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セレスタ 波乱の婚約式編
冬の夜会
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今年最後の夜会、そこで王子とレイフェミア様の婚約が発表された。
噂に疎くなければすでに王子とレイフェミア様が交流を深めていることは知られている。
そのため、居並ぶ貴族たちの顔にも左程驚きはなく、万雷の拍手でおふたりの婚約発表は受け入れられた。
「マリナ、良かったわね!」
すれ違いざまにこそっとシャルロッテが話しかけてきた、目を付けられないように話しかけない方が良いって言ったのに。
話しかけたのを聞いてシャルロッテに付き添っていた男性がちらりと視線を向ける。
シャルロッテの前を歩いていたいかにも厳格そうな男性がエミス子爵。シャルロッテのお爺様だろう。
髪には白髪が交じり、目元にも皺が刻まれているが眼光は鋭く、油断ならない雰囲気を感じる。
隣にいるのは後継者の息子、シャルロッテのお父様だろうか。
父親とは違い温和そうな顔をしている。
子爵のマリナを見る目は険しい。
シャルロッテに近づいているマリナを警戒しているのか、孫娘の友人に対する視線ではない。
もしかしてヴォルフのことで恨まれてたりして、と思ったが否定する。
あの手合いは策略家だ。一つの策が駄目だとわかったらすぐに次の手を打つ。
つまりあの視線は単純にマリナが気に入らないということかな。
視線が合ったのはほんの一瞬のことで、シャルロッテたちは顔見知りの貴族に挨拶に行くため通り過ぎて行った。
シャルロッテに付き添っていたのは子爵と父親だった、恋人は警備の仕事があるので付き添えなかったのか、それともまだ認められていないのか、気になる。
フローラ様の姿も遠くに見える。隣にいるのは話に聞いた婚約者でしょうか。
会場は王子の婚約発表の話題一色になっている。
成人を過ぎて十年、恋人も婚約者も作らなかった王子の婚約発表に会場は華やぎ、幸福感が漂ってた。
貴族たちが口にするのも祝福の言葉ばかり。会場のあちらこちらで嬉しそうに話に花を咲かせている。
王子とレイフェミア様は順に貴族たちの挨拶と祝福を受けながら幸せそうに笑っていた。
そんな主を見守りながら双翼として王子の側で警護を続ける。
途中侯爵様やアデーレ様と少しだけ会話を交わす。
王子に祝福を述べ、ついでにヴォルフに一言掛け、マリナに微笑むという一連の流れで周りの視線が集まった。
挨拶を待っていた人たちからも視線が飛んだが、王子の婚約の方がはるかに大切なことなので特に何か言われることもない。
レイフェミア様にも不躾な視線を向ける者はいなかったのでそっと胸を撫で下ろす。
禁忌ではないものの一度嫁いだことのあるレイフェミア様に悪意を持つ者が嫌味を言いに近づいて来ることも想定していたけど、拍子抜けなくらいだ。
レイフェミア様自体は「慣れてますから大丈夫ですよ」と笑っていた。
伯爵家から公爵家に嫁いだときにも色々言われたので嫌味くらい笑って流せるそうな。
強い女性は美しい。綺麗な笑顔で笑ったレイフェミア様に、この方が王子の伴侶になってくれて本当に良かったと思った。
婚約発表と同時に婚約式の日取りも発表されたので夫人や令嬢はドレスの話題に夢中だ。
婚約式は次の春――――。
王子の誕生日に合わせて式を執り行う。
一両日中に吉報がセレスタのみならず他国にまで駆け巡ることになる。
すでに人々の心は訪れる冬ではなく、花開く春に移っていた。
噂に疎くなければすでに王子とレイフェミア様が交流を深めていることは知られている。
そのため、居並ぶ貴族たちの顔にも左程驚きはなく、万雷の拍手でおふたりの婚約発表は受け入れられた。
「マリナ、良かったわね!」
すれ違いざまにこそっとシャルロッテが話しかけてきた、目を付けられないように話しかけない方が良いって言ったのに。
話しかけたのを聞いてシャルロッテに付き添っていた男性がちらりと視線を向ける。
シャルロッテの前を歩いていたいかにも厳格そうな男性がエミス子爵。シャルロッテのお爺様だろう。
髪には白髪が交じり、目元にも皺が刻まれているが眼光は鋭く、油断ならない雰囲気を感じる。
隣にいるのは後継者の息子、シャルロッテのお父様だろうか。
父親とは違い温和そうな顔をしている。
子爵のマリナを見る目は険しい。
シャルロッテに近づいているマリナを警戒しているのか、孫娘の友人に対する視線ではない。
もしかしてヴォルフのことで恨まれてたりして、と思ったが否定する。
あの手合いは策略家だ。一つの策が駄目だとわかったらすぐに次の手を打つ。
つまりあの視線は単純にマリナが気に入らないということかな。
視線が合ったのはほんの一瞬のことで、シャルロッテたちは顔見知りの貴族に挨拶に行くため通り過ぎて行った。
シャルロッテに付き添っていたのは子爵と父親だった、恋人は警備の仕事があるので付き添えなかったのか、それともまだ認められていないのか、気になる。
フローラ様の姿も遠くに見える。隣にいるのは話に聞いた婚約者でしょうか。
会場は王子の婚約発表の話題一色になっている。
成人を過ぎて十年、恋人も婚約者も作らなかった王子の婚約発表に会場は華やぎ、幸福感が漂ってた。
貴族たちが口にするのも祝福の言葉ばかり。会場のあちらこちらで嬉しそうに話に花を咲かせている。
王子とレイフェミア様は順に貴族たちの挨拶と祝福を受けながら幸せそうに笑っていた。
そんな主を見守りながら双翼として王子の側で警護を続ける。
途中侯爵様やアデーレ様と少しだけ会話を交わす。
王子に祝福を述べ、ついでにヴォルフに一言掛け、マリナに微笑むという一連の流れで周りの視線が集まった。
挨拶を待っていた人たちからも視線が飛んだが、王子の婚約の方がはるかに大切なことなので特に何か言われることもない。
レイフェミア様にも不躾な視線を向ける者はいなかったのでそっと胸を撫で下ろす。
禁忌ではないものの一度嫁いだことのあるレイフェミア様に悪意を持つ者が嫌味を言いに近づいて来ることも想定していたけど、拍子抜けなくらいだ。
レイフェミア様自体は「慣れてますから大丈夫ですよ」と笑っていた。
伯爵家から公爵家に嫁いだときにも色々言われたので嫌味くらい笑って流せるそうな。
強い女性は美しい。綺麗な笑顔で笑ったレイフェミア様に、この方が王子の伴侶になってくれて本当に良かったと思った。
婚約発表と同時に婚約式の日取りも発表されたので夫人や令嬢はドレスの話題に夢中だ。
婚約式は次の春――――。
王子の誕生日に合わせて式を執り行う。
一両日中に吉報がセレスタのみならず他国にまで駆け巡ることになる。
すでに人々の心は訪れる冬ではなく、花開く春に移っていた。
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