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三年目 ~再びの学園生活編~

応えてくれなくても <クリスティーヌ視点>

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 探していた本の背表紙を指で引き、本棚から取り出す。
 ふっとアランの想いの籠もった眼差しを思い出し口元に笑みが生まれる。

「アラン様と、何かあったの?」

「ロレイン様」

 問われた内容に首を傾げる。
 あの日からもアランとは特に変わることなく一緒に過ごしている。
 教授たちの魔法の発動実験に協力したり、講義の合間に勉強をしたりと学園生活は穏やかだ。
 アランはお兄様の指示もあり色々と忙しそうだった。
 そんなにおかしな態度だったかしらと聞くと違うと返ってくる。

「二人とも雰囲気が柔らかくなってるからよ。
 この前まではどこか主従を演じてるみたいな硬さがあったけど、ここのところは昔から従者として側にいたみたいに自然な感じがするわ」

 他人から見たらそんな風に見えていたのね。
 無理をしていたつもりはなかったのだけれど。

 でも、私にとってアランはお兄様の親友で憧れの人といった印象が強かった。
 だからずっと従者としてのアランに接するのが難しくて。主を演じているような感じになっていたのかしら。

「告白でもしたの?」

 私が上機嫌に見えたからかそんなことを聞いてくるロレイン様。鋭いわ。

「したわ」

 想いは告げた。
 ロレイン様が目を見開く。
 まさか本当に告白していたとは思わなかったみたい。

「それで……?!」

「応えられないって言われたわ」

 想いに応えられないと言われた私が笑みを浮かべているのがおかしいのか、訝しげな顔をされる。

「どうして嬉しそうなのよ」

「悲しいとは思っているわ」

 わかっていても、受け入れられないと言われたのですもの。
 悲しみだってもちろんある。けれど。

「でも、いいの」

 言葉にできなくても同じ想いだって伝えてくれた。

「応えられないのが辛いと思ってくれて、それで十分」

 想いを表してくれただけで十分です。
 私の想いをうれしく思ってくれただけで、十分。
 それ以上の関係を望むのは私たちの関係では難しい。
 辛いし、苦しい。
 けれど満たされている。
 幸せな初恋をしていると思った。

「……そう言われたの?」

「言葉にはされてはないけれど」

 想いの詰まった視線をもらっただけ。
 それから……。
 思い出したキスに頬が熱を持つ。

 そんな私を見ていたロレイン様が不穏なことを呟いた。

「意外と手が早いのかしら……」

 なんだか誤解が生まれた気がする。
 アランはそんな不埒な人じゃないわ。
 ロレイン様の誤解を解くためにほぼ全てを話すことになってしまう。
 最後まで聞いたロレイン様はなんだか甘い物を口いっぱいに詰め込まれたような顔をしていた。


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