【完結】幼い頃からの婚約を破棄されて退学の危機に瀕している。

桧山 紗綺

文字の大きさ
73 / 97
四年目 ~冬期休暇 そして春へ~

言葉にしない非難

しおりを挟む
 

 侯爵様が発した隠蔽という言葉に狼狽したように目を動かす国王へ視線が集まる。
 狼狽える様にそれぞれが何を感じたのか。
 少なくとも王が見せたそれが何も知らぬ者の反応でないのは伝わった。

「北侯よ、縁談が隠蔽とは穏やかではないな。
 それではまるで国王が隠蔽を図ったように聞こえるぞ」

 一見すると侯爵様の発言を咎めるようにも聞こえなくはない東候の言葉。
 しかしそれが助け舟ではないのはその表情と楽しげな声でわかる。

 東侯が味方にはなりえないと承知している国王は焦った顔で言葉を紡ごうと口を開く。
 それを遮るように言葉を継いだのは南侯。

「全くだ。
 公爵の子息との縁談が隠蔽など失礼極まりない。
 隠す罪が公爵家にあったとでも?」

 南侯が無礼な発言を非難するように眉間にシワを寄せ侯爵様へ視線を向ける。
 息を呑んだのはどちらだったのか。
 非難の形を取りながら王を追い詰める。
 真剣な声音に隠した刃に気づかぬほど、王も呑気ではなかった。

「二人とも、議題がずれていますよ。
 今日の議題は先だって摘発された伯爵家の罪と隠蔽について、でしょう?」

 翠色の瞳で横目に南侯たちをたしなめ、侯爵様に続きを促す。

「彼の伯爵が犯した罪は明白だったと私も思いますが、まだ何か出て来ましたか?」

「いいえ?
 伯爵家の罪に大して変わりはありません。
 新たに判明した事実から、流通させていた贋金がもっと多いかもしれないということくらいで」

 侯爵様が明かした話に大事ではないかと東侯が眉を寄せる。

「確かに大事ですが伯爵家についてはすでに判明していることがほとんどです。
 問題はそこに公爵家の関与が明らかになったこと」

 ほう、と南侯が呟く。

「公爵家の関与か、それが事実であれば看過することはできんが……。
 当然証拠はあるんだろうな?」

 もちろんと頷く侯爵様にまずは詳細を聞かせてくれと南侯が続きを促す。

「公爵の領地にある鉱山、廃鉱とされていたそこで採掘がされていることがわかりました。
 そこから出た金属が贋金に使われていたことも」

 侯爵様の視線を受けたレオンが調査の結果を述べる。

「鉱山は今も採掘できる状態であり、私も自分の目で採掘の跡を確認しております」

「そこから出た金属が贋金に使われていたと?」

 はい、と言葉を返すレオンに南の侯爵が疑問を投げる。

「それが伯爵家の贋金に使われていたという根拠は?」

「伯爵家と共に罪に問われ、当主が逃亡している家で裏帳簿を見つけました。
 そこには公爵からの金属を買い入れと伯爵家への販売が記されています」

 確かな証拠があると聞かされて東侯が唸る。
 それであれば由々しき問題だと。
 南の侯爵たちも重々しく頷いていた。

「当初の調査ではわかりませんでしたが、彼の家は伯爵家と公爵家を裏で繋ぐ役割を担っていたようですね、逃げたのも道理かと」

 すんでのところで逃してしまいましたとレオンが目を伏せる。
 余程良い耳をしていたようで、そう落とした言葉に西侯に視線が集まる。

「な、なんだ? 私は何も知らないぞ!」

「落ち着け、西の」

 皆に視線を向けられ焦ったように知らないと否定する西侯を東侯が宥める。

「ええ、西侯を疑ってなどいませんよ。
 そうであれば、事前に話を通すことなく着手しています」

 東侯の言葉に重ねて侯爵様も穏やかな微笑みで否定をする。
 ほっとしたように息を吐いた西侯だったが、表情と裏腹にその瞳が冷たいものであることに気がつく。

 わざわざ顔を立ててやったのにそれを裏切り情報を流した。

 言葉にしない非難。
 そして自分を見つめる各侯爵の視線の険しさ。
 信頼に背くものは長ではいられない。
 その地の侯爵に事前に話をしておくのは円滑な協力のため。
 その不文律を壊した西侯に向けられる目は厳しい。
 その視線から、西侯は自分の行いがすでに皆に知られていることを悟った。


しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

【完結】 笑わない、かわいげがない、胸がないの『ないないない令嬢』、国外追放を言い渡される~私を追い出せば国が大変なことになりますよ?~

夏芽空
恋愛
「笑わない! かわいげがない! 胸がない! 三つのないを持つ、『ないないない令嬢』のオフェリア! 君との婚約を破棄する!」 婚約者の第一王子はオフェリアに婚約破棄を言い渡した上に、さらには国外追放するとまで言ってきた。 「私は構いませんが、この国が困ることになりますよ?」 オフェリアは国で唯一の特別な力を持っている。 傷を癒したり、作物を実らせたり、邪悪な心を持つ魔物から国を守ったりと、力には様々な種類がある。 オフェリアがいなくなれば、その力も消えてしまう。 国は困ることになるだろう。 だから親切心で言ってあげたのだが、第一王子は聞く耳を持たなかった。 警告を無視して、オフェリアを国外追放した。 国を出たオフェリアは、隣国で魔術師団の団長と出会う。 ひょんなことから彼の下で働くことになり、絆を深めていく。 一方、オフェリアを追放した国は、第一王子の愚かな選択のせいで崩壊していくのだった……。

とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵令嬢リリアーヌは、10歳で母が他界し、その後義母と義妹に虐げられ、 屋敷ではメイド仕事をして過ごす日々。 そんな中で、このままでは一生虐げられたままだと思い、一念発起。 母の遺言を受け、自分で自分を幸せにするために行動を起こすことに。 そんな中、偶然訳ありの男性を拾ってしまう。 しかし、その男性がリリアーヌの未来を作る救世主でーーーー。 メイド仕事の傍らで隠れて淑女教育を完璧に終了させ、語学、経営、経済を学び、 財産を築くために屋敷のメイド姿で見聞きした貴族社会のことを小説に書いて出版し、それが大ヒット御礼! 学んだことを生かし、商会を設立。 孤児院から人材を引き取り育成もスタート。 出版部門、観劇部門、版権部門、商品部門など次々と商いを展開。 そこに隣国の王子も参戦してきて?! 本作品は虐げられた環境の中でも懸命に前を向いて頑張る とある侯爵令嬢が幸せを掴むまでの溺愛×サクセスストーリーです♡ *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます

珠宮さくら
恋愛
ローザンネ国の島国で生まれたアンネリース・ランメルス。彼女には、双子の片割れがいた。何もかも与えてもらえている片割れと何も与えられることのないアンネリース。 そんなアンネリースを育ててくれた乳母とその娘のおかげでローザンネ国で生きることができた。そうでなければ、彼女はとっくに死んでいた。 そんな時に別の国の王太子の婚約者として留学することになったのだが、その条件は仮面を付けた者だった。 ローザンネ国で仮面を付けた者は、見るに堪えない顔をしている証だが、他所の国では真逆に捉えられていた。

真面目くさった女はいらないと婚約破棄された伯爵令嬢ですが、王太子様に求婚されました。実はかわいい彼の溺愛っぷりに困っています

綾森れん
恋愛
「リラ・プリマヴェーラ、お前と交わした婚約を破棄させてもらう!」 公爵家主催の夜会にて、リラ・プリマヴェーラ伯爵令嬢はグイード・ブライデン公爵令息から言い渡された。 「お前のような真面目くさった女はいらない!」 ギャンブルに財産を賭ける婚約者の姿に公爵家の将来を憂いたリラは、彼をいさめたのだが逆恨みされて婚約破棄されてしまったのだ。 リラとグイードの婚約は政略結婚であり、そこに愛はなかった。リラは今でも7歳のころ茶会で出会ったアルベルト王子の優しさと可愛らしさを覚えていた。しかしアルベルト王子はそのすぐあとに、毒殺されてしまった。 夜会で恥をさらし、居場所を失った彼女を救ったのは、美しい青年歌手アルカンジェロだった。 心優しいアルカンジェロに惹かれていくリラだが、彼は高い声を保つため、少年時代に残酷な手術を受けた「カストラート(去勢歌手)」と呼ばれる存在。教会は、子孫を残せない彼らに結婚を禁じていた。 禁断の恋に悩むリラのもとへ、父親が新たな婚約話をもってくる。相手の男性は親子ほども歳の離れた下級貴族で子だくさん。数年前に妻を亡くし、後妻に入ってくれる女性を探しているという、悪い条件の相手だった。 望まぬ婚姻を強いられ未来に希望を持てなくなったリラは、アルカンジェロと二人、教会の勢力が及ばない国外へ逃げ出す計画を立てる。 仮面舞踏会の夜、二人の愛は通じ合い、結ばれる。だがアルカンジェロが自身の秘密を打ち明けた。彼の正体は歌手などではなく、十年前に毒殺されたはずのアルベルト王子その人だった。 しかし再び、王権転覆を狙う暗殺者が迫りくる。 これは、愛し合うリラとアルベルト王子が二人で幸せをつかむまでの物語である。

【完結】熟成されて育ちきったお花畑に抗います。離婚?いえ、今回は国を潰してあげますわ

との
恋愛
2月のコンテストで沢山の応援をいただき、感謝です。 「王家の念願は今度こそ叶うのか!?」とまで言われるビルワーツ侯爵家令嬢との婚約ですが、毎回婚約破棄してきたのは王家から。  政より自分達の欲を優先して国を傾けて、その度に王命で『婚約』を申しつけてくる。その挙句、大勢の前で『婚約破棄だ!』と叫ぶ愚か者達にはもううんざり。  ビルワーツ侯爵家の資産を手に入れたい者達に翻弄されるのは、もうおしまいにいたしましょう。  地獄のような人生から巻き戻ったと気付き、新たなスタートを切ったエレーナは⋯⋯幸せを掴むために全ての力を振り絞ります。  全てを捨てるのか、それとも叩き壊すのか⋯⋯。  祖父、母、エレーナ⋯⋯三世代続いた王家とビルワーツ侯爵家の争いは、今回で終止符を打ってみせます。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結迄予約投稿済。 R15は念の為・・

傷物令嬢シャルロットは辺境伯様の人質となってスローライフ

悠木真帆
恋愛
侯爵令嬢シャルロット・ラドフォルンは幼いとき王子を庇って右上半身に大やけどを負う。 残ったやけどの痕はシャルロットに暗い影を落とす。 そんなシャルロットにも他国の貴族との婚約が決まり幸せとなるはずだった。 だがーー 月あかりに照らされた婚約者との初めての夜。 やけどの痕を目にした婚約者は顔色を変えて、そのままベッドの上でシャルロットに婚約破棄を申し渡した。 それ以来、屋敷に閉じこもる生活を送っていたシャルロットに父から敵国の人質となることを命じられる。

妹の身代わりに殺戮の王太子に嫁がされた忌み子王女、実は妖精の愛し子でした。嫁ぎ先でじゃがいもを育てていたら、殿下の溺愛が始まりました・長編版

まほりろ
恋愛
 国王の愛人の娘であるアリアベルタは、母親の死後、王宮内で放置されていた。  食事は一日に一回、カビたパンやまふ腐った果物、生のじゃがいもなどが届くだけだった。  しかしアリアベルタはそれでもなんとか暮らしていた。  アリアベルタの母親は妖精の村の出身で、彼女には妖精がついていたのだ。  その妖精はアリアベルタに引き継がれ、彼女に加護の力を与えてくれていた。  ある日、数年ぶりに国王に呼び出されたアリアベルタは、異母妹の代わりに殺戮の王子と二つ名のある隣国の王太子に嫁ぐことになり……。 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※小説家になろうとカクヨムにも投稿しています。 ※中編を大幅に改稿し、長編化しました。2025年1月20日 ※長編版と差し替えました。2025年7月2日 ※コミカライズ化が決定しました。商業化した際はアルファポリス版は非公開に致します。

虐げられた私が姉の策略で結婚させられたら、スパダリ夫に溺愛され人生大逆転しました。

専業プウタ
恋愛
ミリア・カルマンは帝国唯一の公爵家の次女。高貴な皇族の血を引く紫色の瞳を持って生まれたワガママな姉の陰謀で、帝国一裕福でイケメンのレナード・アーデン侯爵と婚約することになる。父親であるカルマン公爵の指示のもと後継者としてアカデミーで必死に勉強してきて首席で卒業した。アカデミー時代からの恋人、サイラスもいる。公爵になる夢も恋人も諦められない。私の人生は私が決めるんだから、イケメンの婚約者になど屈しない。地位も名誉も美しさも備えた婚約者の弱みを握り、婚約を破棄する。そして、大好きな恋人と結婚してみせる。そう決意して婚約者と接しても、この婚約者一筋縄ではいかない。初対面のはずなのに、まるで自分を知っていたかのような振る舞い。ミリアは恋人を裏切りたくない、姉の思い通りになりたくないと思いつつも彼に惹かれてく気持ちが抑えられなくなっていく。

処理中です...