【完結】幼い頃からの婚約を破棄されて退学の危機に瀕している。

桧山 紗綺

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四年目 ~冬期休暇 そして春へ~

言葉にしない非難

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 侯爵様が発した隠蔽という言葉に狼狽したように目を動かす国王へ視線が集まる。
 狼狽える様にそれぞれが何を感じたのか。
 少なくとも王が見せたそれが何も知らぬ者の反応でないのは伝わった。

「北侯よ、縁談が隠蔽とは穏やかではないな。
 それではまるで国王が隠蔽を図ったように聞こえるぞ」

 一見すると侯爵様の発言を咎めるようにも聞こえなくはない東候の言葉。
 しかしそれが助け舟ではないのはその表情と楽しげな声でわかる。

 東侯が味方にはなりえないと承知している国王は焦った顔で言葉を紡ごうと口を開く。
 それを遮るように言葉を継いだのは南侯。

「全くだ。
 公爵の子息との縁談が隠蔽など失礼極まりない。
 隠す罪が公爵家にあったとでも?」

 南侯が無礼な発言を非難するように眉間にシワを寄せ侯爵様へ視線を向ける。
 息を呑んだのはどちらだったのか。
 非難の形を取りながら王を追い詰める。
 真剣な声音に隠した刃に気づかぬほど、王も呑気ではなかった。

「二人とも、議題がずれていますよ。
 今日の議題は先だって摘発された伯爵家の罪と隠蔽について、でしょう?」

 翠色の瞳で横目に南侯たちをたしなめ、侯爵様に続きを促す。

「彼の伯爵が犯した罪は明白だったと私も思いますが、まだ何か出て来ましたか?」

「いいえ?
 伯爵家の罪に大して変わりはありません。
 新たに判明した事実から、流通させていた贋金がもっと多いかもしれないということくらいで」

 侯爵様が明かした話に大事ではないかと東侯が眉を寄せる。

「確かに大事ですが伯爵家についてはすでに判明していることがほとんどです。
 問題はそこに公爵家の関与が明らかになったこと」

 ほう、と南侯が呟く。

「公爵家の関与か、それが事実であれば看過することはできんが……。
 当然証拠はあるんだろうな?」

 もちろんと頷く侯爵様にまずは詳細を聞かせてくれと南侯が続きを促す。

「公爵の領地にある鉱山、廃鉱とされていたそこで採掘がされていることがわかりました。
 そこから出た金属が贋金に使われていたことも」

 侯爵様の視線を受けたレオンが調査の結果を述べる。

「鉱山は今も採掘できる状態であり、私も自分の目で採掘の跡を確認しております」

「そこから出た金属が贋金に使われていたと?」

 はい、と言葉を返すレオンに南の侯爵が疑問を投げる。

「それが伯爵家の贋金に使われていたという根拠は?」

「伯爵家と共に罪に問われ、当主が逃亡している家で裏帳簿を見つけました。
 そこには公爵からの金属を買い入れと伯爵家への販売が記されています」

 確かな証拠があると聞かされて東侯が唸る。
 それであれば由々しき問題だと。
 南の侯爵たちも重々しく頷いていた。

「当初の調査ではわかりませんでしたが、彼の家は伯爵家と公爵家を裏で繋ぐ役割を担っていたようですね、逃げたのも道理かと」

 すんでのところで逃してしまいましたとレオンが目を伏せる。
 余程良い耳をしていたようで、そう落とした言葉に西侯に視線が集まる。

「な、なんだ? 私は何も知らないぞ!」

「落ち着け、西の」

 皆に視線を向けられ焦ったように知らないと否定する西侯を東侯が宥める。

「ええ、西侯を疑ってなどいませんよ。
 そうであれば、事前に話を通すことなく着手しています」

 東侯の言葉に重ねて侯爵様も穏やかな微笑みで否定をする。
 ほっとしたように息を吐いた西侯だったが、表情と裏腹にその瞳が冷たいものであることに気がつく。

 わざわざ顔を立ててやったのにそれを裏切り情報を流した。

 言葉にしない非難。
 そして自分を見つめる各侯爵の視線の険しさ。
 信頼に背くものは長ではいられない。
 その地の侯爵に事前に話をしておくのは円滑な協力のため。
 その不文律を壊した西侯に向けられる目は厳しい。
 その視線から、西侯は自分の行いがすでに皆に知られていることを悟った。


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