双翼の魔女は異世界で…!?

桧山 紗綺

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異世界<日本>視察編

楽しみな夏

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 食事が終わってゆったりとした空気が流れる時間。
 マリナはここ最近考えていたことをヴォルフに伝えた。
「今すぐにじゃないんだけど、近いうちに生まれた村に行こうと思ってる。
 それでね……」
「俺も行くからな」
 一緒に来てくれる?と聞く前に答えをもらって思わず笑う。
「わかってる。 王子にもヴォルフと一緒に行くように言われたし」
 一人で行くなんて言わない。
「ん? 王子にも話してたのか?」
「この間偶然図書室で会ったの。 村の場所を調べていたところだったから」
 話の流れで、というよりも王子が気づいて聞いてきた。
 気遣われたことはうれしい。
 そのうれしさの分、王子にも同じものを返したいと思う。
「ふうん、そういえば聞いたことなかったけど場所は何処なんだ?」
 隣の部屋から地図を持ってきてテーブルの上に広げる。
 地図の一点を指す。
「ここ。 アルフェラという村だって聞いたわ」
「王都からは結構離れてるな」
「そうね」
 国境付近ではないものの、その一歩手前くらいの場所に位置している。
「馬車で行ったら一週間以上かかるな」
 ヴォルフの言うとおり、往復馬車ならそのくらいかかるだろう。
「流石にそんなに長く王子の側を離れるのもね」
「今回はアレクの結婚式の時と違って荷物が少ないから馬でも行けるだろ。
 それなら早く済む」
「確かに……、そうね」
 ヴォルフは当然として、マリナも馬に乗ることはできる。それが一番現実的かな。馬の手配はしないといけないけど。
「行くとしたら秋頃か」
「そうね、夏は離宮警備もあるから王子の側を離れられないわ」
 今年の夏は王子がレイフェミア様を離宮に誘いそこで一緒に過ごす予定だ。
 王宮と違う場所での警護は気を使う。護衛対象が増えることもあって騎士たちは準備に忙しい。
 お二人が楽しく過ごせるようにとマリナも力が入る。
「楽しみね。 王子が離宮に女性を誘うのは初めてだもの」
 今までにない夏になるのは確かだ。
 きっと離宮で迎える人々も期待と不安に胸を躍らせているだろう。
 マリナはその前に楽しみがもう一つある。
 約束していたシャルロッテとフローラ様とのお出かけの日にちが決まった。
 マールアの間諜たちも一掃できたところなので問題が起こることもないだろうし、女の子同士で買い物なんてしたことがないのでとても楽しみだ。
「忙しい夏になりそうね」
 忙しく、楽しい夏はすぐそこだった。
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