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その2

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 あれは、久々に家族全員が集まった日の夜だった。母がぽかんと開けた口がまん丸だったことを、やけに印象的に覚えている。
『会、社って……本気なの!?』
 一番上の姉が言った。
『本気だよ。まだ誰も手をつけてないような遠くの星を餌場として開拓して、同族にもそれ以外にも売りつける。同族以外にはちょっと高めにして……。大丈夫だよ、最近は時空転送装置も安くなってきてるし、そんな大冒険は馬鹿のやることだから。馬鹿と思われてるうちにやらなきゃ』
 父親が眉間にシワを寄せて言った。
『■■■……いい加減冷静になれ。未開の星に行くなんて危険すぎる。それに縁談の話はどうするんだ』
 三番目の姉が口を挟む。
『そーよ。お相手さんとっても美人だったし、あなたのこと気に入ってるって』
『フン、そりゃあ□□□家の息子が婿に入ってくれるんだ。喜びもするさ』
 二番目の姉がバン、とテーブルを叩いた。
『なに不貞腐れてんの? せっかくあんたみたいなガキを貰ってくれるって言ってんのに!』
 ナアマ、と長兄が彼女をたしなめる。そして大きなため息をついた。
『考え直せ、■■■。婿養子に入るのがお前の一番の幸せだろ? 先方は立派なサキュバスだからお前の暮らしも一段と楽になる筈だ。一体なにが気に入らないんだ』
『……とにかく、僕はもう決めたんだ。ベリト兄さんの言うことだって聞けない。僕は────


 そうして、目が覚めた。
 目を開けると、自分はまだ同じ屋敷の同じベッドの上にいた。目に入るのは、女に押し倒されながら見た天井と、自分が入ってきた窓。けれども、辺りに女の姿はない。
 窓から差し込む明かりを見るに、どうやら既に日が昇っているようだ。地球の時刻換算でいえば……少なくとも7時間ほどは眠っていたことになる。
 身体を起こそうとすると腕が突っ張った。見れば手首同士が黒い鎖で繋がっている。手首に巻きついたベルトにはこれ見よがしな南京錠までぶら下がっていて、少なくとも素手では外せそうになかった。
「……なるほど」
 どうやら、昨晩この屋敷で見た悪夢は現実であったようだ。
 きっと、これ見よがしに開いていた窓からして罠だったのだろう。未開の原人と侮った地球の知的生命体は、どういうわけだか既に我々の存在を認知し、捕獲にまで乗り出しているという訳だ。
 にわかには信じがたい話だが、こんなことになってしまった以上、受け入れるほかなかった。本当に、夢であればどれだけ良かったか。現実というものはいつだって夢なんかよりずっと厳しい。
 哀れなサキュバスは一緒くたに動いてしまう不便な腕で、なんとか身体を起こした。その時にぐっと首元が突っ張って、ふざけた拘束具は首にも繋がっているのだと気付く。じゃらりと鳴った金属音に向かって視線をやれば、首から伸びる鎖はベッドの足に繋がっていた。
「なるほどね……」
 どうやらいよいよ本格的に、あの女は自分を逃す気はないらしい。それから、その趣味も最悪だ。
 首元に向かって手を伸ばせば、そこには分厚くて硬い、立派な首輪がはまっていた。触って確認する限り、金具の一部が鎖にはまり込んでいる。やはり外すのは簡単ではなさそうだ。
 見れば、気絶したとき自分は全裸だった自分の身体はバスローブに包まれている。辺りを見渡せど、この巨大なベッドの他には小さなソファしか目につかない、簡素な部屋だった。物音はせず、近くに人の気配もない。
 自分はそっと、口に溜まった生唾を嚥下した。はあ、と吐いた息は、未だ確かな熱を孕んでいた。
(……出したい)
 目を覚ました時から徐々に感じ始めた腹の奥の熱を、無視し続けるのもそろそろ限界だった。
 過剰摂取。自分の身体は現在、そう呼ばれる状態にあるだろう。体内の精気が多過ぎるのだ。
 今、自分の身体はこれ以上ないほどに満たされている。満腹なのだ、生まれてこの方ないほどに。身体の奥が熱くて、頭がぼうっとする。何もしていないのに、目が覚めたときから股の間がその存在を主張して仕方ない。
 やはりあの女の精気は異常だ。地球人は皆こうなのか、それともαだからなのか。だが今ここでそれを考えても、何もわかるはずはなかった。わかるのは、自分がこの状況に対処しなければならないということだけだ。
「くそっ……」
 自身の右手はゆっくりと、勃ち上がる自身の中心へ向かっていった。バスローブ越しに触れると、それだけで背筋を甘い電流が駆け上がる。
「……ん、う」
 バスローブの前を開ければ、粘液に濡れる自身の中心が現れた。尿道からは既に透明な液体が溢れていて、裏側に伝うその液体を追いかけるように指を走らせれば、また、ゾクゾクと快感が身体に広がっていく。
 ぬるり、5本の指で竿全体を包んだ。上へ、下へ、手が自然と裏側を刺激する。
「あー……」
 頭の芯が痺れるようだった。
 果たして、これでいいのか、自分にはよくわからない。なにせ貴重な精気をわざわざ身体の外に排出するような行為に、経験なんかないのだ。
 だが、それでもわかる。この先にあの感覚がある。出したい。またあの感覚を知りたい。性器の中心を尿ではない何かが駆け抜けていく、あの感覚を。
「んんっ、はあ……」
 切なく恋い焦がれたそれは、拍子抜けするほどあっさりとこの身に再来した。腹の奥の熱は性器に刺激を受けると瞬く間に昂って、ものの数分でパンと弾けた。体内から白い液体が飛び出していく得も言われぬ感覚に、ぎゅっと息が止まる。なんとか左手の中に留めたそれは、紛れもなく濃厚な精気の塊であった。
(ああ……もったいない)
 思考の回らない頭でそんなことを思う。だが未だ過剰摂取による諸症状はしっかりと残っていた。頭痛、動悸、ほてりに、心拍数の増加……身体全体が膨張するような熱っぽさが不快感に拍車をかけている。
 顔を上げたら、ベッド端に置かれたタオルが目に留まった。なるほど、こちらの行動は最初から読まれていた訳だ。
 ため息と共にタオルに手を伸ばし、手のひらを拭う。そうして再び、股の間へ手を伸ばした。不気味に疼いて存在を主張する、後ろの孔のことは無視することにして。
「うぁ……」
 右の手で握り込むと、先ほどよりも強い快感が自身を襲った。繰り返し触ることで、敏感になっているようだ。
 昨日の夜もそうだった。どんどん快感が強くなって、訳がわからなくなって、何も考えられなくなった。性の悪魔、サキュバスがこんなことになるなんて、一体この星の人間はどうなっているんだ。
「ああ……」
 熱い吐息が口の隙間からこぼれ出る。熱に浮かされた頭にはぼんやりと、昔の記憶が蘇っていた。
『ちょっと食べ過ぎちゃったみたい。身体がほてって、気分が悪いわ……気を付けないとね』
 そう言ってはにかんだのは、同じクラスの女性サキュバスだった。
『リザさんスゲー』
『過剰摂取とか、本当にあるんだ』
『いいよなあサキュバス』
『やっぱり需要がね』
 彼女の一言で皆が色めく。彼女を嫌う者なんて、あの空間には存在しなかった。彼女への称賛と同時に、チラチラとこちらに向けられる視線には、気付かないフリをした。
 彼女はウィンザー家の長女で、あのクラスの、いや、あの学校のアイドルだった。艶やかにうねるブロンドと妖艶なキャットアイ。その表情はどこか幼くまるで子供のようだったが、緑色の瞳は時に、驚くほど穏やかな慈愛の色に染まった。きっとあの人に迫られた獲物は、一も二もなく首を縦に振るのだろう。
 この先の完璧な生涯を約束された彼女と、僕。その日も僕は彼女を取り囲む野次馬を視界に入れないよう、頑なに窓の外を眺めていた。
『なあ、なあ■■■!』
 それでも、絡んでくる奴というのはいるものだ。額に小さなツノを生やした彼は、わざわざ僕の目の前にまでやってきて、言った。
『お前さあ、リザさんに飼ってもらった方が良いんじゃねえの?』
 僕はその場で立ち上がった。それで……彼の頬に、思い切り拳を振り抜いた。

「あぅ、あっ、は」
 身体がビクンと震えて、吐精する。勝手に肺が収縮するものだから、声が抑えられない。
 ゆっくりと引いていく快感に大きく息をつきながら、手の中の精気をタオルで拭った。
 そうだ、あの時。リザを引き合いに出して、リザの目の前でからかわれた時。僕は猛烈に腹が立ったのだ。だって僕は、あのとき────
 ガチャリ。扉が開く音で、思考は遮られた。
 あの女か。はだけたバスローブの裾をぐいと引っ張りながら、咄嗟に身構える。だがそこにいたのは、自分をこんな目に合わせた憎っくき地球人ではなかった。
 扉を開けて入ってきたその男を、自分は知っていた。
「うっわ、お前マジで捕まったの!? うけるー」
 彼はそう言って、浅黒い腕でこちらを指差しながら軽薄に笑った。
「貴、様……っなんで……!」
 細められた目の隙間から神秘的な青い瞳が覗く。それは紛れもなく、一月前の通信を最後に消息を経った、同胞のサキュバスであった。
 煌く金髪も、陽気な声も、1ヶ月前から何一つ変わっていない。変わったのは彼が身につけている衣服だけだ。
 最後に彼を見た時とは違う、大きなTシャツとハーフパンツ。タボついたゆるいシルエットだが、遠目にも上等な品であることが伺える。だが、そんな上質な衣装にはおよそ似つかわしくない真っ赤な首輪が、彼の首でいやらしく存在を主張していた。胸まで垂れた鉄の鎖が、ジャラリと音を立てる。
 彼はにやにやと口角を上げ、部屋を見回していた。きっとこの部屋が精気の臭いで充満していることにも、とっくに気付いているのだろう。
「なんでってどう言う意味? つーか、花さん相手にまだそんな反抗的な感じなんだ。ほんと面白いよねアンタ」
「堕ちたのか、あの女に!」
 声を荒げると、彼は煩わしそうに首を振った。
「あーハイハイ出たよ真面目ちゃん。あのね、ここはいいよ? 屋根付きの部屋があって、服は綺麗で、食事もうまい。……帰る理由なんてある?」
 話しながら近寄ってきた彼が、どすり、とベッドに腰掛ける。後ずさるが、自分はあっさりベッドに押し倒された。
 そして褐色の手の中から小さな鍵が現れる。彼はそれで手早く手錠を外すと、腕を背中側に持っていって、再び鍵をかけた。腕が自由になった一瞬に暴れようとしたのだが、彼の力は恐ろしく強く、びくともしない。おかしい、いくらまだ精気酔いが残っているとはいえ、シェオルじゃあ彼はむしろ非力なサキュバスであったのに。
「暴れんなって。お互い怪我したくないっしょ?」
「貴様に、誇りはないのか……!」
「ないね、そんなもん。食えないもんに興味はねえ。だから俺はいーけど……その台詞、グレンにも言えんのかな」
「な……っ!」
 臆面もなく彼の口から飛び出した仲間の名に、一瞬言葉を失う。慌てて扉の方に目を向けるが、ドアはしっかりと閉まっていた。
「あいつ、も……いるのか……?」
 その問いに、彼はニッコリと微笑む。
「いるよ。グレンはね、オシオキ中。精気漬けにされて、向こう3日は正気に戻らないだろうね。ヒンヒン女みたいに啼いて、腰振って、『ご主人様あ、もっともっと』ってカワイー声……」
「黙れ」
 腹の底から煮えたぎる怒りが、口からこぼれた。彼は口角を下げないまま、静かに口を閉じる。
「それ以上下卑た冗談でアイツを愚弄するなら、貴様とて殺すぞ」
「……こーわ」
 言葉と共に彼の身体が離れていく。それと殆ど同時に、ガチャリ、と再びドアが開いた。
「こら、煽れだなんて言った覚えはないけど?」
 女だ。昨日この身を凌辱し、今なお監禁を続ける、忌々しい女。それが再び、目の前の扉をくぐって現れた。
 怒りとも、憎しみともつかぬ感情にざあっと全身が粟立つ。シーツから跳ね起きて背中を丸めるが、そんな自分とは対照的に、本来仲間であるはずの彼はへらへらと肩を竦めた。
「はーい、スミマセーン」
 彼の口からペロリと赤い舌が覗く。
 そうして彼はにこやかに、自ら女の横に並んだ。女は黒いワンピースに身を包み、真っ直ぐな長髪を靡かせている。こうして見ると存外長身で、彼と並んでもほとんど背丈が変わらない。
 女は彼の首から下がる鎖を掴んで引っ張ると、口を開いた。
「ニコ。キミが言い出したんでしょ、俺に任せろーって」
 彼はバツが悪そうに視線を逸らしたが、その女の発言は、自分にとって、決して聞き捨てならないものだった。
「お前……っ自分の名を教えたのか!?」
 仲間のサキュバス、もとい、ニコラに向かって叫ぶ。青白い瞳が、ぬるりとこちらを向いた。
 異星人に名を教える、その行為の意味を、彼が知らないはずはない。我らシェオルに栄える種族にとって名は心であり、魂だ。この女に祓魔の心得が有れば今この瞬間に消失したっておかしくないし、指先一つで死ぬより恐ろしいめに合わせられるだろう。シェオルの種族全体に危害が及ぶことだって考えられる、言わば、禁忌だ。
 だがこちらの切迫した怒鳴り声にも、ニコラはあっけらかんと首をかしげただけだった。
「そーだけど、なに?」
 一瞬、頭が真っ白になる。胸の奥でごうごう燃えていた怒りの炎は、今のたった一言で音もなくかき消えてしまった。
 確信したからだ。もう、この男はこちら側には戻ってこないのだと。
「ククク……ハハハハッ!」
「……」
 顔をのけぞらせて笑ったら、鎖がジャラジャラ揺れて音を立てた。ニコラは、なにも言わない。
「そうかそうか……身も心も、畜生以下に落ちたのだな……! アハハハハ」
「……言ってろ、バーカ」
 ニコラはくるりと踵を返し、扉の外に出て行った。
 残った女が口を開く。
「また今夜、遊びに来るよ。待っててね」
「……くたばれ、外道」
 女はにこやかな表情を崩さぬまま、ひらひらと手を振って部屋を後にした。
 扉は閉まり、ガチャリと鍵のかかる音が大きく部屋に響いた。


   ×       ×


 背後で扉が閉まる音を聞いてから、ニコラは強く舌打ちした。
「っくそ……」
 女が追いついてきて、隣に並ぶ。
「なにか面白いこと言ってた? それとも喧嘩してただけかな」
「あっ、しまった脅しとくの忘れてた。むしろちょっと反抗的になっちゃったかも、わり」
「あはは。ま、それはそれで楽しそうかな」
「……」
 女は顎に手をあて、楽しそうに目を細めた。大方、今夜アイツをどう調教してやるか、そんなことで頭がいっぱいなのだろう。
 ニコラは彼女をしばし見つめると、その腰にするりと腕を回し、身体を抱き寄せる。
「花さん。今日は俺にしようよ」
「ええ?」
 彼女の大きな瞳がパチパチと二回瞬いた。
「キミは一昨日シタばっかりでしょ?」
「そう言わずにさあ、お願い……俺、腹へった」「うーん」
 花は困ったように微笑むと、ニコラの口に自身のそれをくっつけた。ベロリと舌が入ってきて、上顎をくすぐられる。
「んん、ぅ……」
 たったそれだけで、頭がクラクラした。ゆるく舐められた刺激は脳にビリビリと共振し、腹の奥が熱く疼き出す。
 時間にすれば10秒ほど。だがそれだけで、ニコラの口の中は花の唾液でいっぱいになった。
「お腹はこれで充分なんじゃない?」
 ふふ、と花が笑う。
 足が震えて、ニコラは一歩後ろによろめいた。果たしてそれは精気のせいなのか、それとも特別弱いところをくすぐられたせいだろうか。多分、その両方だろう。
 心臓がドクドク脈打って、全身に力が満ちていくのがわかる。ただの口実だった空腹は、いよいよ完全に消失してしまった。
 だが、こんなところで引き下がったら、親に丸め込まれた駄々っ子と変わらない。予想外のキスで無意識に上がる口角を拭いながら、ニコラは再び花に擦り寄った。
「だからあー……」
 今度は正面から、彼女の首元に腕を回す。至近距離からじっと黒い瞳を覗き込んだ。
「抱いてくれって言ってるの」
 淫魔による渾身の誘惑。さりとてそれは、花の顔を薄く微笑ませただけに終わった。
 花はまた、ゆっくりと瞬きをした。
「そうだなあ、でも今日はもう新入りくんとの先約があるし……あっ、いいこと思いついた」
「イイコト?」
 小首をかしげると、花の手がするりと頬を撫でる。
「今夜キミもこの部屋にくればいい」
「……えっ? なに!? 3P!?」
「うん、そんなとこ」
「ヤッター! したことない俺!」
 思わず花に抱きついた。花はニコラのブロンドに指を通しながら言う。
「へえ、意外だな。天下のサキュバスさまなのに」
「落ちこぼれのね。そんなオイシイ現場には行けねえの」
「ふふ、じゃあ楽しみにしておいで」
「うん!」
 大きく頷くと、花は「それじゃあまた夜に」と言って去っていった。
 遠くなっていく背中を見送って、踵を返す。
 ニコラは夜までの時間を庭の草むしりにあてることに決めた。この異様に広い屋敷は、広過ぎてまるで手入れが行き届いていないのだ。特に庭の西側はジャングルのようだったから、今日は少しでも通れる道を……。
「おい」
 そんな思考を、低い声が遮った。振り帰れば、柱の影の暗がりに、一人の男が佇んでいた。
「グレン」
「……」
 返事はない。
「びっくりした、聞いてたの?」
「どうだった、アイツ」
 質問を質問で返すな、そう言いかけてやめる。いつもそうなのだ。グレンはいつだって他人の話なんか聞いちゃいない。
 ニコラはグレンの方へ向き直ると、悪戯っ子のように口角を持ち上げた。
「すっげー怒ってたよ。あんたがすっかりメス堕ちしたって言ったら、下らない嘘つくなって」
「……」
「ぜーんぶ、事実なのにね?」
 ダメ押しとばかりに暗闇を見上げてくすくす笑う。だがグレンは表情を変えぬまま、真っ直ぐこちらを見つめ返した。
「なにを苛立ってる」
「……うっざ。それはこっちの台詞だっつーの。いつまでも隠れてるなら、アンタのハメ撮りアイツに見せちまうぞ」
 この攻撃は、流石のグレンにも効いたようだ。グレンはわずかに顔をしかめ、はあ、と重いため息を屋敷の廊下に響かせた。
「こないだのメイド服とかマジでうけたね。ちんこに棒突っ込まれて悲鳴あげるのもサイコー。や、でも一番スゲェのは先週の……」
「分かった、分かった。全く……いい加減花のスマホを勝手に見るのはやめろ」
「これみよがしに置いといてよく言うわ。あんなん見たらあの箱入り娘は卒倒しちまうぜ? せいぜい隠し通すんだな」
 言いながらくるりと踵を返す。背後のグレンが動く気配はなく、ニコラは庭へ向かって真っ直ぐに、階段を降りていった。
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