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四年目 ~冬期休暇 そして春へ~
繋がっていく欠片
しおりを挟む弾む足取りのクリスティーヌ様と共に街の中を歩く。
薄曇りだけれど今日はそれほど寒くない。
街を眺めると行き交う人も談笑しながらゆったりと歩いている人が多かった。
隣を見下ろすと嬉しそうに頬を緩めたクリスティーヌ様が目に入る。
頬にかかる茶色の髪に、染めたのではなくて良かったと思う。
クリスティーヌ様の美しい金の髪を染めてしまうのはもったいないので。
茶色の髪も似合っているけれど。
俺の視線を感じたのか、クリスティーヌ様がこちらを見上げてふわりと微笑む。
最近はこうして時間を取れることが少なかったから、来て良かった。
俺が資料に掛かり切りになっている間にクリスティーヌ様は街の事をあれこれ聞いていたらしく、通りがかった店の話をしてくれたり訪れる人が必ず行くという名所を教えてくれる。
街の外に山が見える風景というのが物珍しくて視線がそちらへ吸い寄せられた。
雪化粧をした山は登れば厳しいだろうが見ている分には綺麗だ。
あの山を越したら西方の盟主と言われる侯爵家の領地に続いている。
難所と言われるほどでもないが迂回した方が楽なため夏でも山に入る者は少ない、と資料に乗っていた情報を思い出す。
公爵の領地は特筆するところのない土地で、程々に実る畑と流通の便がそれなりに良く暮らすのに困ることは無い。あとは大昔に廃鉱になった山が領地の片隅にあるくらいだ。
そこも新しい鉱脈が見つかったなどということもなく、本当に程々に暮らせば穏やかな生活が送れる領地といった場所だ。隠居するには良い場所、と言っては失礼かもしれないが。
つい調査のことを考えてしまっていた。
くすりと笑う声が聞こえて気づく。
「すみません、せっかく一緒にいるのに他所事を考えていて」
「いいのよ。
あなたらしいなぁって思うし、そんな姿を見てると安心できるから」
縁談を潰すために真剣に臨んでいるのがわかるから安心していられると微笑む。
「でも、私にできることがあれば何でも言ってね?」
待っているだけではいたくないと言ってくれる彼女に頷く。
一緒に抗ってくれることが嬉しい。
頼もしいですと答えると嬉しそうにはにかんだ。
「明日から少し他所の街を回ってみようと思います」
いくつか気になっている場所があると伝えるとクリスティーヌ様もついて来ると言う。
無駄足を踏ませるかもしれないと思ったけれど、時間が惜しいという意見も正しい。
護衛の人を見ると、先に考えを聞かされていたのか頷いてクリスティーヌ様の意志に従う様子を見せた。
それを見て反対するのは止めた。護衛の人と後で打ち合わせをして日程を組もう。
街を歩いていてなんとなく浮かべた地理に一つの仮説を立てる。
本来なら周囲から探り確証を得てからその場に向かうものだが。
確証を得るまで待っていては時間がなくなる。
飛び込んでみるのも必要だと、俺の手を引き、早く戻って明日の準備をしましょうと意気込むクリスティーヌ様の姿に思った。
戻って話を聞くとクリスティーヌ様は乗馬も巧みだということで予想よりも早く町を回れそうだった。
聞くところによると俺より上手そうな気がする。
向かう先とその順番について話していると、侯爵夫人からの手紙が届けられた。
夫人は西方に馴染みのある方から情報収集をしていた。思ったよりも早い報せに、何か掴めたのかと打ち合わせを中断し手紙を開く。
手紙の中には多岐にわたる噂話やそれぞれの家の財政状況など。夫人たちにかかればこんなことまでわかるのかと空恐ろしいほどの内容が書かれていた。
中でも俺の目を引いたのが件の公爵子息に関しての噂。
領地でもあまり姿を見せない彼だが、時折お忍びで出かけることがあったという。
その向かった先と目されている土地の名前を聞いて、先ほどまでの予定を組み直す。
期待に逸る胸にまだ早いと言い聞かせて冷静さを保つ。
夫人からの手紙に書いてあった地名は、これから向かおうと思っていた町のひとつ。
そこは、伯爵家の摘発前に姿を消した者の内の一人が治めていた土地だった。
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