからって、ルドガーみたいに?」
「そうですね。あそこまででなくてもいいので、私もルイ様にも力ーー筋力が必要です」
「ん、と。きんりょくがなくても、木にはのぼれるのに?」
やはり賢い子供だと思いながら、エメリーンは頷く。
「ええ、必要です」
ルイは少し考える様子を見せたが、エメリーンに屈託のない笑顔を見せた。
「わかった。がんばる」
「ええ、頑張りましょう。私も頑張りますね」
もう一度、肘を曲げてむんっと腕に力を入れてみせると、ルイが無邪気に笑った。やはりエメリーンの腕にも、筋肉がほとんどない。
「じゃあ、ルイ様。今度は筋力トレーニングを一緒にしましょう」
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