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セレスタ 帰還編
視察 7
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二枚目の菓子を手に取り手で割る。
止まらなくなりそうだなー、とそんなことを考えているとヴォルフが口を開いた。
「弟の結婚式にはお前にも来てほしいと思っている」
「いきなりね」
前の話を聞いていないマリナからすると脈絡がなく聞こえる。
すると、「だから言ったのに」とか、「やっぱり準備するならもっと時間がないと」と言う声が後ろから聞こえた。
マリナは話に脈絡がないという意味で言ったつもりだったけれど、周りはそう受け取らなかったみたいだ。
「ごめん、そういう意味じゃない。
何でそういう話になったの?」
雑談から祝い事の話に飛んだの?展開が読めない。
「漠然と一緒に出るものだと思っていたから確認もしていなかったし、何も話をしていなかったと気が付いた」
正確には気づかされた、と。
なるほど、確かにこれは侯爵の前では話しづらい。
「俺とは違ってお前は準備が多くあるんだろう? 気づかなくてすまない」
「別にドレスならあるから気にしなくてもいいわよ?」
これから仕立てたらぎりぎりかもしれないけど、ドレスならマリナも持っている。
「でも、今年の物とは違うんじゃないのか?」
ディルクさんが言いにくそうに聞いてきた。
ドレスは流行があるので前年の物は着れない。マリナのような立場ならなおさら。
そんな物を着て行けば、流行遅れと笑われるのは目に見える。
でもそれも心配ない。
「春先に仕立てた物はまだ袖を通してないので大丈夫です。 装飾品は使い回しでもいいでしょうし」
異世界に飛ばされる前に、今年の分はすでに仕立ててあった。
「え、何で?」
思わずといった様子で誰かが呟く。そんなに意外かしら?
「たまに必要になるので、緊急に必要になっても対応できるように毎年何着かは作ってます」
夜会に双翼としてではなく、ドレスを着て参加することもたまーにある。
滅多にないことでも突然必要になって慌てるのが嫌なので準備だけはしていた。
結果、袖を通さないドレスが部屋に眠っている。
「誰に注文してるの?」
ドレスを頼む伝手があったことに驚いているみたいだ。
普通ドレスの注文は誰かの紹介がないと請け負ってくれない。
ドレスはオーダーメイドで値も張るので信用がなくては注文すらできない物だった。
「みなさんが着てる騎士服を作っている仕立て屋に紹介してもらいました」
マリナや他の魔術師官のローブも、同じ仕立て屋の工房が請け負っている。
ドレスは専門外だと言われたので工房を紹介してもらった。
腕の確かな良い仕立て屋だと紹介されたのは何年前だったか。
双翼候補だったときからずっとそこで作ってもらっている。
「そういえばたまに夜会にドレスで出ていたな」
「本当にたまにだけどね」
どうしても双翼としては参加できないときがあるので、そういったときは普通の参加者としてドレスを着て参加していた。
話を聞いていたみんなも思い出して頷いている。
「あれは決まってから仕立ててたんじゃなかったんだ」
「ええ、ぎりぎりに決まることもあるので、間に合わないことがないように用意だけはしてあります」
本当に直前に予定を変更されたこともあったし。
あの時は本当に大変だった。
王子もあの時か、と思い出している。
世界には女性が働くことを許さない国もある。こちらが合わせる必要もないけれど、争い事の種をわざわざ撒き散らす必要もない。
あれが王族でなかったらこちらの道理を通したのに。
当時の怒りを思い出す。
元々大臣が来る予定だったのに、急にその国の第何番目かの王子が付いてくることになった。
突然のことでも、迎える側として不足があることは許されない。
宿泊の準備もそうだし、警備も大幅な変更を余儀なくされた。
あれは絶対こちらの出方を見るためにやったんだと思う。
自分たちの国と主が試された…、値踏みされたんだと思うとふつふつと怒りが湧いてくる。
普段あまり怒らない(ヴォルフ以外には)マリナだったが、やられたことは忘れないタイプだった。
止まらなくなりそうだなー、とそんなことを考えているとヴォルフが口を開いた。
「弟の結婚式にはお前にも来てほしいと思っている」
「いきなりね」
前の話を聞いていないマリナからすると脈絡がなく聞こえる。
すると、「だから言ったのに」とか、「やっぱり準備するならもっと時間がないと」と言う声が後ろから聞こえた。
マリナは話に脈絡がないという意味で言ったつもりだったけれど、周りはそう受け取らなかったみたいだ。
「ごめん、そういう意味じゃない。
何でそういう話になったの?」
雑談から祝い事の話に飛んだの?展開が読めない。
「漠然と一緒に出るものだと思っていたから確認もしていなかったし、何も話をしていなかったと気が付いた」
正確には気づかされた、と。
なるほど、確かにこれは侯爵の前では話しづらい。
「俺とは違ってお前は準備が多くあるんだろう? 気づかなくてすまない」
「別にドレスならあるから気にしなくてもいいわよ?」
これから仕立てたらぎりぎりかもしれないけど、ドレスならマリナも持っている。
「でも、今年の物とは違うんじゃないのか?」
ディルクさんが言いにくそうに聞いてきた。
ドレスは流行があるので前年の物は着れない。マリナのような立場ならなおさら。
そんな物を着て行けば、流行遅れと笑われるのは目に見える。
でもそれも心配ない。
「春先に仕立てた物はまだ袖を通してないので大丈夫です。 装飾品は使い回しでもいいでしょうし」
異世界に飛ばされる前に、今年の分はすでに仕立ててあった。
「え、何で?」
思わずといった様子で誰かが呟く。そんなに意外かしら?
「たまに必要になるので、緊急に必要になっても対応できるように毎年何着かは作ってます」
夜会に双翼としてではなく、ドレスを着て参加することもたまーにある。
滅多にないことでも突然必要になって慌てるのが嫌なので準備だけはしていた。
結果、袖を通さないドレスが部屋に眠っている。
「誰に注文してるの?」
ドレスを頼む伝手があったことに驚いているみたいだ。
普通ドレスの注文は誰かの紹介がないと請け負ってくれない。
ドレスはオーダーメイドで値も張るので信用がなくては注文すらできない物だった。
「みなさんが着てる騎士服を作っている仕立て屋に紹介してもらいました」
マリナや他の魔術師官のローブも、同じ仕立て屋の工房が請け負っている。
ドレスは専門外だと言われたので工房を紹介してもらった。
腕の確かな良い仕立て屋だと紹介されたのは何年前だったか。
双翼候補だったときからずっとそこで作ってもらっている。
「そういえばたまに夜会にドレスで出ていたな」
「本当にたまにだけどね」
どうしても双翼としては参加できないときがあるので、そういったときは普通の参加者としてドレスを着て参加していた。
話を聞いていたみんなも思い出して頷いている。
「あれは決まってから仕立ててたんじゃなかったんだ」
「ええ、ぎりぎりに決まることもあるので、間に合わないことがないように用意だけはしてあります」
本当に直前に予定を変更されたこともあったし。
あの時は本当に大変だった。
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世界には女性が働くことを許さない国もある。こちらが合わせる必要もないけれど、争い事の種をわざわざ撒き散らす必要もない。
あれが王族でなかったらこちらの道理を通したのに。
当時の怒りを思い出す。
元々大臣が来る予定だったのに、急にその国の第何番目かの王子が付いてくることになった。
突然のことでも、迎える側として不足があることは許されない。
宿泊の準備もそうだし、警備も大幅な変更を余儀なくされた。
あれは絶対こちらの出方を見るためにやったんだと思う。
自分たちの国と主が試された…、値踏みされたんだと思うとふつふつと怒りが湧いてくる。
普段あまり怒らない(ヴォルフ以外には)マリナだったが、やられたことは忘れないタイプだった。
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