【完結】幼い頃からの婚約を破棄されて退学の危機に瀕している。

桧山 紗綺

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三年目 ~再びの学園生活編~

始まりは平穏に

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 2度目の学園生活は平穏に始まった。
 クリスティーヌ様のご友人とも無事に顔合わせが済み、彼女たちも俺の立場を理解していて必要なときは声を掛けてくれと言ってくれる。
 ご友人の中でもクリスティーヌ様の周囲の変化は良いものばかりでないと感じられていたらしい。
 高位も下位もなく多くの友人を得ているクリスティーヌ様だが、その中でも同じ侯爵令嬢のロレイン様と一番仲が良いようで冗談を言っては笑い合う姿は本当に気の置けない親友のようだった。

 今年取っている講義は以前受講していたものとは違うのでその点も楽しい。
 もちろん中には以前も取っていた講義もあるが、改めて学ぶことでより理解が深まっている。

 今のところレオンや侯爵様が危惧していた事態は起きていない。
 クリスティーヌ様が俺のことを説明してくれているおかげだろう。
 教授たちも復学した挨拶に行った俺によく戻って来たと声を掛けてくれた。
 一部の教授にはあの記号の話で掴まり抜け出すのにかなりの時間を要したが、どの人ももう一度得た機会を精一杯生かして自分の身にしなさいと励ましてくれる。
 質問があればいつでも来なさいと言ってくれる教授たちに感謝と身の引き締まる思いで一杯になった。

 新学期はそんな風に順風を受け始まった。
 ただ、男子からはまだ若干遠巻きにされている。
 クリスティーヌ様の側にいることが多く、2つも年が上の俺にどう接していいのか迷っているようだ。
 講義の際などに話しかけることがあるのだが、どの生徒も話しかけられたことに驚き返答まで間が生まれたりしている。
 話し終えると普通の態度に近づくのでこの辺りの問題はその内解決していくだろう。





 講義の後、食堂までクリスティーヌ様を送りご友人と合流したところで挨拶をしてその場を離れる。
 一緒に食事を取っても構わないと言われるのだが、あまり側にい過ぎるてはご友人と気の置けない時間を過ごす邪魔をしてしまうだろうし、従者の立場で堂々と同じテーブルに着くことも憚られた。
 最初の顔合わせの時のような個室であればそれほど気にしなくても良いのだろうが、クリスティーヌ様の評判に関わることには慎重になりたい。
 後で迎えに来ると伝えたら次の講義はロレイン様を含めた何人かと一緒だから大丈夫だと告げられる。
 そうは言っても心配なのでロレイン様たちにクリスティーヌ様のことを頼むと任せてちょうだいと快く請け負ってくれた。次の講義が終わったら迎えに行くとだけ約束してその場を後にした。

 簡単に食事を済ませ少し時間が空いたので図書館に向かう。
 先ほどの講義と関連した内容の本を探していると、近くにいた男子生徒と目が合った。俺を見ていたのは同じ講義をいくつか取っている同級生だ。
 突然目が合ったことに慌てていたが、何か言いたそうな様子で口を開いては閉じてを繰り返している。

「こんにちは、食事はもう終えたのですか?」

「あ、ああ。 もう食べました」

 そうですかと答え食事を終えてすぐ図書館に来るなんて勉強熱心なんだなと感心する。

「あ、あの、アランさん」

「呼び捨てにしてくれて構いませんよ」

 躊躇いがちに名前を呼ばれてアランでいいと告げる。
 彼の方が平民になった俺よりも身分が上なのだし、どういう態度で接すればいいのか迷っているのならそれを示してあげれば落ち着くだろうと思った。

「そう、か?
 じゃあアラン、俺のことも敬称とか敬語とか抜きでいいよ」

 それはと躊躇いを見せると元々の身分は対して変わらないし、学園の間のことだからうるさく言わないと重ねて頼まれ、同級生に敬語使われるとか落ち着かないとまで言われた。
 その表情が本当に困って見えて、学園内でならと了承する。

「じゃあ、それで話させてもらうけれど。
 どうかしたんだ、もしかして何か用事があった?」

「さっきの講義のことで少し教えてほしいことがあって」

 クリスティーヌ様と話していただろうと言われ、ああと先ほどの会話を思い出す。
 魔法式の計算で迷うところがあったようで講義が終わった後に法則を書き出していたクリスティーヌ様に合っているかと確認された。
 いつもよく予習しているクリスティーヌ様らしく問題なく合っていたので、一部変則的な計算が必要になるものだけを横に追記した。

 いいかと窺う彼へもちろんと答え、開いている机へ向かい図にして法則を表し説明していく。
 計算式だけではわかりづらくても視覚に見えるようにすると理解しやすいのは経験で知っていた。

「そっか、大きな魔法を使うときも単純に魔力を籠めればいいってわけじゃないんだな。
 ありがとう! 助かったよ、兄貴とかに聞いても感じればわかるみたいな言い方しかしないから困っててさ」

 明るい顔でお礼を言う彼へわからないことがあればなんでも聞いてくれと答える。
 彼の家族は感覚派なんだな。
 大きな魔力を持つ者ほど感覚で魔法を使えることが多い。
 その感覚が掴めない俺としてはその方が難しそうに思えるのだが。
 目の前の彼も同意見のようだ。俺の経験が役に立って良かった。

「とにかく助かったよ、ありがとう!
 また何かあったらよろしく頼むな!」

 元気よく手を振って去って行った彼を見送って俺もそろそろ行くかと次の講義へ向かう。
 ようやく普通に話してくれる級友ができそうだった。


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