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三年目 ~再びの学園生活編~
級友たちの雑談 <級友視点>
アランと別れ向かった講義室で、一緒に昼食を食べていた友人に不思議そうな顔を向けられる。
「あ、お前どこ行ってたんだ食べ終わってすぐいなくなって」
一緒に来ようと思ってたのに探したと軽く文句を言われる。
「アランに勉強教えてもらってた」
図書館に向かう姿を見つけて側にクリスティーヌ様がいないのを見てチャンスだと思ったんだ。
さすがに侯爵令嬢が隣にいる状態でアランに話しかけるのは難しい。
クリスティーヌ様も良い人で恐らく文句など言われないのはわかっているが上級貴族に緊張してしまうのはしがない下級貴族の倣いというものだ。
「アランってあのアランさんか?」
「他にいないだろ」
珍しい名前でもないから学園内にも探せば何人かいるだろうけど、俺たちの話題に上るアランは今のところ一人だけだ。
「なんか気難しくて口うるさいって話だったけど、どうだった?」
「全然。
むしろ穏やかで優しい感じの人だったよ」
聞いていた噂とは正反対の感じだったと言うと級友も納得したように頷いた。
「だよな、クリスティーヌ様や他の女子への接し方見てもそんな感じの人には見えなかったし」
「実際のところあれだろ?
元婚約者だった人の振る舞いに問題があったから口出しせずにはいられなかっただけだろ」
俺たちの話を聞いていた他の奴らも話に入ってきた。
「確かに。
一学年下の俺たちにすら目に入るほど目立ってるんだから、近くにいたら黙ってられないよな」
1つ上に兄弟や知り合いがいる奴から聞いた話では入婿に入る身で分を弁えず口出ししたことや束縛の激しさに嫌気が差して婚約を破棄されたということだったが、事実は逆じゃないかと思う。
「オレ、従兄弟が2つ上の学年にいたんだけどさ。
その元婚約者の人結構わがままでアランさんは振り回されてたらしい」
「へえ、やっぱり?」
「で、従兄弟の話ではアランさんが急に学園に来なくなったと思ったらその元婚約者は別の男と親密で、浮気された上に婚約解消されたらしいって話を前に聞いた」
誰かがきっつ……、と声を漏らした。
「マジか……、相手の有責でも婚約解消になれば入婿になるはずだったアランさんの方が弱いもんな」
立場の弱いアランが割を食ったのは想像に難くない。
「お前そんな話知ってるならもっと早く言えよ」
「いやー、なんか上の学年からは違う噂が回って来てっからどっちが正しいのかなーって」
「それ絶対自分たちの所業を隠すために流した噂だろ」
口々に上がる批判にその従兄弟から噂を聞いた級友がこれも真偽は知らないんだけど……、と言いながらもっと大きな衝撃を落としていった。
そいつの話によると、婚約解消をされたアランが休学しクリスティーヌ様の侍従として学園に戻って来た理由は婚約解消に伴って男爵家から学費を払ってもらえなくなり、友人だったクリスティーヌ様の兄のレオン様を頼り使用人として働くことでどうにか退学の危機を免れたという話だった。
途中なんで実家に頼らないで友人のレオン様を頼ったのかと思ったが、考えてみたらアランは平民になっている。
実家に頼れなかった理由があったんだろうと想像した。
「お前今度もっと詳しい話聞いて来いよ」
「えー、本人に……」
本人に聞けばと言いかけた奴の言葉が周囲の視線に止まる。
「本人に聞けるか?
浮気されて婚約解消された上に実家から出て友人の使用人として働いている理由を教えてくださいって」
改めて言葉にすると酷さが極まって聞こえる。
うわぁ……、と表情を歪めた級友が謝り始めたところで教授が入ってきた。
雑談を止めて始まる講義に意識を集中する。
到着が遅れたため少し押した講義を聞きながら各々で話を集めてこようと考えた。
講義が終わってその話をしたら皆も同じように考えていたようだ。
なんとなくアランが悪い奴じゃないと感じていたことが俺を含めた級友の義憤に火をつけていた。
彼らは知らない。
講義室の外で話を聞いていた教授がアランの事情に触れるまで中に入らなかったことを。
休学届を出しに来た際の憔悴した様子とその後の学園の様子を見ていた教授にも思うところがあった。
立場上口出しはできないが、これくらいは許されるだろうとアランの正しい事情に興味が集まったところで中に入り講義を始める。
会話をしていた者以外にも話は聞こえており、多くの興味を引いた。
そして噂は始まる。
本人の知らないところで同情は集まり、しばらく経つ頃にはアランの事情はそれなりの正確さで学園内に広まっていた。
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