23 / 155
はしたない辺境伯夫人と三連休
しおりを挟む
せっかくルイと楽しく遊んでいたのに、とエメリーンが腹を立てているのは、ルイが目に見えて落ち込んでいるからだ。
「すぐに、かべからおりて、あいさつできなかった」
ルイががっかりすることなど何もないとエメリーンは思う。壁に登っていた辺境伯子息より、二階の窓から入ってくる辺境伯夫人の方がよっぽど非常識だ。
「下りてからしっかり綺麗なお辞儀が出来ていたから大丈夫ですよ」
「そうかな?」
「ええ。立派なお辞儀でした」
えへへと嬉しそうに笑っていたルイが、「あ」と何かに気が付いたように声を上げた。ルイに座るように促されてエメリーンが身を屈めると、エメリーンの頭の上の葉っぱをルイが取ってくれた。
「まあ、ルイ様、ありがとうございます。……ルイ様、私は頭に葉っぱを乗せたまま、旦那様にご挨拶してしまったのですね」
困ったわ、とおどけたようにエメリーンが言うと、ルイがくすくすと笑った。
「はしたない?」
「ええ、その通りですわ。ルイ様、私ってばとてもはしたない、ですね」
二人揃ってくすくすと笑いながら、エメリーンはルイに笑顔が戻ったことに安堵していた。エメリーンは今来た方を振り返って、ヒューバートの様子を思い返した。
――怪しんでいたかしら?
ヒューバートはとにかくずっと驚きっぱなしのようで、その心の内がエメリーンには分からなかった。
――煩わしいわね。
いっそヒューバートと関わらずに済めばいいのに、とエメリーンは思っている。ここ最近、ルイや使用人たちと過ごすのがとても快適だった分、余計な波風を立てることが確定しているヒューバートの存在が、正直に言って心底面倒くさい。
――まあ、そうも言っていられないことくらい、分かっているけど。
相手は辺境伯だ。そしてエメリーンの夫で、ルイの父親でもある。関わらないことなど絶対に無理だろう。
――なるべく関わらないで済みますように。
そんなエメリーンの希望はもちろん叶わず、エメリーンが自らヒューバートのところへ突っ込んでいくことになるのは、その翌日のことだった。
向かっ腹を立てたエメリーンが、わざとダンダンダンと廊下を踏み鳴らしながらヒューバートの執務室へ向かっているのは、怒りが抑えられないからだ。こんなに怒っているのは一体いつ以来のことだろう。そんなことを思ったエメリーンだが、両親――オルクス子爵と子爵夫人に怒った時だから割と最近だったと気が付いて、少し怒りが分散した。
ゴンゴンゴン
ノックの音が強すぎて変な響きになっているが、エメリーンの怒りはまだキープされている。
――こんなことで収まるような怒りじゃないわよ。
ゴンゴンゴン ゴンゴンゴン ゴンゴンゴンゴンゴンッ
激しく鳴り響くノックの音に、廊下を歩いていた使用人たちが集まってきてしまった。
「あの、奥様?」
誰かに呼ばれたのか、執事長がエメリーンに声を掛けた。
「旦那様はその……外出中、でして」
「外出中? どこへ?」
「ど、どちらというのは、その」
冷静沈着が服を着ているような、と内心評価していた執事の挙動不審さに、エメリーンの直感が告げた。
「女?」
「ひっ」と声を上げたのは、目の前の執事長ではなく後方の侍女だった。マーサと一緒にいるところを何度か見かけたことがある、セイラという名前の侍女だ。
「セイラ、何か知っているのかしら?」
首からゆっくりと振り返ったエメリーンの姿に、追加で上がった悲鳴の中には、「ぎゃっ」という野太い声も含まれていた。
「いえ、私は知りません。本当です。旦那様が今日どなたのところに行ったのか、さっぱり分かりません。本当です。本当なんです」
なおも「本当です」、と繰り返すセイラは涙目だ。だがエメリーンは、セイラの言葉の意味を正しく理解した。
「そう。今日どこに行ったのかは分からないけど、行きそうなところは何ヶ所か分かる、ということで良いかしら?」
セイラへの質問に対し、「ひっ」と息を呑むような悲鳴を上げたのは執事長だ。エメリーンは今度は首だけを動かして執事長に微笑み、「旦那様はどこかしら?」と低い声で聞いた。
「は、その、ですが、う、その……」
呻くような苦しげな様子で、執事長が助けを求めるように視線を彷徨わせるが、使用人たちは自分がターゲットにならないようにと思っているのか、揃って顔を逸らしている。
――やりすぎかしら。執事長たちには何も罪はないものね。
「……言ってしまいなさい。私に命令されたと言えば、あなたたちに迷惑を掛けることもないでしょう」
先ほどまで駄々洩れになっていた怒りを消して静かに語りかけると、執事長がようやくホッと息を吐いた。
「セイラも、ごめんなさいね。あなたたちに怒っているんじゃないのよ」
「大丈夫、です。ちょっと、びっくりしただけ、です」
使用人たちの中から、「ちょっとじゃなかったよな」、「怖すぎるよな」という囁きが聞こえてきたが、それだけ場が落ち着いたのだと、エメリーンは良いように解釈した。
「じゃあ、旦那様が会っていそうな女性について、何か情報がある人は教えて。そうね、情報料の代わりと言っては何だけど、教えてもらった情報先に旦那様がいた人に三連休をあげる、っていうのはどうかしら?」
「「「えっ、三連休?」」」
可能かどうかを確認するために、エメリーンが執事長をチラリを見ると、執事長はしっかりと頷いた。
「ええ、問題ありません」
「ありませんが」と、今度は執事長がエメリーンをチラリと見た。
「それには私も含まれるでしょうか」
名乗りを上げた執事長に、使用人たちから「ずるいぞ」「それはない」と不満の声が上がり、エメリーンは思わず吹き出して笑ってしまった。
「ええ、確かにそれはずるいかもね。申し訳ないけれど、今回はあなたの参戦はなし、よ」
「はぁ。仕方ありませんね」
少しだけ残念そうな顔をしたものの、今回はと言ったことで執事長も納得したらしい。
それからは執事長が中心となって、使用人たちの情報を書き留めていった。どうやら執事長は参戦できないということで、今回は自身の情報を出さないようだが、それでも特に問題ないほどたくさんの情報が出てきた。
「有力そうなのは、これかしらね」
エメリーンは集まった情報を見つめて、辺境伯領の中心街にある高級宿屋の一つを指さした。ヒューバートが王都に行く前に入り浸っていた宿屋で、未亡人の女主人がいるらしい。噂となっていたのは、その女主人だけではなく、近隣のパン屋の娘や宝飾店の夫人もだが、相手が誰であってもこの高級宿屋を使用している可能性は高いとエメリーンは目星をつけたのだ。
「よっしゃ、俺の情報!」
「まだそこにいるかは分からないわ!」
三連休を巡って使用人たちの闘いの炎は燃えているが、本当の闘いはこれからだと思ってエメリーンがくつりと笑うと、その笑みを見ていた使用人たちからは「うわあ」と小さな悲鳴が上がった。
「すぐに、かべからおりて、あいさつできなかった」
ルイががっかりすることなど何もないとエメリーンは思う。壁に登っていた辺境伯子息より、二階の窓から入ってくる辺境伯夫人の方がよっぽど非常識だ。
「下りてからしっかり綺麗なお辞儀が出来ていたから大丈夫ですよ」
「そうかな?」
「ええ。立派なお辞儀でした」
えへへと嬉しそうに笑っていたルイが、「あ」と何かに気が付いたように声を上げた。ルイに座るように促されてエメリーンが身を屈めると、エメリーンの頭の上の葉っぱをルイが取ってくれた。
「まあ、ルイ様、ありがとうございます。……ルイ様、私は頭に葉っぱを乗せたまま、旦那様にご挨拶してしまったのですね」
困ったわ、とおどけたようにエメリーンが言うと、ルイがくすくすと笑った。
「はしたない?」
「ええ、その通りですわ。ルイ様、私ってばとてもはしたない、ですね」
二人揃ってくすくすと笑いながら、エメリーンはルイに笑顔が戻ったことに安堵していた。エメリーンは今来た方を振り返って、ヒューバートの様子を思い返した。
――怪しんでいたかしら?
ヒューバートはとにかくずっと驚きっぱなしのようで、その心の内がエメリーンには分からなかった。
――煩わしいわね。
いっそヒューバートと関わらずに済めばいいのに、とエメリーンは思っている。ここ最近、ルイや使用人たちと過ごすのがとても快適だった分、余計な波風を立てることが確定しているヒューバートの存在が、正直に言って心底面倒くさい。
――まあ、そうも言っていられないことくらい、分かっているけど。
相手は辺境伯だ。そしてエメリーンの夫で、ルイの父親でもある。関わらないことなど絶対に無理だろう。
――なるべく関わらないで済みますように。
そんなエメリーンの希望はもちろん叶わず、エメリーンが自らヒューバートのところへ突っ込んでいくことになるのは、その翌日のことだった。
向かっ腹を立てたエメリーンが、わざとダンダンダンと廊下を踏み鳴らしながらヒューバートの執務室へ向かっているのは、怒りが抑えられないからだ。こんなに怒っているのは一体いつ以来のことだろう。そんなことを思ったエメリーンだが、両親――オルクス子爵と子爵夫人に怒った時だから割と最近だったと気が付いて、少し怒りが分散した。
ゴンゴンゴン
ノックの音が強すぎて変な響きになっているが、エメリーンの怒りはまだキープされている。
――こんなことで収まるような怒りじゃないわよ。
ゴンゴンゴン ゴンゴンゴン ゴンゴンゴンゴンゴンッ
激しく鳴り響くノックの音に、廊下を歩いていた使用人たちが集まってきてしまった。
「あの、奥様?」
誰かに呼ばれたのか、執事長がエメリーンに声を掛けた。
「旦那様はその……外出中、でして」
「外出中? どこへ?」
「ど、どちらというのは、その」
冷静沈着が服を着ているような、と内心評価していた執事の挙動不審さに、エメリーンの直感が告げた。
「女?」
「ひっ」と声を上げたのは、目の前の執事長ではなく後方の侍女だった。マーサと一緒にいるところを何度か見かけたことがある、セイラという名前の侍女だ。
「セイラ、何か知っているのかしら?」
首からゆっくりと振り返ったエメリーンの姿に、追加で上がった悲鳴の中には、「ぎゃっ」という野太い声も含まれていた。
「いえ、私は知りません。本当です。旦那様が今日どなたのところに行ったのか、さっぱり分かりません。本当です。本当なんです」
なおも「本当です」、と繰り返すセイラは涙目だ。だがエメリーンは、セイラの言葉の意味を正しく理解した。
「そう。今日どこに行ったのかは分からないけど、行きそうなところは何ヶ所か分かる、ということで良いかしら?」
セイラへの質問に対し、「ひっ」と息を呑むような悲鳴を上げたのは執事長だ。エメリーンは今度は首だけを動かして執事長に微笑み、「旦那様はどこかしら?」と低い声で聞いた。
「は、その、ですが、う、その……」
呻くような苦しげな様子で、執事長が助けを求めるように視線を彷徨わせるが、使用人たちは自分がターゲットにならないようにと思っているのか、揃って顔を逸らしている。
――やりすぎかしら。執事長たちには何も罪はないものね。
「……言ってしまいなさい。私に命令されたと言えば、あなたたちに迷惑を掛けることもないでしょう」
先ほどまで駄々洩れになっていた怒りを消して静かに語りかけると、執事長がようやくホッと息を吐いた。
「セイラも、ごめんなさいね。あなたたちに怒っているんじゃないのよ」
「大丈夫、です。ちょっと、びっくりしただけ、です」
使用人たちの中から、「ちょっとじゃなかったよな」、「怖すぎるよな」という囁きが聞こえてきたが、それだけ場が落ち着いたのだと、エメリーンは良いように解釈した。
「じゃあ、旦那様が会っていそうな女性について、何か情報がある人は教えて。そうね、情報料の代わりと言っては何だけど、教えてもらった情報先に旦那様がいた人に三連休をあげる、っていうのはどうかしら?」
「「「えっ、三連休?」」」
可能かどうかを確認するために、エメリーンが執事長をチラリを見ると、執事長はしっかりと頷いた。
「ええ、問題ありません」
「ありませんが」と、今度は執事長がエメリーンをチラリと見た。
「それには私も含まれるでしょうか」
名乗りを上げた執事長に、使用人たちから「ずるいぞ」「それはない」と不満の声が上がり、エメリーンは思わず吹き出して笑ってしまった。
「ええ、確かにそれはずるいかもね。申し訳ないけれど、今回はあなたの参戦はなし、よ」
「はぁ。仕方ありませんね」
少しだけ残念そうな顔をしたものの、今回はと言ったことで執事長も納得したらしい。
それからは執事長が中心となって、使用人たちの情報を書き留めていった。どうやら執事長は参戦できないということで、今回は自身の情報を出さないようだが、それでも特に問題ないほどたくさんの情報が出てきた。
「有力そうなのは、これかしらね」
エメリーンは集まった情報を見つめて、辺境伯領の中心街にある高級宿屋の一つを指さした。ヒューバートが王都に行く前に入り浸っていた宿屋で、未亡人の女主人がいるらしい。噂となっていたのは、その女主人だけではなく、近隣のパン屋の娘や宝飾店の夫人もだが、相手が誰であってもこの高級宿屋を使用している可能性は高いとエメリーンは目星をつけたのだ。
「よっしゃ、俺の情報!」
「まだそこにいるかは分からないわ!」
三連休を巡って使用人たちの闘いの炎は燃えているが、本当の闘いはこれからだと思ってエメリーンがくつりと笑うと、その笑みを見ていた使用人たちからは「うわあ」と小さな悲鳴が上がった。
1,100
あなたにおすすめの小説
神具のクワで異世界開拓!〜過労死SE、呪われた荒野を極上農園に変えてエルフや獣人と美味しいスローライフ〜
黒崎隼人
ファンタジー
ブラック企業で過労死したシステムエンジニアの茅野蓮は、豊穣の女神アリアによって剣と魔法のファンタジー世界へ転生する。
彼に与えられた使命は、呪われた「嘆きの荒野」を開拓し、全ての種族が手を取り合える理想郷を築くこと。
女神から授かったチート神具「ガイアの聖クワ」を一振りすれば、枯れた大地は瞬時に極上の黒土へと変わり、前世の知識と魔法の収納空間を駆使して、あっという間に規格外の美味しい作物を育て上げていく。
絶品の「ポトフ」で飢えたエルフの少女を救ったことを皮切りに、訳ありの白狼族の女戦士、没落した元公爵令嬢、故郷を失った天狐の巫女、人間に囚われていた翼人族の少女など、行き場を失った魅力的なヒロインたちが次々と彼の農園に集まってくる。
蓮が作る「醤油」や「マヨネーズ」などの未知の調味料や絶品料理は、瞬く間に世界中の胃袋を掴み、小さな農園はいつしか巨大な経済網を持つ最強の都市国家へと発展していく!
迫り来る大商会の圧力も、大国の軍勢も、さらには魔王軍の侵攻すらも、蓮は「美味しいご飯」と「農業チート」で平和的に解決してしまう。
これは、一本のクワを握りしめた心優しい青年が、傷ついた仲間たちと共に美味しい食卓を囲みながら、世界一豊かで幸せな国家「アルカディア連邦」を創り上げるまでの、奇跡と豊穣の異世界スローライフ!
過労死して転生したので絶対に働かないと決めたのに、何をしても才能がバレる件
やんやんつけバー
ファンタジー
過労死して異世界転生。今度こそ絶対に働かないと決めたのに、何をやっても才能がバレてしまう——。農村で静かに暮らすはずが、魔力、農業、医療……気づけば誰も放っておかない。チートで穏やか系の異世界スローライフ。
最安もふもふ三匹に名前をつける変な冒険者ですが、この子たちの力を引き出せるのは私だけです ~精霊偏愛録~
Lihito
ファンタジー
精霊に名前をつける冒険者は、たぶん私だけだ。
うさぎのノル、狐のルゥ、モモンガのピノ。三匹とも最安の契約で、手のひらに乗るサイズ。周りからは「手乗り精霊で何ができる」と笑われている。
でも、この子たちへの聞き方を変えるだけで、返ってくる答えはまるで違う。三匹の情報を重ねれば、上位の精霊一体では見えないものが見える。
上位パーティが三度失敗した大型討伐。私は戦わない。ノルに地中を、ピノに上空を、ルゥに地上を調べさせて、答えを組み上げる。
——この世界の精霊の使い方、みんな間違ってませんか?
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
前世で私を捨てた皇太子が、今世ではなぜか執着してきます。でも私は静王妃なので『皇叔母様』と呼ばせます
由香
恋愛
沈薬は前世、皇太子の妃だった。
だが彼の寵愛は側室へ移り、沈薬は罪もなく冷宮へ送られ――孤独の中で死んだ。
そして目を覚ますと、賜婚宴の日に戻っていた。
二度目の人生。
沈薬は迷わず皇太子ではなく、皇帝の弟である静王を選ぶ。
ただしその夫は、戦で重傷を負い昏睡中だった。
「今世は静かに生きられればそれでいい」
そう思っていたのに――
奇跡的に目覚めた静王は、沈薬を誰よりも大切にしてくれた。
さらにある日。
皇太子が前世の記憶を思い出してしまう。
「沈薬は俺の妃だった」
だが沈薬は微笑んで言う。
「殿下、私は静王妃です」
今の関係は――
皇叔母様。
前世で捨てた女を取り戻そうとする皇太子。
それを静かに守る静王。
宮廷を揺るがす執着と溺愛の物語。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
【ご報告】
最終回まで予約投稿済みです。
毎日8時・20時に更新予定です。
王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~
しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。
豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。
――食事が、冷めているのだ。
どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。
「温かいごはんが食べたい」
そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。
地下厨房からの高速搬送。
専用レーンを爆走するカートメイド。
扉の開閉に命をかけるオープナー。
ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!?
温かさは、ホッとさせてくれる。
それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。
冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、
食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ!
-
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる