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第二章:ライバルギルドバトル編

#24.学院への襲撃

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 「こんにちは、代理で来ましたシーナです」

 僕はシーナの姿で大勢の子獣人の前で教壇に立って自己紹介をする。
 すると、ワアアアァァァ!という歓声が室内に響き渡った。シーナは相当懐かれてるんだなぁ。
 ていうか、なぜこうなったか……数時間前の話……

 「え、な、なに?なんで一斉にこっちを見るの?」
 「コウジ、私に変身してこの依頼やってみません?」

 うん、言うと思ったよ?
 思ったけど……さすがに変身対象から言われるとは思わなかった。
 だって異性だよ?雌が雄に自分に変身してなんて言うと思う?
 それに、他にも問題が。

 「僕は子供だよ?それに、一応数学だと計算問題は得意だけど、図形関係は超苦手なん」
 「あ、それなら大丈夫です。今回教えるのはここなので」

 そう言って、依頼人が教科書らしき本を開いて僕に見せてくる。
 ……うん、僕が生前に教わったとこだから大丈夫そうだ。
 けど、グイグイと攻めてくるから僕はタジタジだ。
 ていうか、なぜこんなにまだ子供である僕に進めてくるんだろうか?全然わからない。
 中身は一応中学生ですが。

 「なんでまだ子供の僕にこんなに進めてくるの?理由を教えてよ?」
 「お前を信じてるからさ」

 マスター……嬉しいけど、それは理由になってません。

 「コウジ、これもギルドの仕事だ。今回は異例だが、仕事をこなしていけば指名だってあるんだぞ?」

 うぅ……それを言われたら僕が折れるしかないじゃん。
 と、いうわけでシーナに変身してシーナの服を着て、少しフリの練習。
 ぶっちゃけ恥ずかしいけど、いずれ慣れてくれるといいんだけどね。またやることがあるだろうし。
 と、いうわけで現在に至る。
 早速今回の範囲の授業をしていく。
 まさか中一レベルの授業を中一だった僕が受け持つとはね……人生何があるかわかんないとはよく言ったものだ。
 しっかしちゃんと真面目に授業聞いてるなぁ……向こうの世界とは大違いだ。
 真面目に授業を受ける奴はいても、大抵は教科書をを立てて寝たり早弁したり漫画読んだりしてるからなぁ。
 さすが、国のお役所志望獣人だ。 順調に授業が進み、あと五分で授業が終わる……そんなとき、下の階で悲鳴が発生した。
 え、何事!?
 教室から廊下を覗くと、猛獣らしき何かがこっちに走ってくるのが見えた。
 僕は急いで扉を閉めると、足音は聞こえなくなった。
 子供達は訳が分からず、怯えてしまっている。無理もない、僕だって訳が分からない。
 窓から外を覗くと、たくさんの何かに完全に囲まれていた。
 もしかして魔物?
 さっきのも魔物だとして、中全体が襲われてるとしたら……マズい、何とかしないと。
 しかしどうやって……?
 ……とりあえず、この教室を封鎖して中の魔物を倒しに行くか。
 子供達の方へ振り返ったとたん、窓ガラスを破って大きい何かが侵入してきた。
 ライオンの顔に山羊の身体と蛇の尻尾……間違いない、キマイラだ。漫画で見たまんまなんだけど!
 僕は子供たちの前に立ちはだかって守るようにする。
 子供達は怯えながら僕の後ろでしがみついてくる。
 変身を解けばなんとかなると思うけど……子供達の手前、解いたら子供達の気持ちは……
 迷ってるうちに、キマイラは唸りながらジリジリと近づいてくる。
 あー、もう!このまま全滅するよりマシだ!!
 決意して変身を解いて元の姿に戻る。
 チラッと子供達を見ると、驚いた顔をしてこっちを見ている。まぁ、そんな顔にもなるよね。
 とにかく今はこのキマイラをなんとかせにゃ!
 キマイラが一気に勝負を仕掛けにきたのか、ジャンプして襲ってきた。
 避けたら子供達が襲われるのは必須。なら避けずにカウンターくらわしたる!
 丁度いい間合いに入ったとこで、僕の尻尾がドラゴンの尻尾のようになり、体を回転させてキマイラに尻尾をぶつけ、外へと吹っ飛ばした。
 うっし、なんとかなった!

 「シーナ先生……じゃないの?」
 「ていうか、私達と同じ子供だよね……」

 振り返ると、ジトッとした目やオロオロと困ってる目で見られてしまっている。
 Oh……この目は苦手だわ。

 「あー……ちょっと訳ありでシーナの代理をやってたんだよ。これでもシーナと同じギルドメンバーで……」

 突如、後ろからガシャアンという音がした。
 振り返ってみると、複数の魔獣が入り込んでいた。
 あ、これはまずい……非常にまずい!
 子供達を守りながらこの数は……無事じゃ済まないかもしれない。
 たぶんマスターは今向かってるだろうけど……間に合わないかもしれない。 ジリジリと窓際へ追い込まれ、ついに囲まれてしまった。
 くっそぅ……

「フフフ……どうかしら?魔獣に追い込まれる気分は?」

 突然、窓の方から誰かの声がしたから振り返ってみた。
 そこには、大型の鳥に乗っている……フードを被った豹獣人っぽいのがいた。 え、誰?

 「ふぅん……貴方がジャドーを負かした子供?なかなか可愛いじゃない」
 え、なに?超上から目線なんだけど……
 まぁ僕は子供だから大人には上から目線されても仕方ないんだけど。
 でも、上なのは大人子供だけじゃない。
 魔力量がふざけんなと言いたくなるくらい、すごく感じる!
 あー……心臓がすごいドクンドクンと波打ってるよ。

 「……誰?」
 「私は四大魔王が一人、ビーストマスターのネリアルっていうの。よろしく」
 「ま、魔王!?」
 「魔王がきたぁ!!」

 子供達が魔王の登場で、恐怖によって泣きながら散り散りになって教室から走り出てしまった。
 魔物達は子供達には目さえも追わなかった。
 もしかして子供が狙われてるわけじゃない?

 「フフフ……もしかして不思議に思ってるのかしら?なぜ子供に見向きもしないのか」

 ギク!
 思ってたことを言われたのと他に、いつの間にか僕の背後に回り込んで、背にもたれながら耳元でそう呟かれたものだからものすごく驚いた。
 鳥は外で待機している。
 バッと振り返ると、魔獣がいるだけでネリアルと名乗る奴はいなかった。

 「フフッ。私、アナタに興味あるのよねぇ……。竜王と一つになった獣人……。キマイラを一撃で吹っ飛ばすほどのパワー……あれは全力じゃないんでしょう?全力を出したらどうなるのかしら……?」

 再び後ろから声がして、手で僕のマズルをスッとなぞってくる。耳も舐められた。
 怖い……恐怖で身体が動かない……。
 体が震え、足も、腕も上げることさえできない声も出ない。
 これは……マズい……。非常にマズい……。
 銃を突きつけられても、初めてリアルでドラゴン……グランヴァルツを見ても、初めての戦闘も、怖くても恐怖まではいかなかったのに……今初めて恐怖を感じてる……。

 「あら、もしかして怖い?大丈夫よ、別に殺すつもりはないわ。ただ、ちょーっと心を壊して私の傀儡にしようと思うだ・け」

 そんなものに誰がなるか……動け動け……

 『条件が一定に到達……スキル《恐怖耐性》を獲得しました』

 ここで新しい耐性スキルを獲得した。
 恐怖心が緩和したからか体も動く!
 体を這うネリアルの手を振りほどき、一気に距離を取った。
 まだ怖いけど……さっきまでよりは全然マシだ。
 僕が動いたことでネリアルは少し驚いたのか、しばらく驚きの表情をしたあと、すぐに再び余裕の表情に戻った。

 「ふぅん……やっぱり面白いわね、アナタ。いいわ、ここは無理矢理連れ帰って身も心も堕としてあげようかしら……」

 ネリアルが手を挙げると、魔獣が再び唸りながら迫ってくる。
 体が動くといっても、全力を出すことはできない状態。
 しかも、この大量の魔獣を相手にできるかも怪しい。
 やるしかない……か。
 構えた途端、また何かが飛び込んできて僕の前に立った。

 「グルルルル……」
 「え、もしかして……」

 飛び込んできたソレは、昨夜怪我してた子供のフェンリルだった。
 魔獣に向かって唸り声を出している。

 「あら、可愛いこと。でも、相手を間違えたわね。このビーストマスターに操れない魔獣は……」

 「ウオオオオオォォォォォォン!!」

 いきなり遠吠えをしだした子フェンリル。
 それを数回繰り返すと、突然地響きが鳴り響いた。
 この校舎、大丈夫なんだろうか?
 そう思っていたら、窓と廊下から大きいフェンリルが僕を囲むように立ちふさがった。
 入れないのもいるらしく、外を見るとフェンリルが魔獣と戦ってるのが見えた。
 これは……いったい?

 「そんな……こんなことが……最強の魔獣であるフェンリルがビーストマスターである私ではなく……獣人の子供に従うというの?」

 ありえない……といった感じに首を振るネリアル。
 ごめん、この状況に着いていけません。
 気が付くと、子フェンリルがキャンキャンと吠えている。
 どうしたんだろう?

 『条件が一定に到達……スキル《魔物言語》を獲得しました。』

 魔物言語?
 魔物の言葉がわかるってこと?

 『お兄ちゃん大丈夫!?助けに来たよ!』

 あ、本当に言葉がわかる。
 助けって……この大量のフェンリルが?
 ていうか、最強の魔狼フェンリルがこんなにいていいの?

 「えっと……助けってこの君の大量の仲間の事?」
 『そうだ。我々は皆、奴、ビーストマスターに不満を抱いている』

 突如、僕の真正面にいるフェンリルが話に入ってきた。
 なんという低い声のイケボイス……かっこいいです。

 「不満……?」
 『我々に命令ばかりで偉そうなのが不満なのだ。我々、誇り高き……フェンリルが……あのような輩に……』

 ワナワナと震えながら苦虫を噛みしめたような表情をするフェンリル。
 うん、気持ちはわかるよ、気持ちは。
 でも、一応は魔獣を束ねる魔王のビーストマスターですよ?
 あのような輩って……ほら、顔を赤くして震えてますよ?毛皮で分かりにくいけど。

 『この子から話は聞いた。簡単とはいえ、トラップから救い、治療してくれたことは礼を言う。この助けはその礼だ』

 なるほど、借りは作らないってわけですね。
 まぁ……理由はどうあれ、この強力な助っ人は超助かる!
 そして、ここまで無視された魔王がついにブツブツと何かを言い始めた。

 「そう……この私に逆らうってわけね……いいわ、ここにいる私に従う魔獣以外全員を血祭にしてあげるわ!!」
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