辺境伯に嫁いだので、可愛い義息子と楽しい辺境生活を送ります ~ついでに傷心辺境伯とのぐずぐずの恋物語を添えて~

空野 碧舟

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今も昔も輝いて

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 共同戦線について、サイラスにすげなく断られたエメリーンは、肩を落として自室に戻った。

 「まだそこまでは貴女のことを信用できませんよ」とサイラスに笑顔で告げられて、それもそうかとエメリーンは口を噤んだ。

 だがサイラスは、妥協案をくれたのだ。

「貴女とメンバーが直接交渉する分には構いません。スネイクでも……、子爵邸で、でも」

 やはり先日スネイクと話した内容も、サイラスはしっかり把握しているようだ。もしかすると、必要以上にエメリーンが警戒されていたのは、先日の失言のせいかもしれないなと、エメリーンはいまさらながら反省した。

「スネイクか、オルクス子爵邸……か」

 帰ったばかりのスネイクをまた呼ぶのは、エメリーンに取って現実的ではない。わざわざ辺境伯領にまで呼び出すには、それなりに大きな商談が必要だ。

 だが王都のオルクス子爵邸へ行くのは、それよりも難問だった。

 ――王都は遠いわ……。

 エメリーンが「ちょっと王都まで行ってきます」と、書き置きを残して行ける距離ではない。それにエメリーンが今、ルイやヒューバートを置いて行くのは、何だかいろいろなトラウマを呼び起こしてしまう気がして、エメリーンは頭を抱えた。

 ――当分は無理かしらね。ね。

 子爵領について、対策を考えようとしたとき、やはり今のままでは情報不足であることをエメリーンは痛感していた。だからこそ、「手を貸して」とサイラスに願ったのだ。名もない義賊の仲間たちと協力できたら、どれだけ心強いだろう。

 もちろんエメリーンにも、エメリーンだからこそ、彼らの役に立てるはずだと思った。エメリーン自身の力ではないが、たまたま今、エメリーンは辺境伯夫人なのだ。

 子爵邸に長年潜入している彼らなら、きっとすでに有力な情報を手にしているだろう。それなのに、まだ行動に移せていないのは、何かに行き詰まっているのかもしれない。今のエメリーンと協力することで、それを超える手が使えるかもしれないのだ。

「何とか役に立ちたいわね」

 エメリーンは、自身がずっと辺境伯夫人の座にいられるとは思っていない。エメリーンには分からないが、ヒューバートに魅力を感じている女性は多く、その人気は高いのだ。そんな女性たちの中には、ルイを大切に思ってくれる人もきっといるだろう。

 もちろんルイの気持ちが一番だが、その時が来たら、エメリーンはさっさと身を引くつもりだ。

 ――お役御免になったら、また組織に入れてもらおうかしら。

 サイラスの渋い顔を思い出して、エメリーンはくつりと笑った。元辺境伯夫人では、組織のメンバーとして闇に潜むのに向いていないと、サイラスに嫌がられそうだと思ったからだ。

 ――とりあえず、まだまだ鍛えないとダメね。

 エメリーンが諦めた包囲網を、サイラスは軽々抜けてきたのだ。一体どこから、どうやったのだろうと考えると、エメリーンはわくわくしてしまう。

 ――悔しいけど、やっぱりサイラスは格好良いわ。

 アリサが憧れ続けたサイラスは、今でも変わらず「すごい」と思わせてくれる存在だった。今も色々な意味で輝くサイラスに、エメリーンはいつか追いつきたいと思っているのだが、まだその道のりは遠そうだ。

 ――名もなき組織のメンバーなら、辺境伯夫人役もスムーズにこなせないとね。

 サイラスには断られそうだが、気持ちの上ではすでに、エメリーンは勝手に組織のメンバーに入っていた。
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